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昼休みにはゲームを (〃)
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昼食を食べ終えてすぐ、俺はゲーム機を起動させた。まずは繰言がマルチプレイでやってみたいこととやらをやらせてやろうと思う。
「……! やった、色ミロ……! へへ、やっと進化させられたぁ……」
「他の交換進化のヤツは進化させてるのに、その子だけしてなかったんですね」
「う、うん。色違いはちょっと、持ってかれそうで怖いし」
「色違いだけの交換掲示板もあるでしょ?」
「それはそうなんだけど……凝った名前付けて可愛がってる子だから、絶対返して欲しくてさ、色違い同士交換しても同じ色違いだからいいやって交換一回で通信切られちゃうかもじゃんっ? 絶対返し合おうって書いてても、そんな、ネットの掲示板とか信用出来ないし」
「なるほど。じゃあ俺のことは信用してくれてるんですね、ちょっと嬉しい」
「えっ? い、いや、リアルで交換泥棒やらかすヤツ居ないだろってだけでっ」
俺を信用していることをそんなに否定することなくない?
「……え? ま、待って、俺に信用されてたら、ぅ、嬉しい……の? お前」
「そりゃ嬉しいですよ」
「…………なっ、なんで? 俺からの信用とかこの世で一番無意味な概念じゃないっ?」
「そんなことないですよ、俺……セイカの言う通りゲームで遊べる友人ってのがあんまり居なくて……ゲームやる子でも、やるゲーム被ってなかったり腕や熱量が違ったりで……趣味と熱量が結構被ってる繰言先輩のこと逃がしたくないんですよ」
「に、逃がしたくないって……その言葉選びはどうかと思うんですけどっ、ティーンズラブの広告かよって感じなんですけどっ」
「だから警戒心強そうなあなたに少しでも信用されたら嬉しいなって……でも、別にそういう訳じゃなかったんですね」
先程感じた小さなショックを大げさに表情で表現してみた。
「……っ!? ちちちちがっ、そそ、そんな、ちがっ、あの、だっ、だ、だって! 顔が、顔がいいから、信用とか……! なんかっ……あの……」
「…………胡散臭い顔してます?」
「ぃ、やっ、ちが……くて、あの……お、俺が勝手にっ、ひ、ひがんでるだけ……」
「……繰言先輩もカッコイイのに?」
「はぁあぁ!? その顔でんなこと言われても嫌味としかっ……ぁ……こ、こういうの、よく、その……言われて、きた? 的な? ィ、イケメンも苦労することはあるんだな……」
歪んだ自己愛を抱えた他人に興味がないタイプのオタクかと思っていたが、俺の間違ったレッテル貼りだったようだ。繰言は案外と他人の……俺の事情を想像してくれる人だった。
そういえば初対面の時も、あの時の俺は嫉妬のあまり視界が狭くなっていて気付かなかったけれど、セイカの身体を気遣っていた。卑屈で分かりにくいけれど、優しい人のようだ。
「この顔で有利なことって多いけど、疎ましいことも結構あって……その気苦労なんて他人に愚痴っても自慢に思われちゃうだけなんですよね。だから、繰言先輩みたいに言ってくれる人……すごく好きです」
「そ、そうなんだ? まぁ確かにイケメンで苦労した話とか自慢感すごいよな。で、でも一旦僻みとか嫉み横に置いたらっ、否応なしに目立って知らねぇブスからも好かれるようなツラっ、ぶら下げてんの辛いよなって分かるはずなんですけど? やややっぱり大半の人間って客観視が出来ないんだよなうんっ、想像力のない人間に囲まれてるとストレス溜まるよなほんと。って、ていうか、好き? マジ? 俺? へへっ、こ、後輩に好かれちゃったぁ、いい先輩出来たかな俺っ」
後輩扱いか……まぁ今のところはそれでいい。
(んー、顔の良さと、卑屈な態度にギュンと股間が反応したからってだけで口説こうとしてましたが……話してみると普通にいい子でイイですな。優しいし、気遣いも……まぁ、余計なこと言い過ぎることもあるとはいえそこそこ……何より好意を向けたら素直に喜ぶところが非常にかわゆい。慣れてない笑顔がよきでそ。あー……笑顔見ると本気で欲しくなってきますな、早く手に入れちゃいたいでそ)
ボディタッチはまだやめておいた方がいいかな。元々男をそういう対象として見ていなかったら、友人同士のスキンシップとは毛色の違うボディタッチなんて気持ち悪いだけだろう。無闇に警戒心を高めさせるのは悪手だ。
(わたくしはキモオタなだけでなくデブスという触れる物全てバイ菌扱いされるタイプのオタクだったので、中学時代セイカ様が体育とかでペア組んで普通に触ってくれただけで惚れちゃったのですが……この方見た目は気持ち悪くないのでデブス時代のわたくしほど他人に触られた時の感動はなさそうなんですよな)
清潔感は大事だよな、と汗っかきだったデブス時代を思い返し、九月にサマーニットを身に付けているのに汗臭さのない繰言を比べてみた。
「な、鳴雷くんっ、対戦さ、シングルとダブルどっちがいい?」
「とりあえずシングルやりましょ」
「っし、昼休みもうあんま時間ないし、耐久パはナシで」
「はい、速攻かけますね」
「へへ……その一言、結構情報あるんですけど? これは勝ち確……ふひひ」
どんなゲームでも対戦を楽しむにはプレイヤーの実力の拮抗が必要だ。オンラインならレートというものがあるからどれだけ下手でも、逆にどれだけ上達しても、自分と同じくらいの腕の相手と闘える。しかしリアルではどうだろう、友人や恋人と実力が拮抗することは稀だ。
「怯むな怯むな怯むなっ……アァーッ!? 二連続怯み!?」
「っしゃ、何もさせずに一体落としましたよ。勝ち確とか言ってましたっけ? せ、ん、ぱぁ~い」
「クッソ……こ、こんなん運ゲーだろっ……運ゲー乗ってやるよちくしょう!」
「へぇ? どんな運……ウワーッ!? 先制即死技!?」
「っしゃ確率の壁突破ぁ! よしよしそいつさえ落とせばもう怯みは怖くない……二体目は、うわ、入れてくるよなそいつは……何型だ? まずは小手調べ……うわゴツメかよクソ」
「また即死技を……! ッハハそんな何度も決まるかってんだぃ! ふぃーヒヤッとしたぁ~」
「クソ、やっぱり連続即死は無理か……」
今回は昼休みという時間制限があったので運に頼る場面が多く、実力云々はあまり関係なかったが楽しい時間を過ごせた。
「……! やった、色ミロ……! へへ、やっと進化させられたぁ……」
「他の交換進化のヤツは進化させてるのに、その子だけしてなかったんですね」
「う、うん。色違いはちょっと、持ってかれそうで怖いし」
「色違いだけの交換掲示板もあるでしょ?」
「それはそうなんだけど……凝った名前付けて可愛がってる子だから、絶対返して欲しくてさ、色違い同士交換しても同じ色違いだからいいやって交換一回で通信切られちゃうかもじゃんっ? 絶対返し合おうって書いてても、そんな、ネットの掲示板とか信用出来ないし」
「なるほど。じゃあ俺のことは信用してくれてるんですね、ちょっと嬉しい」
「えっ? い、いや、リアルで交換泥棒やらかすヤツ居ないだろってだけでっ」
俺を信用していることをそんなに否定することなくない?
「……え? ま、待って、俺に信用されてたら、ぅ、嬉しい……の? お前」
「そりゃ嬉しいですよ」
「…………なっ、なんで? 俺からの信用とかこの世で一番無意味な概念じゃないっ?」
「そんなことないですよ、俺……セイカの言う通りゲームで遊べる友人ってのがあんまり居なくて……ゲームやる子でも、やるゲーム被ってなかったり腕や熱量が違ったりで……趣味と熱量が結構被ってる繰言先輩のこと逃がしたくないんですよ」
「に、逃がしたくないって……その言葉選びはどうかと思うんですけどっ、ティーンズラブの広告かよって感じなんですけどっ」
「だから警戒心強そうなあなたに少しでも信用されたら嬉しいなって……でも、別にそういう訳じゃなかったんですね」
先程感じた小さなショックを大げさに表情で表現してみた。
「……っ!? ちちちちがっ、そそ、そんな、ちがっ、あの、だっ、だ、だって! 顔が、顔がいいから、信用とか……! なんかっ……あの……」
「…………胡散臭い顔してます?」
「ぃ、やっ、ちが……くて、あの……お、俺が勝手にっ、ひ、ひがんでるだけ……」
「……繰言先輩もカッコイイのに?」
「はぁあぁ!? その顔でんなこと言われても嫌味としかっ……ぁ……こ、こういうの、よく、その……言われて、きた? 的な? ィ、イケメンも苦労することはあるんだな……」
歪んだ自己愛を抱えた他人に興味がないタイプのオタクかと思っていたが、俺の間違ったレッテル貼りだったようだ。繰言は案外と他人の……俺の事情を想像してくれる人だった。
そういえば初対面の時も、あの時の俺は嫉妬のあまり視界が狭くなっていて気付かなかったけれど、セイカの身体を気遣っていた。卑屈で分かりにくいけれど、優しい人のようだ。
「この顔で有利なことって多いけど、疎ましいことも結構あって……その気苦労なんて他人に愚痴っても自慢に思われちゃうだけなんですよね。だから、繰言先輩みたいに言ってくれる人……すごく好きです」
「そ、そうなんだ? まぁ確かにイケメンで苦労した話とか自慢感すごいよな。で、でも一旦僻みとか嫉み横に置いたらっ、否応なしに目立って知らねぇブスからも好かれるようなツラっ、ぶら下げてんの辛いよなって分かるはずなんですけど? やややっぱり大半の人間って客観視が出来ないんだよなうんっ、想像力のない人間に囲まれてるとストレス溜まるよなほんと。って、ていうか、好き? マジ? 俺? へへっ、こ、後輩に好かれちゃったぁ、いい先輩出来たかな俺っ」
後輩扱いか……まぁ今のところはそれでいい。
(んー、顔の良さと、卑屈な態度にギュンと股間が反応したからってだけで口説こうとしてましたが……話してみると普通にいい子でイイですな。優しいし、気遣いも……まぁ、余計なこと言い過ぎることもあるとはいえそこそこ……何より好意を向けたら素直に喜ぶところが非常にかわゆい。慣れてない笑顔がよきでそ。あー……笑顔見ると本気で欲しくなってきますな、早く手に入れちゃいたいでそ)
ボディタッチはまだやめておいた方がいいかな。元々男をそういう対象として見ていなかったら、友人同士のスキンシップとは毛色の違うボディタッチなんて気持ち悪いだけだろう。無闇に警戒心を高めさせるのは悪手だ。
(わたくしはキモオタなだけでなくデブスという触れる物全てバイ菌扱いされるタイプのオタクだったので、中学時代セイカ様が体育とかでペア組んで普通に触ってくれただけで惚れちゃったのですが……この方見た目は気持ち悪くないのでデブス時代のわたくしほど他人に触られた時の感動はなさそうなんですよな)
清潔感は大事だよな、と汗っかきだったデブス時代を思い返し、九月にサマーニットを身に付けているのに汗臭さのない繰言を比べてみた。
「な、鳴雷くんっ、対戦さ、シングルとダブルどっちがいい?」
「とりあえずシングルやりましょ」
「っし、昼休みもうあんま時間ないし、耐久パはナシで」
「はい、速攻かけますね」
「へへ……その一言、結構情報あるんですけど? これは勝ち確……ふひひ」
どんなゲームでも対戦を楽しむにはプレイヤーの実力の拮抗が必要だ。オンラインならレートというものがあるからどれだけ下手でも、逆にどれだけ上達しても、自分と同じくらいの腕の相手と闘える。しかしリアルではどうだろう、友人や恋人と実力が拮抗することは稀だ。
「怯むな怯むな怯むなっ……アァーッ!? 二連続怯み!?」
「っしゃ、何もさせずに一体落としましたよ。勝ち確とか言ってましたっけ? せ、ん、ぱぁ~い」
「クッソ……こ、こんなん運ゲーだろっ……運ゲー乗ってやるよちくしょう!」
「へぇ? どんな運……ウワーッ!? 先制即死技!?」
「っしゃ確率の壁突破ぁ! よしよしそいつさえ落とせばもう怯みは怖くない……二体目は、うわ、入れてくるよなそいつは……何型だ? まずは小手調べ……うわゴツメかよクソ」
「また即死技を……! ッハハそんな何度も決まるかってんだぃ! ふぃーヒヤッとしたぁ~」
「クソ、やっぱり連続即死は無理か……」
今回は昼休みという時間制限があったので運に頼る場面が多く、実力云々はあまり関係なかったが楽しい時間を過ごせた。
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