冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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今更の手当て

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道の駅の店舗の入口前に居たハルと腕を組み、店内に入る。

「ハルは店に入りもせずに何してたんだ?」

「みっつん待ってたの~。にしてもさぁみっつん、ほっぺた酷いね~……カミアの配信で見た時はマスクつけてたからさ~、分かんなくてさ~……ってか目元にアザなんかなかったよねあの時」

「文明の利器ファンデ」

「あ~……もぉ~…………はぁっ、せっかくのイケメンがぁ~……」

「こういうとこのソフトクリームって美味しかったりするよな、後で買おうか」

「傷気にしてない感じ~? も~……ま、ソフトクリームはぁ~、いいね! 俺今ダイエットしてないから付き合っちゃ~う」

お土産などが並ぶ店内を歩いていく。涼しげなシャツに短パン、ニーハイソックスを身に付けているハルは少女に見えているだろうし、美男美女カップルとでも思われているのか視線を感じる。俺の顔が酷い有様なのも目を引く一因、いや、理由の一位?

「あっ、サンちゃ~ん! ザメさんとフユさんも居るじゃ~ん。みっつん見つけたよ~」

ケーキ屋のショーウィンドウを見ていた彼らは俺達の方を振り向いて手を振った。ネザメは小走りで、ミフユはそんなネザメを注意しながらサンに肩を掴ませて彼を誘導しながらやってきた。

「水月くん! あぁ……あぁ! 話には聞いていたけれど、本当にこんなっ……酷いアザと腫れだ。君を傷付けるなんて世界遺産を爆破するが如き所業だよ、なんて悪辣で愚かな…………病院には行ったかい?」

「いえ、大したことないですし」

「あるよ! もぉっ……ミフユ! 着いてきている者の中で専門的な手当てが出来るのは?」

「自分の従叔父です。すぐに連絡致します」

すぐにネザメ達が乗っていた車の運転手がやってきて俺をベンチへと連れ出し、救急箱を用いて俺の傷の手当てをしてくれた。何日も経っているのにと思いつつ、湿布の心地良さにホッと息をついた。

「跡は残らないね?」

「はい、ネザメ様。その心配はないかと」

道具を救急箱の中に収めていた背の低い男性はわざわざ手を止めてネザメ方を向き、返事をした。

「よかったぁ……早く治してね、水月くん。僕はそんな痛々しい君を見ていると心が辛いよ……心臓を締め上げられているような気分だ。痛かったろう? 可哀想に……すまないね、僕が連絡に気付けたなら年積の者を行かせて君を助けることも出来たろうに」

救急箱の整理を終えた男性は目を見開き、小さく首を横に振った。彼ら年積の者はあくまで使用人、荒事は苦手だと言いたいのだろう。ネザメには立場的に言えないのだろう。

「そうだ、秋風くんはどこだい? 彼も争いに参加してしまったと聞いたけれど、彼も怪我をしたのかい?」

「顔は無事ですよ」

「僕は顔だけを心配している訳ではないんだよ。顔は、ということは……胴や手足が無事ではないんだね? あぁ、秋風くん……あ、車に戻らずに秋風くんの手当ても頼むよ」

「承知しました」

「さ、水月くん。秋風くんを探そう」

ミフユはケーキ屋の前に戻ったサンにつきっきり、ハルもそちらに残った。ミフユの親戚の男性が居るから二人きりとは言えないが、ミフユを伴っていないネザメはレアだ。

「アキがどこかは俺にも……あっ居た」

アキはベビーカステラの屋台の前に居た。セイカの口にも押し込みつつ、自分も頬張っている。

「アキ!」

「にーに、にーに、食べるするです」

「むぐっ……ん、ぁ、ありがとう……」

駆け寄ると口にベビーカステラを押し付けられた。甘くて美味しい。

「……秋風くん、僕にも食べさせてくれないかい?」

「もみじー、食べるするです?」

「するです、だよ。秋風くん」

「お待ちくださいネザメ様、念の為私が先に」

毒味役って本当に居るんだ。

「お一ついただいてもよろしいでしょうか? 秋風様」

「……誰、です? 車、使うする人、似てるする、けど、違うするです」

《紅葉達が乗ってきた車の運転手だろ。毒味か何かじゃねぇか? やらせてやれ》

《理解。ほらよ》

アキはベビーカステラを一つつまんで男性に食べさせ、OKが出た後でネザメにも食べさせてやっていた。

「んん……秋風くんに食べさせてもらうと何よりも甘美に感じるね。おっと、そうだ、手当てに来たんだった。秋風くん、怪我をしているそうだね。手当てをするから見せてごらん?」

「もみじ、話すする……難しいです、いつもです」

《怪我しただろ、手当てするから見せな。だってさ》

《……嫌。絶対に嫌。触んな》

「狭雲くん……?」

「絶対嫌、だってさ。怪我したとこ触られたくないみたいだ、野生動物みたいだな」

「秋風くんの野生動物のような強かさや美しさは好きだけれど、野生動物だって場合によっては保護して治療をするんだよ」

揃いも揃って俺の弟を野生動物扱いしやがって。

「……じゃあ後はネザメさんに説得していただくとしまして。俺はミフユさん達のとこに戻りますね、まだまともに話せてないですし」

ケーキ屋の前に戻り、彼らに声をかける。

「サン、ずっとここで何やってるの?」

「甘いいい香りがするから食べたいなぁと思ってね」

「自分がケーキの説明をしているところだ。サン殿、次はブルーベリータルトです。フルーツはブルーベリーのみ。クリーム、生地は先程説明したイチゴタルトと同じです」

「ブルーベリーかぁ、目良くなるらしいね。食べておかないとだ」

それはギャグか?

「……サン、髪可愛いね。ハルにやってもらったんだって?」

「え? あぁ、そうそう。編み込みだっけ、器用だよねハルちゃん」

側頭部に一つずつ、編み込みからの三つ編みの束が作られている。結んでも先端のくりんとしたくせっ毛が直っていないのが特に可愛い。

「こーんな長い髪触らせてもらえるなんて最高だったよ~! シャッフルするんだよね、次もサンちゃんと隣がいいなぁ~」

「くじ引きをする訳ではないので希望すればその通りになるぞ……?」

「サンちゃんまた俺隣でいい?」

「まだ会ったことない子居るならその子がいいな」

「フラれたぁ!」

サンとハルの相性はいいようだ。問題はカンナだな、サンが顔を覚えたいと触れようとすれば確実に嫌がるだろうし……無口なのもあまり合わない気がする。橋渡し役は俺だ、気張らなければ。

「生チョコクリームケーキもらえる? カードで……あ、みんなもケーキ食べたい? 今ならついでに買ったげるよ」

ミフユがショーケースの三段目まで全て説明を終えた後、サンは一段目のケーキを選んだ。
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