冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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君色のプレゼント

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白と赤の糸で作られたミサンガ。菊結びで手首を飾るものだと、アキの右手首に巻くことで教えてやった。

「普通そういうのって利き手じゃない方に巻かないか?」

「アキは左利きですよ」

「……あっ、そうだったな。忘れてた」

ほどけないようにしっかりと結ぶとアキはそれを興味深そうに眺め、笑った。

《綺麗じゃん。スェカーチカのプレゼント……で、いいんだよな? 気に入った、ありがとな》

《……気、遣わなくていい》

《気ぃ遣ってるように見えるか?》

セイカはゆっくりと顔を上げ、アキを見つめて首を横に振り、彼の方からアキに抱きついて泣き出した。

《どうしたんだよスェカーチカ、何が悲しいんだ?》

《嬉しい……》

《嬉しいのか、そっか、嬉しくても泣くのかスェカーチカは。紛らわしいなぁ。何が嬉しいんだ? 今嬉しいのはプレゼントもらった俺の方だろ?》

《それ、俺が……糸編んで、作って……でもっ、あんまり上手く作れなくて、だから、渡したくなくて、なのに喜んでくれて、不安だったのなくなって、嬉しくて》

しゃくり上げながら何か話している。アキとの会話だろうし、俺が聞いても仕方ないのかもしれないけれど、俺もセイカの気持ちが聞きたい。

《ごめん……泣いて。もう、大丈夫……悲しいとか、痛いとかじゃないから。気にしないで……えっと、紅葉からの、まだだよな。受け取ってこいよ、下ろしてくれ》

《おう、じゃあまた後でなスェカーチカ》

アキはセイカを隣の椅子に座らせて頭をくしゃくしゃと撫でた。幼子にするような仕草だが、セイカは嬉しかったようでアキが離れた後アキの手を再現するように自分で自分の頭をそっと撫でた。

(ンッガワイイ)

奇声を上げそうになって慌てて堪え、次にプレゼントを渡すネザメに視線を移した。

「次は僕だね。どうぞ、秋風くん」

ネザメからのプレゼントは意外にも小さい。デカくて高い物を贈るかと思っていた。

「ありがとー、です。もみじ」

包装紙を破いて箱を開けるとキラキラと光が漏れた。アキは素早くサングラスをかけ、箱の中でクッションに寝かされているそれを持ち上げた。

「ネックレスだよ、君の瞳と同じ色」

 「本当だ、アキの目の色にそっくり」

主役は親指の爪ほどの大きさの赤い石だろうけど、輝き自体は赤い石を縁取るように飾られた透明の石の方が強い。キラキラと光を反射している。

「何の石~? ただのガラスじゃこんなキラキラ出せないよね~」

「ルビーとダイヤモンドだよ、ダイヤの方は小さいけれど」

「…………は?」

「どうしたんだい、水月くん」

「どうしたんだい、じゃないですよ! ダイヤ? ダイヤ!? ダイヤってあのダイヤ!?」

「ダイヤモンドだよ」

「化学式はC、モース硬度は十、劈開は完全、四方向の……あのダイヤモンド!?」

「詳しいねぇ、へきかい? と硬度については僕も知らなかったよ」

ネザメは穏やかに笑っているが、俺の心中は決して穏やかではない。ネザメは大富豪の御曹司で俺へのプレゼントも歌見へのプレゼントも高級品ばかりだったし、今は別荘を使わせてくれている。

「い、いや……そんな、本物の宝石を使ったネックレスなんてっ、受け取れませんよ!」

「君への物ではないけれど……」

「受け取らせられませんよ!」

「どうしてだい? 以前君にネックレスを贈った時は受け取ってくれたじゃないか、今も着けてくれているよね」

ネザメからのネックレスとハルからのバングルは誕生日以降時折使っている。潮風には晒したくないからここでは室内でだけ着けている。今もそう、俺の胸元にはネザメの名が掘られたオシャレなシルバーアクセサリーが輝いている。

「俺のはシルバーですけど、宝石は……高過ぎますよ、高校生が贈っていいものじゃない……」

「値段自体は貴様のネックレスの方が高いぞ?」

「……えっ?」
 
ルビーやダイヤを扱ったアクセサリーよりも高い物を首からぶら下げておいていいのだろうか。怖くなってきた。

「そのルビーはネザメ様が持っていた物を少し削った物だからな、石代を押さえられた」

「子供の頃宝石集めに夢中になったんだけれど、もうあまり興味がなくてね……ちょうどいい色の物があったから、一から探すより早いかと使ったよ」

「職人にも知り合いが居る、様々な中抜きがなかったのだ。貴様が思っているほどの値段ではないぞ」

宝石やアクセサリーの値段なんて全く知らないから何の想像も出来ていない。

「……あ、あのさ、紅葉……言いにくいんだけど」

「何だい?」

「秋風……これ、目がチカチカするから嫌だって」

「…………えっ?」

「ダイヤがキラキラして眩しいからサングラスかけてるから、ルビーが赤いのかどうかもよく分かんないって」

「そ、そう……かい」

光に弱いアキはダイヤモンドなどの強く光を反射する宝石を嫌う。少し考えれば分かる、とはネザメの名誉のため言わないでおこう。

「まぁ着けてたら気にならなさそうだからいいって。ありがとうって言ってる」

「そうかい? 石を変えることも出来るよ? 今度一緒に選びに行こうか」

「…………別にいいって」

あんまり興味ないのかな。まぁ、どう考えても宝石に興味がある性格してないもんな。

「そうかい……」

「一番お金かかってるのに一番反応鈍かったね」

「サン!?」

「いいんだ、水月くん。僕は秋風くんの好意を金で買おうとしたんだ、秋風くんの好む物や秋風くんの体質を考えずに……秋風くんの反応が鈍いのも当然だよ」

反応が鈍いと言ってもアキはネックレスを身に付けている。気に入らなかった訳ではないのだろう。

「秋風くんっ? どうしたんだい?」

アキは突然服を脱ぐと「天下無類」と書かれたシャツを着た。

《どうだスェカーチカ、似合うか?》

《そのシャツとネックレス絶望的に合わねぇな》

「一つだけSRが出た無課金ユーザーじゃないすか」

「顔面はSSR」

「お前もな」

サウナハットを被り、手袋をはめる。ますます奇妙な出で立ちだ。

《一気に着けるもんじゃないって……》

《分かってる分かってる》

身に付けられる誕生日プレゼントを全て身につけている。嬉しさの表れだろうか。パーティ会場を見ただけで泣くほど喜んでいたのだ、祝われる幸せを堪能しているのだろう。気遣いのない素直な反応にハラハラさせられたけれど、アキの誕生日なのだから一番大切なのはアキが楽しむことだ。それが達成出来ているのだから何も言うべきことはない。
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