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休日を勝ち取った訳

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せっかくゲーム機を持ってきたのに繰言は学校に来なかったなと苛立ってしまったが、昨日のことをよくよく思い返せば「また明日」というセイカの挨拶に顔を上げもしなかったし、昨日時点から今日学校に来るつもりはなかったのかもしれない。

(その場合、原因は……)

ミフユ、だよな。繰言は自分を叱りつけるミフユに一切反論することなく蹲って彼が去るのを待っていた、アレが相当のストレスだったのではないか?

(ミフユさんはサボりとか言ってましたが、どう考えても陰キャ過ぎて登校拒否かましてる感じですよな)

登校中に大怪我をすれば学校に行かなくて済むのでは? とか俺も中学時代はよく考えていから分かる。繰言はただのサボりではない。

「そうだ、狭雲一年生、鳴雷一年生、貴様とは繰言二年生は話したんだったな。近頃ミフユとはあまり話してくれなくてな……メッセージアプリのアカウントを紹介するから、学校に誘うメッセージを送ってくれないか? 進級が危ういのだ、本当に……」

「連絡先交換してるんですか?」

「二年生一学期の始業式の際にクラスチャットを作ったんだ、その時には居なかったが後々教室に来た際に無理矢理参加させた、グループチャット内での発言は未だないがな。まぁ、だから、繰言二年生のアカウントの紹介は可能だ」

「おや、ミフユが名指しで返事を求めた時、一度だけ返事をしていなかったかい?」

「……そういえば。よく覚えていらっしゃいますね、ネザメ様」

小さくて可愛いし料理が上手いし抱くといい反応をするし、ミフユは恋人としては素晴らしいのだが、もし俺が繰言の立場だったらとんっでもなく苦手な相手だろうな。

「では、繰言二年生のアカウントの紹介を貴様らに送るぞ」

「……待ってください。先輩に俺の紹介を送った方がいいんじゃないですか? 向こうからグイグイ来られるの、苦手なタイプだと思うんですよ。彼」

「積極的に来られなければ会話が出来ないタイプだとミフユは考えているが」

「いや、ミフユさんに紹介されてメッセージ送ってきたら、なんかもうミフユさんの手先って感じで……何話しても留年するなが結論だろってことになって、まともに話聞いてくれなくなりそうじゃないですか」

「……そう、か? むぅ……よく分からんが、その方がいいと鳴雷一年生が言うのなら……繰言の方に貴様らのアカウントを紹介しよう」

「俺だけでいいですよ。彼氏が他の男とメッセのやり取りなんて、嫌ですから」

隣に居るセイカの肩を抱き、彼の頭に頭をコツンとぶつけてみた。




昼食と、シュカとの軽めのセックスを終え、昼休み終了のチャイムの直前に教室へ戻る。

「歴史か~……苦手」

「みぃ、くん、ぜんぶ……そ、言って……る」

「勉強全般嫌いだからなぁ」

「ぃ、しょに……しんきゅ、して、ね?」

「はは……流石に留年はしないよ、多分」

六時間目の理科の前にも似たような会話をし、今日の学校は終了。今日はバイトもなし、シュカと半日足らずのデートが楽しめるという訳だ。

「今日とりりんとデートやねんやったっけ、珍しいなぁとりりんがデート要求するやなんて」

「……別に、デートなんかするつもりありませんよ」

「えっないの」

「ほな何や、晩までぶっ通しセックスか? そっちのがとりりんぽいなぁ。それでも羨ましいんは変わらんけど」

「ふん……それでは、水月。準備が出来たら私の家に来てくださいね」

そう言い残してシュカは電車を降りていった。やっぱりデートじゃなくてセックスが目的なのかな? まぁ、どっちでも同じくらい俺は楽しめるけれど、なんて考えつつ車椅子を押して自宅への道を早足で行く。

「……なぁ、鳴雷」

「ん~? 早かったか? ごめんな」

「あ、いや…………俺、さぁ……ご、ごめん、やっぱり何でもない……行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃいってセイカ、まだ家に着いてもないのに」

「ぁ……そ、そうだよな、ごめん」

なんて会話をしているうちに家に着いた。数分早かった「行ってらっしゃい」の言葉をまたもらったけれど、俺は着替えと出かける準備のために玄関扉ではなく自室への扉をくぐった。

(シュカたま一切わたくしの服気にしないタイプなんですよな、一応ママ上にも相談して服は決めておきましたが)

昨晩予め選んでおいた服に着替えて、ローションやゴムを入れた鞄を持ち、残電数の確認のためスマホを持った。

「56%か、微妙……ん?」

シュカからメッセージが入っている。送信時間を見るに、電車で俺と別れてすぐに送ってきたもののようだ。内容は「セックスに必要なものは何も持ってこなくていいです」というもの。

「…………どういうことだ?」

セックスなしの純粋なデート? 家の片付けを手伝って欲しいだけとか? それともシュカが用意するからということなのか?

「まぁ、行けば分かるか」

スマホとモバイルバッテリーだけをポケットに突っ込み、手ぶらで家を出た。デートなのかセックスなのかというドキドキもあれば、今度はどんな四文字熟語が書かれたシャツを着ているのだろうなんてワクワクの仕方もあった。

「……水月、こっちですよ!」

シュカの家が見えてくる頃、彼が手を振っているのが見えた。家の前で待っててくれていたらしい。

「シュカ! ごめんな待たせて」

「そんなに待っていませんよ」

上機嫌そうなシュカの服装を爪先から順に舐め回すように見ていく。まずはいつものスニーカー、そして爽やかな色のデニム、白地に黒で「両輪駆動」と書かれたシャツ、季節外れの黒い革ジャン。

「シュカ……! どうしたんだそんな神室町の元弁護士の探偵みたいな格好して! カッコいいけど暑くないのか?」

「意外と革って暑くないんですよ」

「そうなのか。って革の知識がないからって騙されると思うなよ。汗ダッラダラじゃないか」

シュカは大きく舌打ちをして塀にもたれ、俺と今日したいことについて話し始めてくれた。
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