冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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自分で洗わなくても大丈夫

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おそらく自分の足で歩けるだろうレイにお姫様抱っこをしてやり、サンには肩に掴まってもらい、彼らを浴場へ連れて行った。寝室にまだ残っているのは寝ぼけ眼なカンナとそんな彼を起こそうと頑張っているハルだけだ。

「ただいま、カンナ起きたか?」

「あ、みっつん……うんっ、しぐしぐ起きたよ。ねっ」

タオルケットを頭から被ったカンナは俺の方を向いてはいるが、その顔の上半分は前髪で厳重に隠されているため目が開いているのか閉じているのか起きているのか眠っているのかはよく分からない。

「起きてるのか? カンナ」

「みぃくん……? みんな、居な……」

「みんなはお風呂だよ、カンナも行こう。歩けるか? 無理そうなら俺が運ぶよ」

「……ぉ、ふろ……みん、なと?」

「あぁ、ここのお風呂めちゃくちゃ広いんだ。みんなで入れるよ」

「…………ゃ、だっ」

カンナは首を横に振り、震える肩を止めるように二の腕を強く掴んで自分自身を抱き締めた。

「ぼく……ぉ、ふろ……とりで、入……」

「……その服着たままでもいいよ。汚れてるからどうせ洗濯機に入れる前に洗うだろ?」

「ぅん……でも」

「脱いで、外して、ちゃんとお風呂に入るのは後で一人ででも構わないよ。でも下ちょっと流してみんなでお風呂浸かるくらいはしよう? せっかくだしさ」

「……ぅん、それくらい……なら」

俺は心の中でガッツポーズを決め、カンナの手を引いて立ち上がらせた。ハルとも手を繋ぎ、両手に花の状態で浴場へ戻った。

「タオルケットも被っとくか?」

カンナは小さく頭を横に振ってタオルケットを洗濯機の前のカゴに入れた。浴場に入る前に脱衣所の鏡で火傷跡が見えていないかしっかりと確認し、俺の後に続いた。

「せんぱい、おかえりなさいっす。お背中お流しするっすよ」

「あっズル、みっつんそれ俺もやる!」

「……! ぼく、もっ」

泡まみれのボディウォッシュタオルを持ったレイが小走りでやってきた。やっぱり自力で歩けたんじゃないか。ハルとカンナはそのタオルの両端を掴み、誰を選ぶのかと視線で訴えかけてくる。

「えっと……じゃあレイ、背中頼もうかな」

「え~!」

「ハルとカンナには腕頼むよ」

「ちょっと表面積少ないけど~……ま、いいや。発案者このめんだし、多少の役得は当然だよね~」

「……でも、このくん……昼、も……み、くん……と、入っ……」

「そういやそうじゃん。あっねぇみっつん、肩甲骨は腕に入る? 背中?」

くだらない争いが止まらない。ニヤニヤと笑いながらいつまでも眺めていたくなるが、悪化してはいけないので程々で諌めなければならない。全くハーレム主は大変だぜ!

「……ん、んん……ん? なんやここ……白い」

「やっと起きましたか、そろそろ足が痺れましたよ」

シュカに膝枕を頼んでいたリュウが目を覚ましたようだ。動けないながらに頭を洗っていたシュカは呆れたようにため息をついて足を伸ばした。

「風呂……? おぉとりりん、枕しとってくれたん、おおきに」

「その呼び方やめてください。水月に押し付けられただけですよ、さっさと身体洗いなさい」

「……腰痛い。あと……穴ん中ジンジンする」

「ヤり過ぎですよ、海水浴が控えているというのに」

クールな優等生ぶっている元ヤンが海水浴を楽しみにしてるとか可愛いにも程があるだろ少しは控えろ、俺の心臓への負担を考慮しろ。

「どうっすかせんぱい、お背中痒いとこないっすか」

「今のとこないかな。気持ちいいよ」

「みっつ~ん、右腕はどぉ~?」

「最高の気分だよ」

「みぃ、くん……ひだ、ぅで……は?」

「すごくイイよ」

美少年三人に身体を洗わせて、俺は何もせず他の美少年を眺めて楽しむ……この世の王か? 俺は。

「いいご身分だな、水月」

「先輩。でゅふふ……羨ましいですか?」

「キモオタ漏れてるぞ。別に羨ましくはない」

「歌見先輩もせんぱい洗いたいんすか?」

「いやそっちも別に羨ましくない。シャワー使いに来ただけだ、三つもあってもこれだけ居るとちょっと足りないものなんだな」

単に話し相手が欲しかっただけのようだ。目の前に来てくれたのは俺としても助かる。歌見は全裸になってこそ日焼けした褐色の腕や顔と、白いままの胸元や下半身の差がよく分かって唆るのだ。

(胸の谷間や腹筋の溝を伝う水滴になりたいでそ)

綺麗に染められた銀色の髪が水を含んで垂れているのもイイ、普段は髪まで元気そうにしているからな。もちろん歌見が髪をかき上げて水を飛ばし、また元気にツンと立つのもイイ。

「……あんまりジロジロ見るな」

元々ノンケらしく無防備な人だったのに、すっかり胸元を隠す仕草が身に付いてしまったのも、イイ。

「せんぱい、お背中洗えたっす。お湯かけるっすよ。歌見先輩シャワー取ってくださいっす」

「腕ももういいかな~」

「こ……ちも、終わ……た」

三人の美少年に身体を洗ってもらえる夢のような時間は終わりのようだ。

「……よしっ。じゃ、俺自分洗うっす」

「俺も~」

「ぼ、くも」

三人はほぼ同時に自分の頭や身体を洗い始めたが、今のところ洗えるのが下半身だけのカンナはすぐに終わってしまったようで、暇そうに俺を見上げた。

「な、鳴雷一年生っ。頭は……まだだよな? よければ、ミフユが洗ってやらんこともないぞっ」

「いいんですか? ぜひお願いします」

「……うむ! 任せろ!」

ネザメの頭を洗い終えたミフユが俺の元へ来てくれた。彼氏がいっぱい居ると自分で自分を洗わなくてもいいんだなぁ……

「退屈そうだな、時雨一年生。頭や上半身は皆が上がった後にでも洗うつもりか?」

「ぅ、ん……」

「そうか。では今は……サン殿を手伝ってはどうだ? 見るからに大変そうだ」

あの黒い塊サンだったのか。

「そうだな。カンナ、嫌じゃなければサンさんの髪洗うの手伝ってあげたらどうだ?」

「ぇ……ぁ、う…………で、も」

「言い出しにくいか? 俺が言ってあげるよ、それならどうだ?」

カンナが小さく頷いたので、俺は浴場の隅の黒い塊に向かって声をかけた。こちらを振り向いたようだが濡れた髪が顔にまで張り付いていて肌色が見えない。

「サン、カンナが暇だから髪洗うの手伝ってあげようかって。どう?」

「カンナちゃん? 本当? ありがたいよ、どこに居るの?」

その台詞も今の絵面だと髪のせいで前が見えていないだけのように聞こえてしまう。

「今から行く。カンナ、行っておいで」

カンナはこくりと頷き、俺の耳元で「ありがとう」と囁くと小走りでサンの元へ向かった。

「ゆっくり行けよ、危ないぞ」

そう声をかけると振り向いてまた頷いた。可愛い。

「さん……髪、洗うの……ぼく、手伝う」

「ありがと。どう手伝ってもらおうかなぁ、頭皮側か毛先側、右側か左側、前側か後ろ側……どの分け方が洗いやすいかな」

「ぇ……と、えっと……」

スキンシップの多いサンと、触られたくない場所が多いカンナの相性は悪いと思っていたが、サンはちゃんと理解し配慮してくれているからそんなことはなかった。俺が好きになるような子達なのだから、みんないい子なのだから、相性が悪いなんてことはきっとない。みんな仲良くなれる。セイカだって、きっといつかは。
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