冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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お兄ちゃんいっぱい (水月+レイ・ネイ・ノヴェム・セイカ・アキ・ハル・リュウ)

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焼きとうもろこし片手にレイに連絡を取り、チョコバナナ屋台の前で合流を果たした。ほとんど交流のないネイ親子と行動を共にするのは辛かっただろう、しっかり労わってやらないとな。

「せんぱぁい! やっと合流出来たっす、俺ずっとせんぱいが追っかけてくるの待ってたんすよ? なのに俺後回しにしてこーんな美味しそうなもん食べてぇ!」

「ごめんごめん……ひと口食べるか?」

「食べるっすけど、こんなので許されると思わないことっす!」

俺の腕を抱いたまま焼きとうもろこしを齧ったレイは、美味しそうに頬を緩ませて笑顔を見せてくれた。すっかり許してくれたように思える。

「ノヴェムくんに付き添って甘いものばっかり食べてたんで、久しぶりのオカズ系が染みるっす」

「ふふ、お疲れ様」

「みつきおにーちゃん」

「ノヴェムくん、なぁに? 抱っこ? ごめんね、今無理かも。ちょっと待っててね」

俺の手は今レイと焼きとうもろこしで塞がれている。懐いてきてくれているノヴェムには悪いが、今は抱き上げてやれない。

《お兄ちゃんのお友達いっぱい居ますね、ノヴェム》

俺から気を逸らさせるようにネイがノヴェムに話しかけ、柔らかな金髪をくしゅくしゅと弄んだ。

《……お兄ちゃんのお友達、いっぱいなの……やだ》

《どうして? みんなノヴェムのこと可愛いって、いっぱい構ってくれるじゃありませんか》

《いっぱいいらない、お兄ちゃんだけがいい。ノヴェムお兄ちゃんだけがいいのに、お兄ちゃんお友達いっぱいでノヴェムだけじゃダメで……これ、やだ》

《ノヴェムは水月くんのこと大好きなんですね》

《……うん。二人がいい》

《お父さんもいらない?》

《ぅ……お父さんいじわる、そんなこと言わないでよぉ》

ノヴェムは少し落ち込んでいるように見える。心配でじっと見ていると、彼はぐずるように両手を広げてネイに抱っこをねだった。

「……やっぱりフタさん怖かったのかな、ノヴェムくん。トラウマになってないといいけど」

「三人で回ってる時は大丈夫そうだったんすけどねぇ。焼きもろこしもう一口くださいっす」

「勝手に齧っていいよもう……」

いつの間にかアキがチョコバナナを買っている。強引にセイカに食べさせる姿は俺の目を引き、焼きとうもろこしへの執着を薄れさせた。

「ネイさ~ん、ノヴェムくんおねむですか?」

「そうかもしれません」

「歩き疲れちゃったかな~、可愛い……あっ、あっち向いちゃった。ふふふ」

ネイの胸元に顔を埋めていたノヴェムの顔をハルが覗き込むと、ノヴェムはぷいとそっぽを向いた。確かに、子供特有の眠気による不機嫌にも見える。

「……心配し過ぎかな、俺」

「そっすね、でもせんぱいの長所っすよ」

「…………みんなで……色々、こう、ほら、ネザメさん家でパーティしたみたいに遊べたらいいなって思ってるんだ。旅行とかもみんなでしたいって。でも……フタさん、やっぱり厳しいかなぁ……あんな急に暴れるんじゃ、どうしようもない……俺じゃ歯が立たないし」

「せんぱい……」

「解決策、浮かべばいいんだけど」

「俺も頑張って考えるっす! 三人寄れば文殊の知恵、みんなで考えればいいアイディアも浮かぶっすよ」

「ありがとう、頼らせてもらうよ。とりあえず今回暴れた理由をヒトさんに聞き出してもらってからかな、また何か分かったら伝えるよ。レイも些細なことでも思い付いたり気付いたりしたことは共有してくれ」

レイとはそんな相談をしたけれど、今日フタが暴れた件を他の彼氏達に今話すことはしなかった。楽しんでいるところに水を差したくなかった。

「水月ぃ、せーかが足痛そうやで」

合流し、再び全員で祭りを楽しみ始めてから数十分、リュウが俺の袖を引いて言った。

「え、大丈夫かセイカ」

「……っ、だ、大丈夫! 適当言うなよ天正」

「痛そうな顔しとったやん」

「してない!」

膝上で切断された左足の断面が長時間の歩行に向いていないのは分かっている。今までも何度か痛がる姿を見てきた。

「セイカ、気ぃ遣わなくていいんだぞ?」

「してない。大丈夫だからほっといて」

素直じゃないな。最近はマシになってきたと思っていたのに……荒凪が車椅子を使っているからか?

「俺のことは椅子として扱ってくれていいんだぞセイカ、おんぶしてやろうか」

「大丈夫だって言ってるだろ!」

「随分な態度だな、俺にそんな態度取るとどうなるか分かってるのか?」

「な、なんだよ……」

声を低くしてセイカを脅してみれば、彼氏達の間にも緊張感が走る。

「謝るなら今のうちだぞ」

「……何ともないのを何ともないって言ってるだけだ、なんで謝らなきゃいけないんだよ」

「いいんだな?」

「な、何が……」

「アキ~! アキ~! セイカ、足、痛い」

ノヴェムに構っていたアキを呼びつけ、簡単な言葉でセイカの状態を教えた。

「……!? ちょっ、お、おい……鳴雷!」

《足痛いのかスェカーチカ。歩けねぇか? 首に手ぇ回しな。ほら、俺の腕にケツ乗せろ》

《まだ歩ける! うわっ、も、持ち上げるな!》

アキは自身の右腕に座らせるようにして強引にセイカを抱えた。足を浮かされてはセイカに抵抗の余地はない、大人しくアキの首に腕を絡めるしかないのだ。

「痛くなったこと素直に言えない上に態度も悪いセイカにはアキによる強制抱っこの刑だ」

「…………素直に言ってたら、どうなってたんだよ」

「普通に俺がおんぶした。素直に言ってたらってことは、やっぱり足痛いんだな? ダメだぞ痛いこと隠しちゃ。悪化して歩けなくなる方が大変だろ? 困らせるとか考えるなよ、頼られるの嬉しいって俺何回も言ってるよな?」

「……ごめんなさい」

「ん、いいよ。義足はつけっぱで大丈夫か? 痛み強くなったりしたらちゃんと言えよ」

「うん……」

アキに抱えられた途端に大人しくなったな。猫は母猫に咥えられて運ばれるから、首の後ろを掴むと大人しくなるという話を思い出した。

(猫持ち上げたことないんで本当かどうか知りませんけど)

今度フタに聞いてみようかな。
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