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ブロマイド風プレゼント (水月+ネザメ・ミフユ・ハル・リュウ・シュカ・カンナ・カミア・セイカ・歌見)

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ソファの前の背の低い机にプレゼントが並べられていく。

「では、次は私が」

シュカが名乗り出て、布製品が入っていそうな柔らかいプレゼントが渡される。滑らかな白い指が丁寧に包装紙を剥がし、現れたのは靴下二足。

「えっ……あの変なTシャツじゃないの!?」

「せや、しゅーと言えばどこで買うてんのか誰ターゲットにしてるんか何も分かれへん謎の四文字熟語ゴシック体クソダサTシャツやんけ、ちょぉ楽しみにしててんで俺ら。なぁ」

「うんうん、ザメさんには何の四文字熟語当てられるのかな~って!」

「アレ、安物なので。紅葉さんにはもう少しいい物を渡さないと……」

クソダサTシャツ呼ばわりに反論はないのか?

「ちなみにもしネザメさんに渡すとしたら、何て書いてあるシャツなんだ?」

「……猗頓之富、とかですかね?」

知らない言葉だ。

「聞いたことあれへんな、何それ」

「莫大な財産という意味だ。勉強が足りんぞ天正一年生」

「へぇ~……多分今日帰る頃には忘れてますわ」

俺も同意見だ。

「この靴下、触り心地いいねぇ。涼しそうだし気に入ったよ、使わせてもらうね」

着替えを用意するのも多分ミフユだから、シュカのプレゼントもミフユの管理下に置かれることになりそうだな。

「お兄ちゃんのクラスメイトみんな渡したんじゃない? 次僕達にしてもらおうよっ。紅葉さ~ん、次僕達からプレゼントです! お兄ちゃんほら行こっ」

「引っ張ん、ないで……」

カミアと、カミアに引っ張られてカンナがネザメの前に出る。

「こっちが僕からのプレゼントで、こっちがお兄ちゃんからです! 電話とかチャットとかで、二人で考えました~! お誕生日おめでとうございます!」

「も……さん。いつも、ぉ、世話……なって…………ぁり……がと、ご……ざ、ます……」

「ふふふ、ありがとう。時雨くん、小六くん」

推しアイドルが贈るプレゼントとあってかハルがネザメの手元を食い入るように見つめている。同じ物を買うつもりなのだろうか。

「おや、これは……保湿クリームかな? ありがとう時雨くん、これから秋が深まるにつれ乾燥対策は必要だものね。小六くんの方は……日焼け止め? あぁ、こっちも大切だね。秋風くんほどではないけれど、僕も色素が薄い方でねぇ……日焼けは大敵なんだよ。ありがとう二人とも」

「えへへ……あ、後、よければこれも……僕が出してる、誕生日お祝いソングを~……お兄ちゃんが電子楽器でクラシックアレンジしてくれたヤツなんです。紅葉さんクラシック好きだって言ってたので」

「へぇ……! 現役アイドルからの歌のプレゼントとは贅沢だね。後でじっくり聞かせてもらうよ。ミフユ、CDってどう聞くんだっけ?」

「後ほどプレイヤーをお持ち致します」

今大音量で流して欲しそうな顔をしているハルにはネザメもカミアも気付いていないようだ。ミフユは一瞬ハルの方を見たが、すぐにふいっと顔を背けた。

「次は誰だ? 一年生で残っているのは狭雲と鳴雷だが」

「水月くんは最後にしようよ。ね、いいだろう水月くん」

「プレッシャーかけますね……」

「……じゃあ俺? 分かった。結構自信ある。えっと、誕生日おめでとう……紅葉。いつも色々ありがとう」

いつも「俺なんか……」と自信なさげなセイカが珍しく「絶対に紅葉を喜ばせられる」と胸を張ったプレゼント。その正体は色気のない茶封筒の中に隠されていた。

「何何~? 商品券かなんか?」

「紅葉はんにんなもん渡してどないすんねん」

珍しいセイカの自信と、プレゼントの薄さから彼氏達の興味も惹き付けた。

「……! こっ、これは……!」

封筒を開け、中身を取り出したネザメが目を見開く。彼氏達が席を立ってそれを覗き込む。

「なんて、なんて素晴らしい……! 狭雲くん、天才だよ君は!」

「……なにこれ」

「ブロマイド、とか言うんじゃありませんでしたっけ」

「よぉ撮れてんなぁ。流石絵ぇなるわ」

封筒の中身はアキの写真十数枚。ベッドの上でくつろぐ様子から、プールやサウナで過ごしている様、フォークに巻いたスパゲティをカメラに向かって突き出したものや、腰にタオルを被せただけの裸同然の姿まで。

「今すぐラミネート加工をして徹底的な保存を……ミフユ!」

「わ、分かりました。すぐ手配します」

「…………セイカ」

片方短くなった腕を組み、ドヤ顔をキメているセイカの名を呼ぶ。

「どうだ鳴雷、俺のプレゼントが一番だろ」

「どうだじゃないだろ! 人の弟の写真勝手にプレゼントにして! 普通の写真でもどうかと思うのに……なんだよこの袋とじの中身みたいな写真は!」

「袋とじの中身はもっとえぐいぞ、未成年水月」

「んなこたどうでもいいんですよ先輩! 肖像権ってもんがあるだろセイカ!」

「あ、秋風に許可は取ってる……」

《マジでめっちゃ喜んでんじゃんモミジ。ウケる。ネタだと思ってたぜスェカーチカ》

アキはネザメを眺めて楽しそうに笑っている。確かにアキの許可は取っているようだ。だがそういう問題じゃない。

「そりゃアキくんに協力してもらわなきゃこんな写真撮れないだろ。水月、何怒ってるんだ?」

「……なんで俺の写真ないの!? ネザメさんに贈るんだったら俺第一だろ俺が彼氏なんだから!」

「だ、だって……」

「だって? 何だよ」

「当日まで鳴雷に知られたくなかったし……」

「何でだよ!」

「その方が面白いかなって。パクられたくなかったし、絶対プレゼント嬉しい順一位になると思ったから。このレースやる気のない秋風には知られてて問題ないけど、やる気満々っぽい鳴雷はライバルだから……」

「知らないよそんなレース! 別にパクんないし……これそんなに自信あったの? いや、まぁ、基本的にはまぁ、いいんだけど……これはダメだろ!」

俺はタオルを腰に被せただけの、ベッドに横たわる裸のアキの写真をネザメの手から奪ってセイカに突き出した。

「……それで撮ろうって言い出したの秋風だし」

「秋風だし……じゃないよ! 未成年のこんな写真撮っちゃいけません! 鼠径部見えとるやないかい!」

「み、水月くん、返して……一番のお宝写真なんだよ。強く掴まないでおくれ、写真が曲がってしまう」

ネザメの手が弱々しく俺の腕を掴む。

「鳴雷はハメ撮りしまくってるくせに俺がちょっと際どい写真贈ったら怒るのかよ! いいだろ別に紅葉が喜んでるんだから!」

「そっ、それとこれとは関係ないだろ! 俺のハメ撮りは俺のオカズに使ってるだけだ!」

「ハ、ハメ……!? 水月くん、送ってもらえないかい? 世界の至宝たる君と、同じ美しさを持つ秋風くんの……! なんて、そんなの……独り占めはよくないよ!」

「ハメ撮りは独り占めか二人占めが基本でしょうが!」

全く、どいつもこいつも俺の弟を何だと思ってるんだ。しかしアキはこういう写真を撮らせてくれるんだな、ノリノリでポーズを決めているじゃないか。俺も撮らせてもらえるかな……今度頼んでみるか。
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