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この犬、何犬? (水月+カサネ・ハル・ヒト・フタ・サン)
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シュカとフタの関係は心配ではあるが、現段階では仲が良いも悪いもなく、進展することもなさそうなので、全体の雰囲気が悪くなることはないだろう。彼らの間に交流が生まれないだけで。それならそこまで気にすることはないのかもしれない、俺が少し寂しいだけだ。
「水月いい匂いする。いつもいい匂いするけど、いつもと違うね」
「普段のより高い香水にしてみたんだ。ご飯食べるから控えめだけど……よく分かるねぇ、流石サン」
俺を背後から抱き締めているサンの腕に手を添えてイチャついていると、フタを連れたままのヒトがネザメに話しかけに行くのが見えた。ヒトは案外社交的なのだろうか、聞き耳を立てておこう。
「紅葉さん、当初から気になっていたのですが、照明……少し暗くないですか?」
「秋風くんがサングラスを外していられる照度に調整させています。過ごしにくければテーブルランプを用意させますよ」
「あぁ……秋風くんのためですか。なるほど。いえ、もう目が慣れたので大丈夫です。気になっただけで」
そういえば暗い……かな? 薄暗いアキの部屋に居ることが多いせいか、あまり気にならない。
「兄貴は神経質だなぁ、ボクなんて生まれてこの方部屋の明るさを気にしたことなんて一度もないよ」
そりゃそうだろ、って言っていいヤツか? これ。サンのことだからジョークのつもりだろうし、困らせるのも遊びのうちなのかもな。
「ネザメ様、繰言二年生が到着したようです」
「体調は大丈夫なのかい?」
ネザメとミフユの会話が聞こえてすぐ、扉が開く。
「し、失礼します……あれっ、えっ、は、始めてないの? えっ、ま、待っててくれた感じ? うわ、申し訳な…………ほっときゃいいのに」
カサネだ。パグ犬を抱いている。
「サン、ごめん、ちょっと離して……カサネ先輩! 車酔いって聞きましたけど、具合はどうですか?」
「なっ、みつっ、鳴っ……み…………鳴雷、くん。えっと……」
「水月、って呼ぶの恥ずかしいですか?」
「…………人、前は……ちょっと」
名前で呼んで欲しいけれど、無理強いは出来ない。この場には彼氏達だけでなく、ミフユの親類も居るのだから。じゃあ、あんまりイチャつかない方がよかったかな、彼らがあんまり上手に存在感を消してしまうからつい……
「そうですか。じゃあ我慢します、二人きりになれた時は水月でお願いしますね。それで、車酔いはどうですか?」
「あぁ……うん、大丈夫そう。酔うタイプだったとは知らなくて、車乗せたの初めてだから……」
「……あっ、フランクちゃんの方ですか。先輩の方かと思ってた……大丈夫そうなんですか? これ」
「うん。さっきもっと気持ち悪そうにしてたから」
犬は脱力してカサネに身を任せているが、それが車酔いによる体調不良なのか、いつも通りなのか判別が付かない。
「せ~んぱいっ、ワンちゃん見~せてっ」
ハルが俺の肩越しにカサネの腕の中に居る犬を覗く。カサネが犬を飼っていることはメッセージアプリで通知済みだ、読んでいる者は知っているだろう。シュカだとかは知らないかも。
「ぉわっ……」
「わー! えーっとぉ……パグ? ですよねっ、可愛い~!」
「……! そ、そう、パグ……フランクって言うんだ」
「へー、可愛い~。あ、違う部屋に~、ザメさんが犬用の会場用意してるらしいですよ~」
「ぁ……べ、別の部屋なんだ。分かった。じゃあ、そ、そっちに……フランク置いてくる」
「案内します」
「俺も行く~。犬の絡み見たい~」
「犬? ヒト兄ぃ、犬見たい」
「あっフタ! すいません、私達も一緒に行っても?」
犬を抱えたカサネ、犬達を見たがったハル、フタ、その付き添いのヒトを、俺が部屋まで案内することになった。
「犬だ~、顔くちゃくちゃ」
「ブルドッグですね。この皺がチャームポイントなんですよ、フタ」
「……パグです」
ハルが犬種を当てた時はとても嬉しそうで、それから機嫌が良かったのに、ヒトが間違えたから元通りの暗さに戻ってしまった。
「…………すいません」
「い、いえ、よく……あるので」
「ここです。先輩」
犬のために用意された部屋の扉を開ける。一人……? 一匹? でぬいぐるみを噛んで遊んでいた白と黒の犬、ネザメの飼い犬ボーダーコリーのメープルが体を起こし、尻尾を振る。
「ヒトさん犬は大丈夫なんですよね?」
「はい、毛のある動物は嫌いですが、嫌いなだけです。猫以外は大丈夫ですよ、お気遣いありがとうございます鳴雷さん」
カサネはゆっくりとパグをその場に下ろした。ボーダーコリーがすかさず尻の匂いを嗅ぎ始める。
「……ヒトさん、この子の犬種は分かります?」
「えっ?」
ハルとカサネに何も言わないように目配せをし、改めてヒトを見つめる。
「ぼっ……」
おっ? ボーダーコリーは分かるのか?
「…………牧羊犬の……えっと……牧羊犬の……えー…………あっ! コーギー!」
「……ボーダーコリーです。コーギーは足の短い食パンみたいな子ですよ」
「あれ……? 牧羊犬ですよね?」
「はい、ボーダーコリーは牧羊犬ですけど……コーギーも、でしたっけ」
「コーギーも牧羊犬だぞ」
同じ牧羊犬でも色もサイズも体型も何もかも違う。顔の柄はちょっと似てるか? いや……別に似てないか。
「…………ヒトさん犬に関してはこんなもんですから、気を悪くしないでくださいね。さっきの」
「えっ、ぁ、あぁ、いや別に、よくあることだし、マジで」
カサネの視線を追ってパグを見下ろす。ボーダーコリーはパグの目の前にぬいぐるみや短いロープを持ってきて遊びに誘っているようだが、パグは大きなクッションの上で何度かくるくると回った後、体を丸めて目を閉じた。
「大人しい子ですね、老犬ですか?」
「ぁ、いえ、一歳半くらいです……ああいう子なんです」
「そうなんですか。大人しい子の方が好きですよ、私。それにしても……えぇと、繰言さん? 変わった髪の染め方してますね。あなたの方が……何でしたっけ、コーギーじゃなくて」
「ボーダーコリー」
「それ! ありがとうございます鳴雷さん。ボーダーコリーとお揃い、みたいな感じですよね。白と黒で」
「あ、あぁ……はは、確かに……」
ヒトは積極的に話しかけているけれど、カサネとの相性はあまり良くなさそうだな。っていうかヒトと相性いい人間、居るのかな。
「水月いい匂いする。いつもいい匂いするけど、いつもと違うね」
「普段のより高い香水にしてみたんだ。ご飯食べるから控えめだけど……よく分かるねぇ、流石サン」
俺を背後から抱き締めているサンの腕に手を添えてイチャついていると、フタを連れたままのヒトがネザメに話しかけに行くのが見えた。ヒトは案外社交的なのだろうか、聞き耳を立てておこう。
「紅葉さん、当初から気になっていたのですが、照明……少し暗くないですか?」
「秋風くんがサングラスを外していられる照度に調整させています。過ごしにくければテーブルランプを用意させますよ」
「あぁ……秋風くんのためですか。なるほど。いえ、もう目が慣れたので大丈夫です。気になっただけで」
そういえば暗い……かな? 薄暗いアキの部屋に居ることが多いせいか、あまり気にならない。
「兄貴は神経質だなぁ、ボクなんて生まれてこの方部屋の明るさを気にしたことなんて一度もないよ」
そりゃそうだろ、って言っていいヤツか? これ。サンのことだからジョークのつもりだろうし、困らせるのも遊びのうちなのかもな。
「ネザメ様、繰言二年生が到着したようです」
「体調は大丈夫なのかい?」
ネザメとミフユの会話が聞こえてすぐ、扉が開く。
「し、失礼します……あれっ、えっ、は、始めてないの? えっ、ま、待っててくれた感じ? うわ、申し訳な…………ほっときゃいいのに」
カサネだ。パグ犬を抱いている。
「サン、ごめん、ちょっと離して……カサネ先輩! 車酔いって聞きましたけど、具合はどうですか?」
「なっ、みつっ、鳴っ……み…………鳴雷、くん。えっと……」
「水月、って呼ぶの恥ずかしいですか?」
「…………人、前は……ちょっと」
名前で呼んで欲しいけれど、無理強いは出来ない。この場には彼氏達だけでなく、ミフユの親類も居るのだから。じゃあ、あんまりイチャつかない方がよかったかな、彼らがあんまり上手に存在感を消してしまうからつい……
「そうですか。じゃあ我慢します、二人きりになれた時は水月でお願いしますね。それで、車酔いはどうですか?」
「あぁ……うん、大丈夫そう。酔うタイプだったとは知らなくて、車乗せたの初めてだから……」
「……あっ、フランクちゃんの方ですか。先輩の方かと思ってた……大丈夫そうなんですか? これ」
「うん。さっきもっと気持ち悪そうにしてたから」
犬は脱力してカサネに身を任せているが、それが車酔いによる体調不良なのか、いつも通りなのか判別が付かない。
「せ~んぱいっ、ワンちゃん見~せてっ」
ハルが俺の肩越しにカサネの腕の中に居る犬を覗く。カサネが犬を飼っていることはメッセージアプリで通知済みだ、読んでいる者は知っているだろう。シュカだとかは知らないかも。
「ぉわっ……」
「わー! えーっとぉ……パグ? ですよねっ、可愛い~!」
「……! そ、そう、パグ……フランクって言うんだ」
「へー、可愛い~。あ、違う部屋に~、ザメさんが犬用の会場用意してるらしいですよ~」
「ぁ……べ、別の部屋なんだ。分かった。じゃあ、そ、そっちに……フランク置いてくる」
「案内します」
「俺も行く~。犬の絡み見たい~」
「犬? ヒト兄ぃ、犬見たい」
「あっフタ! すいません、私達も一緒に行っても?」
犬を抱えたカサネ、犬達を見たがったハル、フタ、その付き添いのヒトを、俺が部屋まで案内することになった。
「犬だ~、顔くちゃくちゃ」
「ブルドッグですね。この皺がチャームポイントなんですよ、フタ」
「……パグです」
ハルが犬種を当てた時はとても嬉しそうで、それから機嫌が良かったのに、ヒトが間違えたから元通りの暗さに戻ってしまった。
「…………すいません」
「い、いえ、よく……あるので」
「ここです。先輩」
犬のために用意された部屋の扉を開ける。一人……? 一匹? でぬいぐるみを噛んで遊んでいた白と黒の犬、ネザメの飼い犬ボーダーコリーのメープルが体を起こし、尻尾を振る。
「ヒトさん犬は大丈夫なんですよね?」
「はい、毛のある動物は嫌いですが、嫌いなだけです。猫以外は大丈夫ですよ、お気遣いありがとうございます鳴雷さん」
カサネはゆっくりとパグをその場に下ろした。ボーダーコリーがすかさず尻の匂いを嗅ぎ始める。
「……ヒトさん、この子の犬種は分かります?」
「えっ?」
ハルとカサネに何も言わないように目配せをし、改めてヒトを見つめる。
「ぼっ……」
おっ? ボーダーコリーは分かるのか?
「…………牧羊犬の……えっと……牧羊犬の……えー…………あっ! コーギー!」
「……ボーダーコリーです。コーギーは足の短い食パンみたいな子ですよ」
「あれ……? 牧羊犬ですよね?」
「はい、ボーダーコリーは牧羊犬ですけど……コーギーも、でしたっけ」
「コーギーも牧羊犬だぞ」
同じ牧羊犬でも色もサイズも体型も何もかも違う。顔の柄はちょっと似てるか? いや……別に似てないか。
「…………ヒトさん犬に関してはこんなもんですから、気を悪くしないでくださいね。さっきの」
「えっ、ぁ、あぁ、いや別に、よくあることだし、マジで」
カサネの視線を追ってパグを見下ろす。ボーダーコリーはパグの目の前にぬいぐるみや短いロープを持ってきて遊びに誘っているようだが、パグは大きなクッションの上で何度かくるくると回った後、体を丸めて目を閉じた。
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