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人前では飲まないで (水月+サキヒコ・歌見・シュカ・サン・ハル・リュウ・セイカ)

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150未満の小さな身体は抱き締めやすく、童顔に似合うもちもちのほっぺはずっと触っていても飽きないすべすべっぷり。もう死んでいるサキヒコに成長はないし、日々の食事や睡眠のバランスで肌の調子が変わることもない。この先何年何十年経っても俺は変わらないこの触り心地を楽しめるのだ。

「ミツキは本当に顔に触るのが好きだな、他の者の顔もよく触っているだろう」

「んふふ、そう?」

「うん。無意識なのか?」

「んー……割とそうかも」

ただ冷えた頬や手なら、俺の温かい手で愛撫してやればすぐに俺の体温が移って温まる。けれどサキヒコの身体には俺の体温が移らない、いつまでもひんやりと冷たいままだ。

「はぁ……ほんと、ひんやりしてきもちぃ」

「ミ、ミツキ……」

照れた様子で頬を赤らめているのに冷たい。理由は分かっているのに不思議に思ってしまう。

「サキちゃんそんなに気持ちいいの?」

「わ……」

がっしりとした大きな手にサキヒコがさらわれる。

「あはっ、ホントだ。ひんやり~」

大柄なサンはサキヒコを簡単に抱き上げてしまった。ボールすくいの戦果を両手でしっかりと抱え、少し不安そうな、驚いているような表情で固まっている。

「サン、急に持ち上げちゃ怖いよ」

「幽霊でも?」

「幽霊でも」

「ミツキ、私は大丈夫だ。少し驚いただけで、恐怖なんて感じていない。サン殿、私で涼を感じ快適に過ごせるのであれば、お好きなようにしていただいて構いません」

「水月、サキちゃんもこう言ってるし、しばらく借りてていいよね?」

「サキヒコくんがいいなら俺何も言えないよ。嫌だったら言いなよサキヒコくん」

「大丈夫だ。ミツキはもう私に構っている暇はなくなるだろうしな」

サキヒコはくすくす笑いながらサンにもたれ、人混みの向こうを指した。俺も先程楽しんだサキヒコのひんやり具合に緩むサンの表情から、サキヒコが指した先に視線を移す。

「お、シュカ~! こっちこっち!」

サンに抱えられたサキヒコは、背の高いサンを目印にこちらへやってきていたシュカを見つけていたのだ。

「呼ばれなくても分かってますよ」

「随分お菓子抱えてるなぁ」

「戦利品です」

ふふん、とドヤ顔をしてみせるシュカに、俺も思わず笑顔になった。

「そっか、流石シュカ。俺全然なんだよなぁ、シュカもボールすくいやってみないか?」

「ボールすくい? あぁ、アレですか……景品なさそうですね。いいです」

「えー、俺の敵討って欲しかったな~。まぁいいや、一緒に回ろうぜ。次何食べる?」

「……焼きとうもろこし」

「いいね!」

「鳥待、荷物邪魔じゃないか? 車椅子のハンドルにかけといてやるぞ」

「お願いします。他の人のとごっちゃにしないでくださいよ」

「はいはい、気を付けるよ」

車椅子のハンドルにお菓子が詰まったビニール袋がかけられていく。シュカだけでなく他の彼氏達も景品をかけているので、パッと見結構な量だ。重い物ではないとはいえ、邪魔そうだな。

「流石に多くないですか? 先輩」

「まぁちょっと押しにくくなってきたけど、別に重い訳じゃないしな。気遣ってくれるんなら代わりに並んでくれ、俺の分も焼きとうもろこし頼むよ」

「はい、それくらいならもちろん喜んで」

「荒凪くんの分も頼むぞ」

醤油が焦げる、食欲をそそる匂いが漂う焼きとうもろこしの屋台。シュカと二人で列に並び、順番待ちの間に何気なく周囲の夜店を見回す。

「お、向かいの夜店ビール売ってるな」

「焼きとうもろこしにも焼き鳥にも合いますからね、当然の立地です。穂張さんもあなたも居る今なら一本や二本くらい都合してくれませんかねぇ」

「……優等生な副会長様やってるんだから、発言には気を付けろよ?」

「ビールなんて度数低いんだから高校生にもなれば解禁でいいと思いません?」

「思いません! お酒は二十歳になってから!」

「あなたからビールの話題振ったくせに」

少しむくれたシュカと共に焼きとうもろこしを二本ずつ持って彼氏達の元へ戻る。

「どうぞ、先輩」

「ありがとう。美味そうだな……ほら、荒凪くん、熱いから気を付けろよ」

俺達から一本ずつ受け取った歌見は車椅子の前に回り、荒凪に一本渡した。荒凪は歌見を真似てふぅふぅと息を吹きかけ、時折唇に当てて温度を確かめている。荒凪が火傷をすることはないだろう、歌見は頼りになるなぁ。

「ヤッバ超いい匂い~。あー食べたくなってきた、でも丸々一本はちょっとな~……ねぇりゅー、分けっこしない?」

「俺丸々一本食いたい」

「え~……あ、せーか! アンタ食細いし半分でいいでしょ。ねっ、分けっこしよっ」

「え、いや……俺さっき秋風と食べたし……」

とうもろこしの甘さと醤油のしょっぱさが焼きとうもろこしを齧る口を止めさせてくれない。これを半分こだなんて、相当腹が膨れていないと出来ないだろう。そう考えるのは俺の食い意地が張ってるからか?

「ビールあっちで売ってますけど、パイセン飲まないんですか? もろこしと合うらしいですよ」

「んー、お前らと居る時はなんか……しっかりしなきゃなって思っちゃってあんま飲む気にならん」

「確かに保護者枠ですよねパイセン」

「そもそも俺は木芽と違って酒そんなに好きじゃないしな。アイツいわくまだ美味さが分かってないだけらしいけど」

「パイセンえっちでセクシーだから、飲み会とか心配。お酒嫌いで人前では飲まないキャラでいて欲しい彼氏心」

「俺をセクシーだとか感じるのも心配なんて思えるのもお前くらいのもんだよ」

「そろそろ自分のエロさを認識したと思ってたのに……! 魅力分からせプレイ考えときますから!」

「うわ、なんか厄介な燃え方させちまった」

面倒臭そうに言いながらも表情は笑っている。まだ俺を侮っているのか、それとも普段とは違うプレイ目当てにわざと俺を煽ったんだったり? 後者だとしたらえっち過ぎる、やっぱり俺以外の男の前での飲酒は認められないな。
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