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ローターの音と微かな喘ぎ声

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ローターにローションを絡めて二人の後孔にゆっくりと挿入していく。

「あっ……ローターだぁ、ふふ……」

「なんか、硬いの来た……」

中指でローターを押し込んで前立腺の位置で止める。期待している様子のサンと、訳が分かっていない様子のヒトを見比べて楽しんでから、俺は二つのローターのスイッチを同時に入れた。

「んんっ! あっ、はぁっ……ぶるぶる好きっ、ねぇ水月ぃ、もっと強くしてよ」

「……っ!? 震えてるっ……これ、大人の玩具っ? こん、な……感じなんだ……」

反応は対照的だ。いつの間にやら玩具を使いこなせるようになっていたらしいサンは悦び、より強い振動をねだっているが、ヒトは振動する玩具を使われるのは初めてらしく困惑している。

「もっと強く? じゃあとりあえず弱から中に上げるね。ヒトさんはどうです? 焦れったくないですか?」

「ぁうぅっ……! くっ、ふぅう、気持ちぃい……」

「んっ……不満はっ、ないです……」

よかった、そんな適当な返事を呟きながら俺は二人の僅かな隙間に寝転がった。仰向けのヒトには腕枕を、四つん這いのサンには頭の下へ伸ばした手を曲げての頬への愛撫を与えた。

「水月の手~」

サンは嬉しそうにしながら四つん這いの体勢を崩して猫が伸びをするような姿勢となり、俺の手のひらに顔を乗せた。サンの頬の柔らかさに緩んだ顔をサンの手が撫で回す。

「水月の顔……ふふ、なぁに水月ぃ……嬉しそうっ、んん……ふっ、ぅ……ねぇ、ローター入れっぱで、ほっとくのっ……? これ、結構っ……きもち、いいんだけどっ」

「うん、しばらくは勝手に気持ちよくなっててくれる?」

「……っ、はぁ……水月が、そうして欲しいなら……いいけどっ、さぁ…………は、こんなの、すぐイきそ……」

太腿を擦り合わせ、腰を揺らし、ローターの快楽から逃れようとするサンとは違い、ヒトは酷く大人しい。俺が隣に寝転がって無理矢理腕枕をしても、ヒトはせいぜい俺の手や腕に頬擦りをするくらいで、話しかけてはこなかった。

(ぬぁああヒトさんわたくしの手のひらにちゅっちゅしておられるかわゆい~! ヒトさんのローターも振動強くしちゃお)

サンに握られている手を解放してもらい、リモコンを操作する。二つとも振動の強さを最大にまで上げてみる。

「んんっ……!? くっ、ぅ……んっ、水月ぃっ、これはちょっとぉっ、辛い、かも……はっ、ぁ……裏から無理矢理っ、ひ……起こされて、きもち、よくぅっ……!」

「ひっ……!? んっ……ぅ……!」

リモコンを離してサンの顔の傍に手を戻す。サンは俺の手首を掴み、手のひらに頬を乗せた。右目を隠す長い前髪が顔全体にまばらに垂れて顔がよく見えない、快感に耐える顔が見たい、前髪を耳にかけるかしてどかそうと手を伸ばす。

「……っ!? だ、めぇっ!」

サンの前髪に指先が触れるかどうかの瀬戸際、ヒトに腕を掴まれ前髪かき上げ作戦は阻止された。

「ヒ、ヒトさん?」

「はぁっ、腰、ふるえ、ちゃ……ぁ、んっ……水月ぃ? 兄貴……? 何っ、何してるの……?」

「……ヒトさん、どうしたんですか?」

快楽に耐えているヒトの息はとても荒い、ふぅふぅと噛み殺すように呼吸を重ね、吐き出す息に声を乗せた。

「だっ、め……です。サンの目、みぎは、だめっ……」

「…………どうしてですか?」

サンは普段、右目を隠している。目を隠そうが晒そうが盲目の彼の見る世界は変わらない、サン自身が選択したファッションでもない、ヒトの言いつけだ。何故右目を隠さなくてはならないのか、サンはよく分かっていない。

「見ちゃ、だめ……ですっ」

サンの右目は重度の外斜視だ。左目は正面を向いているけれど、右目は常に外側を向いているのだ。まぁ……外斜視を気味悪がる人間も少なくはない、ヒトが隠させる気持ちも分かる。

「……ヒトさんは弟達より自分を愛して欲しいって俺に思ってるんですよね。だったら……サンの外斜視、見ちゃった方がヒトさん的にはいいんじゃないですか? 俺が外斜視気持ち悪がったら兄弟ダービーはヒトさん有利になりますもんね」

快楽に耐えてか閉じていた瞳が見開かれる。

「え……し、知って……どうしてっ、サン! 見せるなってあんなに口酸っぱく! なんで見せたりしたんです!」

「え、何、何が?」

「お風呂入った時にたまたま見ちゃったんです、サンのせいじゃありません。俺が見れるタイミングずっと狙ってたってのもありますし……ねぇヒトさん、サンが俺に嫌われたらヒトさん的には美味しいはずなのに、嫌われる原因になり得ることを見ちゃダメって止めたのは……ヒトさん、どうしてですか?」

「えっボク水月に嫌われるの?」

「大好きだよ、たとえ話だから気にしないで」

「そぉ……? んっ……ねぇ、イきそうだからさぁっ、そろそろ止めてよこれぇ……腰溶けそう」

瞳を震わせているヒトの頭の下から手を抜き、その手で彼の髪を撫でる。

「……ヒトさん、優しいですね。俺に気持ち悪がられたらサンが傷付くと思って、守ろうとしたんですよね? ふふ……旅行の時もお鍋よそってあげたり、フタさんのなんてフタさんが火傷しないように冷めるまで遠ざけてましたもんね。結局、一気に食べて熱がっちゃってましたけど……ふふ」

「ち……違います! 火傷はしたら痛い痛いうるさいからで! 右目の件は……あなたがサンを嫌って私だけを見るのはそりゃ確かに美味しい流れですけど、サンがあなたや私を刺したりしたら元も子もないので……そ、そうです、サンは怒りの沸点が低い上に怒ったら確実に後遺症を残す怪我や命に届く怪我を負わせようとしてくるんです! だからっ!」

「だから? 自分は自分のことしか考えてない、意地悪なお兄ちゃんだって言いたいんですか?」

潤んだ目を俺から逸らそうとするヒト、そんな彼の頭を根気強く撫で続ける俺、自分は怒りっぽくないと喘ぎ混じりに主張するサン、ベッドの上は混沌としていた。
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