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同族嫌悪 (水月+カサネ)
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彼氏達の紹介を、彼氏だとは言わずに繰言にしなければ。まずは繰言に怯えられているハルからだな。
「安心してください繰言先輩、ギャルはギャルでもオタクに優しいギャルです」
「んなもん実在しないっ……! っていうか男子校になんでギャルが……」
「男ですよ」
「男の娘……!?」
「いえ、女装男子女装オフモードです」
シュカは既に弁当を広げているが、彼以外は繰言に興味津々のようで俺の背後を覗こうとしている。距離感云々をみんなちゃんと聞いていなかったのかもしれない。
「みんな俺のクラスメイトです。シュカ……あちらのメガネっ子が生徒会副会長で、彼繋がりでネザメさん達と仲良くさせていただいてます」
「ま、まぁ……その顔なら気に入られるだろうな、紅葉……なんか、耽美主義、だし」
ネザメの美しいモノ好きはほとんど学校に来ないようなクラスメイトにまで知られているのか。入学早々「美しいモノにしか興味ありません!」なんて某ラノベもどきな自己紹介でもかましたのか?
「この人懐っこいギャルがハル、意外と漫画好きなオタクに優しいギャルです」
「俺別にギャルじゃないと思うんだけど~、髪長いってだけでさ~、みっつんその辺のジャンル分け苦手だよね~」
「このギャンかわメカクレボーイがカンナたん。マジ天使」
「へ、変なせつめっ……やめて、よ……!」
「コイツがリュウ。エセヤンキー。たまにマシンガントークするけど大阪出身だからだから、あんまり気にしなくていい」
「マシンガントークなんかしたことあれへんよ」
「セイカは紹介いりませんね。終わりです。じゃ、次は先輩の番」
横に避けると、繰言も横に移動して俺の背後に隠れ続けた。左右左左右と素早く移動を繰り返すも、繰言は綺麗に着いてくる。なかなか反射神経はいいようだ。
「何してんのみっつん、反復横跳び?」
「食べてるのにホコリ立てないでください」
「え、あっ、鳴雷待たなくていいの? じゃあ……いただきます」
席に座ってしまえば背後になんて隠れられないし、背後に隠れたまま紹介を済ませてもいいのだが、ここまで来たら意地になってしまう。大して仲良くない、まだ彼氏どころか友達ですらない繰言に触れるのは躊躇っていたが、力づくでやってやろう。
「ひっ!? ちょっ!?」
振り返り、肩を掴み、俺が繰言の背後に回り込んで扉を背にし、腕を組む。
「ちょっ、ちょぉっ……鳴雷くん!?」
繰言は俺の二の腕を掴むが、ヒョロガリオタクに動かされるようなガタイは昔からしていない。
「紹介は俺がしますから、前向いてください」
「ぅゔうぅ……」
「みんな、こちらが二年生の繰言先輩。ネザメさん達のクラスメイトだ」
「よろしく~」
「よろしゅう」
隅に座っている俺の言いつけ通りセイカは何も言わず、シュカは食事に夢中でこちらに興味なし、カンナは会釈をしていたが多分繰言は見ていない。
「……どうぞ、こちらへ」
セイカから最も遠い隅の席に座らせ、その隣に俺が座る。ちなみに俺のもう片方の隣にはカンナが座っている。
「いただきます」
手を合わせ、弁当を広げる。繰言が何を食べているのか気になってチラリと横を見ると、ゼリー飲料が見えた。
「……ぁ、あのー、鳴雷くん?」
ちゅーっと一吸いの後、繰言は黒と白の髪の隙間から俺を見上げた。卑屈そうな薄笑いと上目遣いの組み合わせが胸にクる。同族嫌悪は消えていないのに、整った顔でそんな卑屈な態度を取られると手篭めにしたくなる。
「何です?」
せっかくセイカが会わせてくれたんだ、次の標的として狙ってもいいかもしれない。レイは上級者過ぎで、歌見はエンジョイ勢だから、本気同士でゲームのマルチプレイが出来る相手には飢えていた。好みの顔の男と友達でいるのは難しそうだし、落としてしまおう。
(陰キャオタクはちょっと優しくすれば惚れちゃうのは、わたくしで実証済みですしな)
中学生の頃、俺の初恋を奪ったセイカをチラリと見た。
「お、俺さ……早苗ちゃんに、お昼誘われたんだけど……さ、早苗ちゃんどこ?」
「セイカならあっちに居ますよ。あと、セイカに誘うよう言ったのは俺です。ゲーム機持ってきたんで、ちょっとやりましょ」
「マ、マジっ? やったっ、へへ……い、色違い捕まえたんだけど交換進化だからずっと置いてるヤツが居てさっ……そ、そいつの進化いい?」
「もちろん。対戦もやります?」
「……! や、やる!」
俺を惚れさせた前科のあるセイカに繰言を接触させるのは危険だ。他の彼氏ならいいという訳ではない、リュウもハルも笑顔で優しく繰言に接するだろう。陰キャオタクにその態度はダメだ。
(カンナたんは無口だからそもそも関われなさそうですし、シュカたまも今日は不機嫌ですから絡めなさそうなので、気にしておくべきはリュウどのとハルたそですな)
繰言が俺の彼氏達に惚れる前に、俺に惚れさせなければな。
「鳴雷ー……薬ちょうだい」
繰言とゲームの話で盛り上がってしまって食事を進めるのを忘れていた俺とは違い、セイカはもう食事を終えたようだ。
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
落としたり忘れたり、こっそり飲むのをサボったり、なんてのを防ぐためセイカの薬は俺が管理することになっている。セイカの今日の分の薬をカンナに渡し、セイカに渡してもらった。
「ありがと、鳴雷……時雨も」
カンナの影からセイカを覗き、彼が薬を飲むのを見守った。
「…………さ、早苗ちゃん、何飲んでるの?」
「……痛み止めとかです。切ってからまだ日が浅いので」
確かセイカは精神安定剤を飲んでいることを言及されるのが嫌いだったはずだ。適当に誤魔化し、箸を持ち直す。
「あ……そ、そうなんだ、切ってって、その、手足?」
「…………ええ、事故で」
「だ、だよね。あっ俺も病院で身体切ったことあるよっ、内臓、えっと、消化器官、胃とか腸……肝臓もだっけ。ちょっとずつないんだっ。あっだから何だって話ですよねすいません黙ります」
「な、何も言ってませんよ……黙らなくていいです、お話しましょう?」
「話すんですか!? 俺と!? へ、へへ、悪趣味……あっ、鳴雷くんホラーゲームはやる? こないだ出たホラーゲームなまら怖くて超面白かったし再生数も伸びたんだけどっ、一周目はネタバレなしで楽しんで欲しいタイプのゲームだったからやってないならまずやるか見るかしてから語りたいでござるって感じなんですけどはい」
内臓がちょっとずつない件についてもう少し聞きたかったのだが、勢い余って話してしまっただけで話したくないことなのかもしれないし、今は聞くのはやめておこう。
「ホラーゲームですか……クリーチャー出る系ならやるんですけど、幽霊系はあんまり。それどっちです?」
「ヒトコワ!」
「あー、あんまり触れないジャンルです。でも勧められると気になっちゃいますね、タイトル教えてくださいよ」
今は繰言に楽しく話してもらって仲を深めていくのが優先だ。
「安心してください繰言先輩、ギャルはギャルでもオタクに優しいギャルです」
「んなもん実在しないっ……! っていうか男子校になんでギャルが……」
「男ですよ」
「男の娘……!?」
「いえ、女装男子女装オフモードです」
シュカは既に弁当を広げているが、彼以外は繰言に興味津々のようで俺の背後を覗こうとしている。距離感云々をみんなちゃんと聞いていなかったのかもしれない。
「みんな俺のクラスメイトです。シュカ……あちらのメガネっ子が生徒会副会長で、彼繋がりでネザメさん達と仲良くさせていただいてます」
「ま、まぁ……その顔なら気に入られるだろうな、紅葉……なんか、耽美主義、だし」
ネザメの美しいモノ好きはほとんど学校に来ないようなクラスメイトにまで知られているのか。入学早々「美しいモノにしか興味ありません!」なんて某ラノベもどきな自己紹介でもかましたのか?
「この人懐っこいギャルがハル、意外と漫画好きなオタクに優しいギャルです」
「俺別にギャルじゃないと思うんだけど~、髪長いってだけでさ~、みっつんその辺のジャンル分け苦手だよね~」
「このギャンかわメカクレボーイがカンナたん。マジ天使」
「へ、変なせつめっ……やめて、よ……!」
「コイツがリュウ。エセヤンキー。たまにマシンガントークするけど大阪出身だからだから、あんまり気にしなくていい」
「マシンガントークなんかしたことあれへんよ」
「セイカは紹介いりませんね。終わりです。じゃ、次は先輩の番」
横に避けると、繰言も横に移動して俺の背後に隠れ続けた。左右左左右と素早く移動を繰り返すも、繰言は綺麗に着いてくる。なかなか反射神経はいいようだ。
「何してんのみっつん、反復横跳び?」
「食べてるのにホコリ立てないでください」
「え、あっ、鳴雷待たなくていいの? じゃあ……いただきます」
席に座ってしまえば背後になんて隠れられないし、背後に隠れたまま紹介を済ませてもいいのだが、ここまで来たら意地になってしまう。大して仲良くない、まだ彼氏どころか友達ですらない繰言に触れるのは躊躇っていたが、力づくでやってやろう。
「ひっ!? ちょっ!?」
振り返り、肩を掴み、俺が繰言の背後に回り込んで扉を背にし、腕を組む。
「ちょっ、ちょぉっ……鳴雷くん!?」
繰言は俺の二の腕を掴むが、ヒョロガリオタクに動かされるようなガタイは昔からしていない。
「紹介は俺がしますから、前向いてください」
「ぅゔうぅ……」
「みんな、こちらが二年生の繰言先輩。ネザメさん達のクラスメイトだ」
「よろしく~」
「よろしゅう」
隅に座っている俺の言いつけ通りセイカは何も言わず、シュカは食事に夢中でこちらに興味なし、カンナは会釈をしていたが多分繰言は見ていない。
「……どうぞ、こちらへ」
セイカから最も遠い隅の席に座らせ、その隣に俺が座る。ちなみに俺のもう片方の隣にはカンナが座っている。
「いただきます」
手を合わせ、弁当を広げる。繰言が何を食べているのか気になってチラリと横を見ると、ゼリー飲料が見えた。
「……ぁ、あのー、鳴雷くん?」
ちゅーっと一吸いの後、繰言は黒と白の髪の隙間から俺を見上げた。卑屈そうな薄笑いと上目遣いの組み合わせが胸にクる。同族嫌悪は消えていないのに、整った顔でそんな卑屈な態度を取られると手篭めにしたくなる。
「何です?」
せっかくセイカが会わせてくれたんだ、次の標的として狙ってもいいかもしれない。レイは上級者過ぎで、歌見はエンジョイ勢だから、本気同士でゲームのマルチプレイが出来る相手には飢えていた。好みの顔の男と友達でいるのは難しそうだし、落としてしまおう。
(陰キャオタクはちょっと優しくすれば惚れちゃうのは、わたくしで実証済みですしな)
中学生の頃、俺の初恋を奪ったセイカをチラリと見た。
「お、俺さ……早苗ちゃんに、お昼誘われたんだけど……さ、早苗ちゃんどこ?」
「セイカならあっちに居ますよ。あと、セイカに誘うよう言ったのは俺です。ゲーム機持ってきたんで、ちょっとやりましょ」
「マ、マジっ? やったっ、へへ……い、色違い捕まえたんだけど交換進化だからずっと置いてるヤツが居てさっ……そ、そいつの進化いい?」
「もちろん。対戦もやります?」
「……! や、やる!」
俺を惚れさせた前科のあるセイカに繰言を接触させるのは危険だ。他の彼氏ならいいという訳ではない、リュウもハルも笑顔で優しく繰言に接するだろう。陰キャオタクにその態度はダメだ。
(カンナたんは無口だからそもそも関われなさそうですし、シュカたまも今日は不機嫌ですから絡めなさそうなので、気にしておくべきはリュウどのとハルたそですな)
繰言が俺の彼氏達に惚れる前に、俺に惚れさせなければな。
「鳴雷ー……薬ちょうだい」
繰言とゲームの話で盛り上がってしまって食事を進めるのを忘れていた俺とは違い、セイカはもう食事を終えたようだ。
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
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「ありがと、鳴雷……時雨も」
カンナの影からセイカを覗き、彼が薬を飲むのを見守った。
「…………さ、早苗ちゃん、何飲んでるの?」
「……痛み止めとかです。切ってからまだ日が浅いので」
確かセイカは精神安定剤を飲んでいることを言及されるのが嫌いだったはずだ。適当に誤魔化し、箸を持ち直す。
「あ……そ、そうなんだ、切ってって、その、手足?」
「…………ええ、事故で」
「だ、だよね。あっ俺も病院で身体切ったことあるよっ、内臓、えっと、消化器官、胃とか腸……肝臓もだっけ。ちょっとずつないんだっ。あっだから何だって話ですよねすいません黙ります」
「な、何も言ってませんよ……黙らなくていいです、お話しましょう?」
「話すんですか!? 俺と!? へ、へへ、悪趣味……あっ、鳴雷くんホラーゲームはやる? こないだ出たホラーゲームなまら怖くて超面白かったし再生数も伸びたんだけどっ、一周目はネタバレなしで楽しんで欲しいタイプのゲームだったからやってないならまずやるか見るかしてから語りたいでござるって感じなんですけどはい」
内臓がちょっとずつない件についてもう少し聞きたかったのだが、勢い余って話してしまっただけで話したくないことなのかもしれないし、今は聞くのはやめておこう。
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