冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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音信不通なあの子の元へ

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昼食後、俺達はアキの部屋に戻った。サンからの返信も来ていたので確認することにした。

『そうだよ』

の、一言だけ。味気ないなぁ……メッセージアプリとかあんまり好きじゃないのかな? 電話派? そりゃ読み上げ機能の淡々とした音声より電話越しでも俺の声の方がイイというのは当然なのだが。

「にーに、すぇかーちか、遊ぶするです。プールです」

「プールで遊びたいのか? いいぞ。セイカは大丈夫そうか?」

「大丈夫……ぁ、そうだ、鳴雷……さっき秋風膝に乗せてたよな、俺も甘えても……ダメ、かな、俺は……」

「なになになんでも言ってせーかたん!」

「せーかたんはやめろってば……あの、脱がして欲しい。だいぶ慣れてきたけどやっぱり、手両方あった頃とは勝手が違ってさ……」

俺が「いいぞ」と言った瞬間に服を脱ぎ始めたアキはもう部屋には居ない。部屋に二人きりの状況で「脱がして」なんてこれはもう……!

「……鳴雷? やっぱりダメ? こんなの俺が楽したいだけだもんな……秋風みたいな可愛げがない」

「…………勃っちゃった」

「は? あ、あぁ、そう……」

「ごめん、ちょっと待って、ちょっとだけ」

勃起が収まるまでというのは現実的ではない、もう数秒あれば勃っている状態になれて平静を装うことくらいは出来るようになるはずだ。

《兄貴、スェカーチカ、まだー?》

《秋風、ちょうどよかった。脱がしてくれ》

不満げに部屋に戻ってきたアキがあっという間にセイカの服を脱がせて連れ去った。一瞬何が起こったのか分からなかった。

「…………俺のバカ!」

勃ったままでも躊躇わずにやるべきだった、自分が許せない。

「にーにぃ~!」

しかしそんな落ち込みも、プールの中で俺に向かって手を振るアキの満面の笑みを見た瞬間に消え失せた。



二時間ほどプールで遊び、アキの髪を拭いてやりながらセイカと話す。

「ネザメさんが海辺の別荘に招待してくれることになってるんだ、ネザメさんの親父さんが盆に使う予定があるからその前か後で、夏祭りとかはだいたい八月後半にあるだろ? そういうの行きたいし前の方にしようかって言ってて、詳細な日程も決めたいんだけどさ、セイカはどう? 予定大丈夫?」

「俺は何の予定もないぞ、鳴雷の備品だ。置いてってもいい」

「ちょっと帰らなかっただけで泣いたヤツが言うことかよ~。受験? でいいのかな、十二薔薇転入の……アレの日付は大丈夫なのか?」

「あぁ、平気……」

「そっか。じゃあ俺はみんなに合わせる感じで……でもシュカと連絡がつかないからさ、最終決定は出来ないんだよな」

「まだ連絡つかないのか、結構前から言ってなかったか?」

「うん、だから心配でさ、住所調べてもらって分かったから明日辺り様子見に行ってみようと思うんだけど……昨日の今日で出かけて大丈夫かなーって、アキ……聞いてみてくれないか?」

セイカはふっと呆れたように笑ってアキの肩をつついて振り向かせると、相変わらず俺には分からない異国の言葉を操った。

「今度は何日居なくなる気だってさ」

「えっ、あー……すっかりトラウマ的なことに? ごめんなアキぃ、いやちょっと様子見に行くだけだし日帰りだと思うんだけどなぁ」

「二日以上なら連れてけってさ」

「大丈夫! 大丈夫、ちゃあんと帰ってくるから」

《日帰りで大丈夫そうなんだってさ》

《あの絶倫メガネに久しぶりに会うっつーのにそれはねぇわ。ぜってぇ泊まりになる。てんしょー呼ぼうぜ》

《あ、それいいかも……またよしよししてもらえるかな》

いちいち翻訳してくれなくなった。アキがごねているのかな? 連れて行ってやるべきだろうか。シュカ嫌がらないかなぁ。

「……話終わった? セイカ、要点だけでも頼むよ」

「あぁ、明日はたこ焼きパーティーしたいなって結論が出た」

「何の話してたの!?」

「俺の大阪のイメージが貧困なせいで……」

「ごめんもう少し手前から説明頼む」

「お前が居ないなら天正呼ぼうぜって話になって、天正が好きそうな飯で釣ろうって。アイツ大阪出身だろ? じゃあたこ焼きかなって」

「リュウは……! たこ焼き好きなのかな……? まぁ前のタコパの時は生き生きしてたし……うん、いいんじゃないかな」

甘いもの好きなイメージがあるが、本人は糖分摂取のためで好きな訳ではないとか意味の分からないことを主張しているし、彼の好物はよく分からない。

《よし秋風、天正に連絡しろ。来てくれそうならたこ焼きの材料買いに行くぞ》

《いぇーい久々のてんしょー!》

「……ねぇ二人とも俺よりリュウのが好きじゃない?」

「そんなことはない……」

「歯切れ悪くない!?」

くすくす笑い出したから歯切れが悪かったのも目を逸らしたのも冗談の一貫だったのだろうとは思うが、心臓に悪い。



翌日、俺は朝食を食べてすぐに出かける準備を整えた。早めに行けば早めに帰ってこれる、俺が居ないだけで寂しくて泣いてしまう可愛い二人の元へ早く戻れるのだ。

「アキ、セイカ、行ってきます」

「いてらー」

「行ってらっしゃいです、にーに」

「……軽くない? ねぇ軽くない? めっちゃ泣いてたくせに……今生の別れくらいのを期待してたよお兄ちゃん」

釈然としないまま出かけるために玄関に向かう──あっ玄関まで見送りには来てくれるんだ、素直じゃないヤツらめ。もう一度ハグをしようかと踵を返したが、インターホンが鳴ってまた振り向かされた。俺は玄関の手前で一回転する不審人物。

「おはよーさん。あれ、水月出かけるんとちゃうん?」

「リュウ……おはよ、俺は今から出かけるんだよ、早いなお前……何そのトートバッグ」

「たこ焼き器」

たこ焼き器が入っているのだろうダンボールを無理矢理詰め込まれたトートバッグは今にも破れそうだ。

「てんしょー! てんしょー、おひたし……です?」

「お久しぶりですとちゃう? 俺は菜っぱとちゃうで、醤油かけんといてや」

「天正、あの……またよしよしして欲しくて……」

「おーええよ、後でな」

「…………ねぇやっぱりお前ら俺よりリュウのが好きじゃない!?」

「なんだまだ居たのか、早く行けよ」

「流石いじめっ子って言ってトラウマほじくり回してやろうかセイカ様ぁ! 行ってきます!」

「…………ぁ、ご、ごめんな、さい……俺……俺、そんなつもり……」

「有言実行して行きよった。酷いやっちゃ。よしよし、座り込むんやったらソファとか行こな」

泣いて電話をかけてきたり、俺に引っ付いて眠ったり、可愛かったのになぁ……まぁ二人が元気に過ごせるのならそれが一番だ。リュウに対しては今のところ嫉妬よりも感謝の方がギリギリ大きい、もちろん一番大きいのは愛情だが。

「……ここがシュカのハウスね」

駅からかなり離れたところに建った、こじんまりとした家のインターホンを押す。

(うんともすんとも。これ壊れてません? ピンポンって普通外にも聞こえますよな?)

扉を叩くも、返事などはない。当然鍵がかかっていて扉は開かない。無駄足だったかなと思いつつ物干し竿があるだけの狭い庭の方へ回る。

(女性物もありますな、お義母様のでしょうか)

カーテンが閉まっていて中の様子は分からない、窓は──窓には、鍵がかかっていなかった。バクバクと心臓が騒ぎ出した。

(シュカたまがこんな不用心なことします!? 別人の家なんじゃ、でも鳥待の表札が、いやどっちにしろ中に入る訳には、でもシュカたまはもう何日も連絡が取れなくて……!)

静かに、音を立てないように、そうっと中へ忍び込む。胸を服の上から鷲掴みにしてうるさい心臓を叱りつけながら、シュカを探す。

(なんか、意外と……汚い)

コンビニ弁当の容器が積み重ねられていたり、それが崩れていたり、流し台に茶碗やコップがいくつも放置されていたり……シュカは綺麗好きなイメージがあったのだが、俺の勝手な思い込みだったのだろうか。小バエが鬱陶しい。

(おっと、人の声……テレビですかな)

テレビの音が漏れている部屋があった。扉が半開きだったのでこっそり覗いてみると、中には病院に置いてあるようなベッドとその上に横たわる女性らしき人が居た。

(……うわ)

その部屋の床は酷く汚れていた。割れた茶碗やその中に入っていたのだろう米、味噌汁、ほうれん草のおひたしと思しき物が散乱し、小バエが集っていた。

(…………あれ、血じゃね?)

あの零れた料理は最近作られたものなのだろうか、割れた茶碗やその周りの赤黒いシミはまだ乾き切っていない血の跡に見えた。背筋に悪寒が走った。

(あ、廊下にも……)

その部屋から浴室へと続く血の斑点を追うと、シャワーの音が聞こえてきた。

「シュ、シュカ? 居るのか?」

浴室に居るのはシュカではないのかもしれないのに、俺はそう声をかけた。返事はなかった。

「……開けるぞ?」

やはり返事はない。恐る恐る扉を開けると、服を着たまま床に座り込んで俯いている少年の姿があった。

「シュカ……だよな?」

全くの無反応の彼の右手から血が流れ出ているのが見えて、息を呑んだ。
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