冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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簪何にする? (水月+ハル)

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赤い着物に、赤いメッシュ、下駄は鼻緒が赤い物を履くという。となると簪も赤色にした方がよさそうだ。

「ハルは赤が似合うし、赤いのにしようと思ってたけど……合いそうだな。つまみ細工には端切れを使うんだ。色ごとに分けてあるからどれにするか選ぼう」

俺は端切れを入れているダンボール箱から赤系の色の端切れの束を取り出した。

「……これ全部つまみ細工の材料なの?」

ハルがダンボールの中を覗いて感心したように呟いた。

「ゃ、小物とか縫ったりもするよ」

ぬいの服とか、どーるの服とか。オタクっぽい物ばかりのため詳細は伏せておこう。

「へ~……みっつんって手芸系男子だよね~。せーかのハムもみっつんが作ったんだっけ。ぁ、後さ、アレ、自由研究! 羊と狼のぬいぐるみ、アレもすごかったよね~。着ぐるみ脱げたりしててさ~……自由研究ってしばらく展示するじゃん? 休み時間にみんな見に行ったりしてるし、写真撮ってる子も居たの知ってた?」

「撮られてたのは初耳だな」

「そうなんだ~。ってか明日ザメさんの誕生日じゃん、プレゼントも手作り系で行くの?」

「あぁ……まだ悩んでるよ。誕生日パーティは今週の土曜だろ? ギリギリまで粘るつもり」

九月九日、つまり明日はネザメの誕生日だ。しかし彼は休日に俺と俺の彼氏達を全員集めてパーティを開くつもりらしく、俺達は当日は何もしないでいいらしい。

「前日にやるって言われなくて助かったよ、悩む時間は長い方がいいからな」

「え~? ふふふ……俺もう買ってあるもんね~」

「マジかよ、決断力あるなぁ。明日は休むんだっけ? 二人とも」

「当日は当日でパーティやるらしいね~。ってか、一昨日からパーティやってるんだっけ? 豪華客船で、付き合いのある富豪とかとどっかの海ウロウロしてるらしいね~。水曜か木曜にはどうにか帰ってくるって言ってたけど~」

相変わらず紅葉家はスケールが違うな。

「豪華客船ってそんな何日かだけ乗れるんだな、何ヶ月単位だと思ってたよ」

「あぁ、ザメさん達はヘリで行ってヘリで帰ってくるって言ってたよ」

「え、マジ? 俺聞いてない……」

「みっつんがしゅーとヤってる間に聞いた~」

「……なるほど」

そりゃ知らなくて当然だ。後で俺達にも話しておこう、って感じの内容でもないしな。

「華やかそうだけど、誕生日なのに挨拶回りとかで忙しいんだろうな。要するに将来の仕事仲間やライバルとの顔合わせだろ? いやぁ……美味い飯とか豪華な船内、綺麗な海くらいじゃあ……社交界の面倒臭そうさは体験したいとは思えないよな」

「分かる~。お金持ちは憧れるしなりたいけど~……あそこまでだと逆に生きにくそうって言うか~……中流がいいよねー、食べたい時に果物躊躇なく買えるくらいの財力でいいかな」

「はは、果物高いもんな」

「新作の服とかコスメ買えるくらいってのも絶対だし~、マニキュアとかも店でやりたいかな~……美容院代とか必要不可欠だし~」

「…………俺が想定してたよりは収入必要そうだな」

贅沢でワガママな可愛い恋人のため、彼に似合うアクセサリーを作るため、俺はいくつか案を出した。

「つまみ細工は基本花とかを作るんだ。モチーフはなくてもいいんだけど、やっぱあった方がいいよな。赤い花って言ったらやっぱり椿とか……でもアレ冬の花だからちょっと季節外れだよな。鶴にも冬感あるから統一感は出そうだけど」

「赤い花かぁ、薔薇も季節違うよね~……」

「あぁ、しかも和風感があんまりない。夏の終わりの和風全開赤い花と言えばやっぱり彼岸花だ、派手で特徴的だから簪にしても映えそうだろ?」

「うんうん、彼岸花好きだよ俺~」

「よかった。でもつまみ細工じゃキツいんだよな彼岸花は……あぁそうそう何も花だけじゃない、それこそ鶴だって作れるぞ? 夏のお祭りと言えば金魚! 赤くて可愛いお魚だ、金魚もいいと俺は思うぜ」

「金魚? え~、可愛いかも~! どうしよ~……」

「俺からはその二つかな。他に案があればそっち優先するよ、ハルが着ける物だしな」

「あ、それなら~」

何か案があるらしい。頷いて続きを促したが、ハルは何故か照れているらしくなかなか話そうとしない。

「ハル……? もしかして」

「……! バ、バレちゃった? ぅー……恥ずかしい」

「うん、まぁ……恥ずかしいだろうけど、ソレを御神体にしてる神社もあるし、担いで練り歩く祭りもあるし……子宝の象徴みたいなもんだから、そんなに恥ずかしがらなくてもいいと思うぞ」

「何の話!?」

「え? ちんちん……」

「そんなの頭からぶら下げたがる訳ないじゃん! もぉ! バカ! 俺はね……その、みっつんが…………みっつんが、作ってくれる物だから……なんか、みっつんっぽさ、雷とか月とか……そういう製作者匂わせ、欲しいなって……思って」

なんだ、そんなことか。

「なるほど。雷か月、ね。雷はともかく月は簡単そうだな。俺の水月って名前、クラゲって意味もあるらしいけどそっちはどうだ?」

「あ、クラゲ可愛いかも~。足のとこがぷらぷら揺れてって感じ~? うんうんいいね~」

「ハルっぽいのはなくていいのか?」

「ん~……俺、名前に物がなくてさ~……」

物。と言われてハルの名前を改めて考えてみる。霞染 初春……霞は目に見えないものだし、染は動詞? 初は概念だし、春は季節だ。

「…………春、から……桜とか? 花は多いよな、春」

「うん、綺麗なもの多いと思う……でも、全部春にある何かで……それ自体は春じゃないんだよね」

哲学的というか、文学的というか、難しい話だな。

「俺が着けるんだから俺っぽさはなくていいよ、本体居るんだからさ」

「そうか? それを言うなら俺は隣に居るだろうから俺っぽいのも要らないんじゃないのか?」

「乙女心が分かってないな~」

緩んだ笑顔を浮かべるハルは確かに一見美少女のようだ。しかしその肩幅、腰つき、よく見ればどれも女のそれではない。

「乙女心ねぇ」

「何その顔~」

「……男だろって言おうとしたけど俺に恋してる時点で割と乙女心は存在しているのでは? って思って……俺も割と乙女心が芽生える瞬間あるし、乙女心にちんちんの有無は関係ないのかもしれないって」

「軽く言っただけなんだからそんな考え込まないで~? ほら、考えるんだったら俺のこと考えて俺のこと」

じっと見つめてみるとハルは色んなポーズを取ってくれた。ポーズを取ればハルのことを考えやすくなると思っているのだろうか? それ自体が可愛らしくて、俺の頭はハルのことでいっぱいになった。
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