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みんなで浸かって

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ミフユに髪を洗ってもらっている間、レイ達に洗ってもらえなかった身体の前側や足を洗った。ミフユが髪を洗い終えたら立ち上がって腰周りを洗った。

「鳴雷一年生、洗い終わったなら湯船に来い」

彼氏達のうち何人かは一足先に湯船に浸かっている。俺は当然誘いに乗って湯船に入り、温かい湯の中で手足を伸ばす新鮮な感覚を堪能した。

「はぁ……広いお風呂っていいですね」

「そうかい?」

「ネザメさんは狭いお風呂入ったことないからお分かりにならないでしょうけど」

「そんなことないよ」

「手足伸ばせなかったことあります?」

「……ないねぇ」

やっぱりか金持ちめと僻むと、すかさず「お前の家にはプールがあるだろ」と歌見に頭を小突かれる。

「プールはほら、お風呂と違って温かくないから光熱費とかがアレなんですよ」

「僕の家にもプールはあるけれど、屋外だからねぇ。残念ながら秋風くんには入ってもらえないかな……今秋風くんが居ないのも残念だね、一緒にお風呂に入りたかったのに」

「おまたせ~」

アキの不在を残念がるネザメにかける言葉を探していると、長い髪を洗うのに時間がかかっていたハルがようやく湯船に入ってきた。

「みっつんの隣~、えへへっ」

右隣のレイはどかなかったが、歌見はハルに俺の隣を明け渡した。ぴったりと俺の隣に座ったハルは俺の腕を抱き締めて足でも挟んだ。

(ふっ、太腿! 太腿で挟まれてまそっ! ふにっふにの二の腕とぺったんこの胸もぎゅっと押し付けられててっ……! ひぇえ……勃つ、勃っちゃいまそ! ぉわっ!? 足では挟んでいなかったはずのレイどのまで……!)

対抗意識を燃やしたのかレイもハルにならって俺の腕に両手両足で抱きついた。

(ひょええ! ハルどのよりもムチッとした太腿でぎゅっと……! っつーか、手の甲がてぃんてぃんに当たってますが!? んぁああたまらんこのぷにぷにてぃんてぃんの感触っ、揉みたい……!)

押し当てられたのが手の甲側でよかった、手のひら側だったら絶対に揉んでいた。

「霞染さん、髪……」

会話に参加して悶々とした気持ちを誤魔化そうとシュカの声に意識を無理矢理集中させる。

「ん?」

「どこにやったんですか?」

ハルはタオルを頭に被っており、長い髪は全てその中に収納されているようだ。タオルにギリギリ包まれていないうなじが何ともセクシーで……やばい勃っちゃう勃っちゃう。

「どこやったって、タオルん中だよ~。たまに面白いよね~しゅーって」

「姉さん被りっちゅうんやで」

「姉さん被りはちょっと違くない? アレ手ぬぐいだし」

「俺のおかんはそれや言うとった」

「えぇ~……?」

短髪の俺はまずやらないし、アキやセイカもそう。母もショートヘアで……義母はまとめる必要がありそうな髪の長さだけれど、彼女の入浴中の姿なんて見ないし、おそらく俺はハルでしかこの姿を見ることが出来ない。

「浸かる時だけか? 激レアだな。可愛いよ、雰囲気違う。うなじ見えてセクシーだし」

「えぇ~? もぉ~、えへへっ」

照れながらも素直に喜んでくれたハルは俺の腕をより強く抱き締めた。足の挟む力も太腿の骨の気配を感じるほど強くなった。ハルの太腿の細さが分かる、勃ちそう……円周率、ダメだ二番目の5までしか分からない。素数……13以降なかなか出てこない。クソっ、頭が悪過ぎて気を紛らわすことすら出来ない!

「なんて言うか……ちょっと緊張するんだよな」

「ナナさんが? 何に~?」

「お前にだよ。女子っぽいから一緒にこうして裸で風呂入ってると、なんか……こう、ヤバいことしてる気分になってくる」

分かる。大いに分かる。プールの授業で上半身裸のハルを見た時は本当にヤバいと思ってしまった。ハルは男だと頭では分かっているのに……咄嗟の性別の判断って髪型によるものが大きいんだな。

「え~、何それぇ、ナナさんだけだよ~。ねぇみんなぁ」

「せやな、そろそろ慣れたわ」

「僕は水月くんに対してなら緊張してしまうね」

「童貞」

「髪が長いのは女性、という固定観念が強いからそうなるのではないか?」

ハルの女の子っぽさに悪い意味でドキッとするのは少数派の意見なのか、黙っててよかった。

「そ、そうか…………待て誰だ今童貞って言ったヤツ!」

「……女性と一緒に入っている気分になって緊張してしまうのは童貞の証では?」

「霞染が女に見えるとかは一旦置いておいて、女と一緒に風呂は緊張するだろ男として!」

「童貞じゃないですか」

「お前はしないのか!?」

「しませんよ、童貞じゃありませんから」

「俺だって童貞じゃないんだが!?」

ひっどい会話だなぁ。

「え~、違うの? さっすがぁ、おっとなぁ」

「俺は童貞っすよ。せんぱい一筋っすからこのまま魔法使い一直線っす」

「僕はミフユとシたから違うよね」

「そ、そうですね……ネザメ様、あまりこのような話には参加しない方がよろしいかと」

この中で童貞ではないのは俺とシュカとネザメと歌見だけか。

「……あっ、そっか……水月の彼氏集まってるんだったな、そもそも高校ばっかだしそりゃ童貞ばっかりか……いや俺は違うけどな!? ん……おい、お前なんで童貞じゃないんだ高校生のゲイのくせに」

「私はタチも出来ますからね。あんまり好きじゃないってだけで」

「あぁそう……」

「歌見さんはいつ童貞喪失したんですか? 私は中一ですけど」

「……いつでもいいだろ」

「やっぱりまだなんですね」

「ちゃんとヤったわ! えっとアレは確か……」

「女の話やめて先輩……心が死ぬ」

「えっあっ、ごめん。今は水月一筋だからなっ?」

レイに元カレの話をされるのも辛いが、歌見の元カノの話もかなり嫌だ。元カノの方が嫌かもしれない、なんでだろう。恋のライバルとしては女性の方が強いと感じてしまっているのだろうか。

「ボクも女の子としたことあるよ水月ぃ」

ぺた、と大きな手が顔に触れる。サンだ、ようやく髪を洗い終えたらしい。サン自身は無頓着な長過ぎる髪が床につかないように腕に巻いて持ってあげているカンナは疲れた顔をしている。

「死ぬ……」

「あははっ、可愛い~。でもなっかなか勃たなかったよ?」

「瀕死……」

「水月とならキスでもうビンビン」

「重傷……」

サンは楽しそうに笑いながら俺の頭を掴んで無理矢理振り向かせ、唇を重ねた。

「……無傷っ!」

「完治した? ふふ、ホント可愛い」

サンは立ち上がることなく膝立ちのまま浴槽の縁を跨ぎ、湯船へと入った。カンナも続いてサンの隣に座ったが、髪が湯に浸からないよう持ち上げている。健気な子だ。
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