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思い付きの焦らしプレイ

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ネザメと改めて夜に会う約束を取り付けた。行為に及ぶところまで行けるとは思っていないけれど、せめてネザメに自分が受けなのだと納得してもらうところまでは行きたいな。

「それじゃあ今晩、僕の部屋に来ておくれ」

「はい。たくさんお話しましょうね」

「……僕はきっとまた、緊張して何も話せなくなってしまうよ。つまらない時間を過ごさせてしまうかもしれない」

出会ったばかりの頃のネザメはもっと積極的に俺にスキンシップを取り、饒舌に俺の美しさを褒め称えていた。けれど今の彼はもう、俺とまともに目を合わせて会話するのも難しいようだ。俺の内面にも惚れたからだと以前語ってくれたけれど、俺に惚れるような中身があっただろうか。

「大好きな恋人と過ごすのにつまらない訳ないじゃないですか」

「……そう、かい? そう……そうなら、嬉しいな。ひ、ひとまず……今は、離れてもいいかな。もう限界で……少し、休ませて」

「あっ……はい。それじゃあまた……夜に」

すっかり疲弊した様子のネザメはシャチ型フロートに抱きつき、ミフユがフロートを引っ張って俺から彼を離した。一人になってしまった、さて誰に絡もうか。

「水月ぃ~、一人ぃ~?」

ザブザブと波をかき分けてリュウが寄ってきた、ちょうどいい。

「わ……! み、水月ぃ?」

ニコニコと人懐っこい笑顔のリュウを抱き締めてやると、その笑顔は照れたものへと変わる。次第に口角が元の位置へと戻り、何を言う訳でもないのに口が開き、瞳が潤み、とろんと蕩けた雌の顔が完成する。

「水月ぃ……」

「リュウ、ポリネシアンセックスしようか」

「……何て?」

「もどきになっちゃうけど」

「何しよ言うた? すまん、聞き取られへんかった」

俺はもう一度落ち着いてポリネシアンセックスと発音したが、どうやらリュウには聞き覚えのない言葉らしく首を傾げていた。

「何日もかけるスローセックスの一種だよ、一日目は見つめ合うだけとか裸見合うとか……二日目は抱き合うとか、三日目は愛撫し合うとか……但し性器以外とかだったかな、俺もちゃんと調べたの結構昔だから詳しくは分からないんだけどさ」

「ほぉん……? けったいなヤり方あるんやのぉ。ほいで?」

「今日もうキスとか胸触ったりとかしちゃったし、セックス本番も多分明日か明後日くらいになるだろうし、俺は他の子とヤるだろうから、本物じゃなくてポリネシアンモドキなんだけど、ヤってみないか?」

「えー……」

「焦らしプレイとか放置プレイは好きだろ?」

「あー……そう考えたら、結構ええかも」

頬を赤く染めて淫猥に笑うリュウの表情を見下げていると、それだけで我慢出来なくなってしまいそうだ。俺は咄嗟に目を逸らし、会話を続けた。

「自分でするなよ、俺の他の彼氏と抜きっことかもナシな」

「ほーい……抜きっこなんか水月に言われた時くらいしかせぇへんよ」

「そうなのか? アキよくやってるから……」

「あぁ、アキくんはよぉ絡んできやるなぁ。何回か抜いたったわ、水月のんとええ勝負できるええもん持っとってなぁアキくん……そういや旅行中一回も俺んとこには来てへんなぁ、水月ともシてへんねんやろ? 他の子ぉとしとるんやろか」

「同室だしセイカだろうけど……アキが俺のんナシで何日も過ごしてるってそう考えると異常だな。いつも寝てる間とかに乗っかってくるんだぞあの子」

リュウは「なんちゅう兄弟や」と呆れ顔で笑う。

「……まぁ、今はアキはいいよ。リュウ、明日か明後日か、俺が抱くまでイくの禁止な。俺はちょくちょくこうして色んなとこ撫でるだろうけど──」

言いながらリュウの頬や脇腹を撫で回す。

「──ムラムラしてオナニーしたり、こんなちょっと触っただけでイったりすんなよ?」

「ん……いけずぅ」

「それがイイんだろ? この変態」

「うん……」

リュウはうっとりとした表情で頬を撫でる俺の手に手を重ね、俺に惚れきった目に俺だけを映した。

「水月ぃ……好きぃ、好きやで、待っとる。ちゃあんと俺んとこ来てくれるんやったら、俺いつまででも待てんで。水月……ちゃんと、来てなぁ」

いつも以上にゆったりとした、相変わらず彼以外から聞くことのない独特なイントネーションの言葉。普段なら愛らしさを補強するだけの方言が、今はゾクゾクと俺の身体を興奮で震わせる。

(はぁ~ん何今のぉ! なんか、なんかっ……約束破ったら祟り殺すタイプのヤンデレ感ありましたぞ! どうしてでしょう、リュウどのヤンデレからは一番遠い存在ですのに。ゆっくりじっくり話す感じがヤンデレ感を出しているのでしょうか!)

心でははしゃぎ、外面は「もちろん、しっかり待ってろよ」とカッコつけた笑顔を貼り付ける。

「今は遊ぼうか」

そう言いつつ、笑顔で頷いたリュウの乳首を下側から指でカリッと引っ掻く。俺が育てた男にしては大きな乳首はぷるんっと揺れ、震え、俺を興奮させる。

「ひあっ……! 水月ぃっ? 何すんのぉ」

「行っただろ、俺はちょくちょく手ぇ出すって。じゃなきゃただ一日二日ヤらないだけで、大した焦らしプレイにならないもんな」

「せやけどぉ……」

波から乳首を庇うように腕で胸を隠すリュウを置いて、他の彼氏達の元へと向かう。

「ぁ、待ってぇな」

予想通りリュウは着いてきた。可愛いヤツだ。

「サン、水月が来たぞ」

「ほんと? どこ?」

まずは最寄りのサンを見守っている歌見の元へと向かった。普段は足音や布擦れの音で他人の位置を察知するサンだが、波のある海ではそうはいかない。余程水飛沫を立てて動けば話は別だろうけど。

「ここだよ、サン」

「水月……あ、居た。水月? 水月だね。ふふ」

呼びかけるとサンは両手をふらふらと漂わせ、俺の肩に触れ、顔に触れ、髪を撫で、抱き寄せた。

「ん……目の周りは触らないでね、海水痛いよ」

「あぁそっか、気を付けるよ」

「……口でならいいかも?」

「口? こうかな?」

サンの唇が閉じた瞼に触れる。続いて大きな舌が瞼越しに眼球の弾力を楽しむようにうねり、最後にまつ毛をちゅっとしゃぶって、口を離した。

「そうそう、どう? 楽しい?」

「結構……もう片っぽも」

もう片方の目も口で愛撫される俺をリュウと歌見が不思議そうな顔で見つめている。

「……? リュウ? 先輩? 何その顔」

「いやぁ、水月が自分よりちっこいもんちゅっちゅしとるんよぉ見るけど、自分よりデカいもんにちゅっちゅされとるんは新鮮やなぁ思て」

「右に同じ」

なるほど、と俺を愛でるサンを見上げる。目への愛撫を終え、後頭部を支え頬をぷにぷにと弄んでいるサンは穏やかな笑顔を浮かべている。俺も他の彼氏達を愛でている時こんな顔をしているのだろうか。
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