冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
602 / 2,304

醜い傷跡も勲章となる

しおりを挟む
校門のすぐ傍で謎の刺青男に絡まれ、シュカが暴行を受けてしまった。リュウが教師を呼んできて男は逃げ出し、俺達は学校に舞い戻った。

「──なるほど。身に覚えは全くないんだな?」

「はい……」

シュカは保健室で治療を、俺は指導室で事情聴取もどきのものを受けていた。

「鳴雷は相手を知らないのに、鳴雷の似顔絵を持って、鳴雷を探していた……と。しかもヤ……いや、生徒の前で人を見た目で判断することは言えないな。うーん……そこのお嬢さんに一目惚れされて下っ端が連れてこようとしてるとか?」

前にもそんなことを聞いたな、似たような予想をしていたのはセイカだっけ?

「弟が世話になったとか言ってたんですけど、俺知らない人の世話した覚えないんですよね。俺結構人見知りするので知り合いとしか話せないんですよ」

「人見知り? その顔で? あっ、いや、悪い」

「……いえ」

「他の先生に警察に連絡してもらったから、しばらくは学校近辺を巡回してくれると思う。何かあったり思い出すことがあったら先生か警察の人に言うんだぞ」

「ありがとうございます、すいません迷惑かけて」

流石は御曹司御用達の十二薔薇高校、中学の頃のイジメ見て見ぬふりことなかれ主義やる気ゼロ教師とは違う。

「さて、あの男の情報を共有するために見た目の特徴なんかを上げていこうか。天正達にも聞かないとな」

「……まだ結構時間かかる感じですか? バイト先に連絡していいですか?」

「バイトしてたのか。いいぞ、校内での使用は原則禁止だから外から見えない位置でかけてくれ」

廊下側の窓からも外に面する窓からも見えない位置に立ち、本屋に電話をかけた。学校に拘束される時間が不安定な学生を雇用しているという覚悟ゆえか、店長の性格なのか、彼女は遅刻にはあまり厳しくない。

「……はい、はい、すいません……ありがとうございます。はい、はーい……失礼します、はい」

電話を切り、スマホの電源も切るフリをして、スリープモードのままポケットに戻した。教師と共に保健室に向かい、ぶすっとしているシュカと半泣きのカンナ、今は何を考えているのかよく分からないリュウと再会した。

「シュカ! シュカ、大丈夫か? あぁあ顔になんか貼ってるぅう怪我したんだぁあぁやだぁぁシュカぁあ……」

ベッドに腰掛けているシュカの頬にはガーゼが、唇の端には小さな絆創膏が貼られている。不良映画で見るような痛々しい姿に俺は情けなく泣き喚いた。

「……うるさいですよ。水月は怪我ありませんか?」

「無傷ぅ……ごめんなシュカぁ、激しいわ速いわでどのタイミングで割り込めばいいのか分かんなくてさぁ、昔から大縄跳びとかでクラスメイトにため息つかれるタイプなんだよ俺……」

「水月に怪我がないならそれでいいんです」

シュカの表情が少し柔らかくなった。俺は溢れる涙と感情に任せて彼を抱き締めた。

「……守れてよかった」

抱き返しながらシュカは小さな声でそう呟いた。

「市の不審者情報で共有してもらうから覚えてることを言ってくれ。まず、身長だな。どのくらいだった?」

「お、き……かった」

「私よりも高かったと思います」

「水月よりも高かったんちゃう?」

教師は俺の身長を聞いた後、メモを取った。

「服装は?」

黒のタンクトップにデニム、四人とも意見が一致した。

「そんなことよりもんもんすごかったで」

「見事でしたね、その筋の人でしょうか」

「……もんもんって何?」

「もんもんは……もんもんやがな」

リュウは怪訝な顔をしている。シュカに視線を移すと彼はフッと微笑んでから教えてくれた。

「刺青のことですよ」

「……これ関西弁ちゃうやんな?」

「水月が無知なだけですよ。あなた最近よくそれ聞きますね」

「自分らが何言うてるか分からん言うからやんけ! 俺そない変なこと言うてへんのに」

「も、た……ぷーる、なんて……知ら、な、もん」

「モータープール言わんやなんて嘘やぁ! せやけどまぁ……よぉ考えたらモータープールて何やねんてなるなぁ、なんでモータープール言うんやろ」

男の情報を聞きたそうにしている教師に俺は彼がピアスを付けていたことや、黒髪だったが前髪に白いメッシュが二本入っていたことなどを教えた。

「自分かてなぁ深夜にゴミ出しして怒られよったり肉まんにカラシ付けろて店員にクレーム入れて変な顔されたりしとったらしいやんけ!」

「東京がおかしいんですよ! 夜が一番混まないんだからゴミ回収は深夜がベストなんです。肉まんには酢醤油とカラシ必須でしょう、なかったらさっぱりし過ぎじゃないですか!」

喧嘩になってきたな、そろそろ止めようか、いや、オロオロしているカンナが可愛いからもう少し待つか。

「……鳴雷、仲裁出来るか?」

「あっはい」

いつものように二人の喧嘩を仲裁し、リュウには額を指で弾く特別サービスもくれてやった。

「多少の喧嘩はいいけど、故郷のディスり合いはやめろよ?」

「ディスってはないです」

 「上京しといて田舎の常識引きずっとるんをどないかせぇ言うとるだけや。コンビニの店員さん困っとんねん」

「クレーム入れたのは一回だけですよ、カラシないんですかって聞いただけでクレームでもないですし! つーか博多は田舎じゃねぇしんなこと言うならお国言葉引きずっとるきさんの方はどうなってんだよぁあ!?」

「東京に比べたらどこも田舎や! 方言の話すんのやったら自分かてこないだしぐにゴミ渡してほかせ言うて首傾げられとったやんけ!」

「喧嘩するなってば! ったく……」

地域性の違いや伝わらない方言は笑い話の種だと思っていたが、彼氏達を見ていると争いの種のような気がしてくる。

「……まぁ、口喧嘩出来るだけの元気があってよかったよ」

「舐めないでください、あれくらいなんてことありません。少し前まではあの程度日常茶飯事だったんですから」

「そっか……こっちに来てくれてよかったよ。俺はシュカに痛い目に遭って欲しくない」

「…………ふん」

人前だからかシュカは顔を背けてツンとした態度を崩さないが、その顔は耳まで赤い。また今度二人きりになった時に改めて同じことを話せば抱きついたり擦り寄ったりしてくれるだろう、積極的に機会を狙っていかなければな。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...