冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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共倒れは避けたい

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母が部屋に戻った後、俺はダイニングの灯りを消し空調を止め、セイカを抱えて自室に入った。

「灯り点けて」

両手が塞がっているので声を出し、電灯を点けた。明るさに目が慣れるまで下を……セイカの方を向き続けた。

「鳴雷……?」

改めてセイカの新しい髪型と服装を眺める。派手な髪にオーバーサイズのトレーナー、スキニージーンズ……レイの趣味全開だな。トレーナーは白に近い灰色、黒色で大きく斜めに傾いた英単語が書いているが大き過ぎて見切れているため読むことは難しい。ジーンズは黒に近い青色で、特に模様などはない。

「そのズボン、義足履きにくくないか?」

「へっ? ぁ、うん……かなり」

「選んでもらったからって鵜呑みにしなくても、着にくいとか気に入らないとかは言っていいんだぞ?」

「……うん」

「…………あっセイカがそのズボン気に入ってるならいいんだ! セイカ足細いからそういうの似合うし、でも履きにくくないかな~って思っちゃっただけで……うん」

「鳴雷……気に入ってくれるかなって、そればっかりで……履き心地とか気にしてなかった。今聞かれて初めて気付いた」

可愛いことを言ってくれるじゃないか。そんなに俺の感想を気にしているのならちゃんと見てやらなければ。

「下ろすぞ」

ベッドにセイカを座らせ、俺は勉強机の椅子に座る。背もたれに身体を預け、少し遠くからまた改めてセイカを眺める。ただでさえオーバーサイズのトレーナーは白という膨張色のため、更に足の細さが強調されている。似合うし可愛いけれど、細過ぎてちょっと不安になる。

「歌見来てるのにそっち構わなくていいのか?」

「……呼んだ訳じゃないし」

「でも、あの人あんまり来れないんだろ?」

「そういえば……アキの誕生日プレゼントどうしようか話そうとか言ってたよな、先輩と。その話はしたのか? なんか買った?」

「ぁ……うん。買ってもらった……」

「……そ」

俺は何にしようかまだ考えている最中だ。アキの誕生日はネザメの別荘で祝うことになるし、早く考えて用意して旅行にプレゼントを持っていかなければならないのに、出発が明後日に迫っているのに、まだぼんやりとしたイメージすら浮かんでいない。

「はぁ……」

深いため息をつき、勉強机に頬杖をつく。値段ではネザメに勝てないし、センスではハルに勝てない。新しいサングラスでも買ってやろうか? 誕生日プレゼントの特別感がない。俺らしさも欲しい……俺らしさ……手芸は得意だ、自作するか? いやいやいや、スベるぞ。

「な、鳴雷っ」

「ん……?」

椅子を回してセイカの方を向く。

「機嫌、悪い……?」

「……俺? いや、別に……落ち込みと悩みがちょっと」

「悩み、は……秋風のプレゼントだよな。落ち込みって……? 俺っ、何か出来る?」

「いや、大丈夫だよ」

「……そう、か」

立ち上がり、俯いてしまったセイカの頬に触れると彼はビクッと身体を跳ねさせ、瞳を震わせながら俺を見上げた。怯えているように見えるのは俺の気にし過ぎなどではないだろう。

「セイカ、俺のこと怖い?」

「えっ、そ、そんな、全然……」

「……本当に?」

斜め下に視線を逸らしたセイカの頬から手を離す。

「…………先輩に、DV男だって疑われた。ショックだった、起きた後ちょっと騒いでテンション上げてみたけど……母さん悲しませちゃってたって気付いて、落ち込むこと増えて……戻った。忘れようとしてた悩み……戻っちゃった」

その場に膝をつき、片方しかないセイカの膝に頭を預ける。

「先輩に会いたくない……」

「え……お、俺、誤解といてくる!」

立ち上がろうとするセイカの右足を抱きかかえて俺の太腿を踏ませる。

「…………セイカ、俺のどういうとこが怖い? 直すよ……必ず直すから、言ってくれ。怖がらせたくないし、怖がられたくないんだ」

「こ、怖くないってば……」

「嘘だろ、目線で分かるよ」

「……本当に、怖くないんだ。転ばされた時は痛かったし、痛いからちょっと怖かったけど……でも、俺に勝手にどっか行って欲しくなくて怒ってたって思ったら、嬉しくて……怖いのは鳴雷に嫌われること。俺鳴雷のために何も出来てなくて、肌もボロボロで……今はよくても、そのうち嫌われてっ、捨てられるんじゃないかって……だ、だから、怖がってるように見えるんなら、多分それ…………鳴雷の愛情が伝わってないとかじゃないんだ、すごく伝わってる、嬉しい、でも未来は分かんなくてっ……それで、俺が勝手に怖がってるだけ……鳴雷のせいじゃないし、鳴雷に直すべきところなんて何もないよ」

ゆっくりと、詰まりながら、どもりながら、静かに話してくれたセイカの顔を見上げる。彼も今度は真っ直ぐ俺を見つめてくれている。今の話はきっと本心だ。

「……今の言えば歌見分かってくれるかな?」

「いや……いいよ。俺が落ち込んでるのはあの時疑われちゃったことで、これからどうなったって今の落ち込みは消えないし……誤解じゃ、ないし」

正座に近い姿勢だったのを膝立ちに変え、セイカに抱きつく。セイカは両腕で俺を抱き返し、左手で頭を撫でてくれた。

「誤解だよ、鳴雷は優しい」

セイカの泣き顔が好きなんだ、弱っているところを見るとたまらなく興奮するんだ、そんなふうに打ち明けたらセイカはきっと、自らを追い詰めて俺好みになろうとするだろう。俺は幸せそうにしているセイカも健康になっていくセイカも好きなのに、その言葉は気遣いか何かとして聞き流されるのだろう。だから言えない、俺の醜さを晒せない。

「でもな鳴雷、鳴雷が俺に……DV? だっけ? 恋人に暴力振るうこと……それしてたって、俺は鳴雷が好きだよ」

セイカには甘えられない。落ち込んでしまった今はセイカから距離を取らなければ危険だ、二人一緒に落ちていくばかりだ。

「……アキと先輩のとこ、行こうか」

疑われたのがショックだなんて言ってられない、早く立ち直らないとセイカを巻き込んで潰れてしまう。
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