冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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誕生日パーティスタート

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ちらし寿司はみんなに好評で、シュカ以外にもおかわりを欲しがるものが続出した。おかげで卵のストックがなくなってしまった、明日の朝食に目玉焼きは並べられないな。

「ふぅ……」

空調からの涼しい空気はダイニングからキッチンにまで流れ込んではいるが、薄焼き卵を作り続けた俺の身体は熱く、全身にじっとりと汗が滲んでいた。フライパンを洗っている今も熱が引かない。

(シャワー浴びたばっかなのに……おや?)

二の腕を覆う袖で顔の汗を拭う。視線を感じ、俺もそちらに視線を向ける。

「……セイカ? 座ってていいのに」

義足での足取りは覚束ず、片手での皿運びはリスクが大きい。彼氏達には各々で使った皿を持ってこいとは言ったが、セイカの分はアキかホムラが運ぶものだと思っていた。

「鳴雷……」

世話を焼かれるのはやはり嫌なのかなと考えていると、シンクに皿を雑に置いたセイカが抱きついてきた。よろけた雰囲気はなかった。俺の胸に顔を押し付けて深呼吸をしている。

「……汗かいてるな、着替えた方がいいぞ。この部屋涼しいんだから、風邪引くだろ…………なぁ、まだ洗濯しないだろ? よかったら……この服は、俺にしばらく……だめか? 鳴雷、鳴雷ぃ……はぁ……ぁあ、欲しい、これちょうだい」

しっとりと濡れたシャツをぎゅっと掴み、甘えた声でねだる。そんなセイカの顔は赤く、瞳は潤んでいた。

「セイカ……ほんと臭いの好きなんだな」

「……そういうんじゃない」

「えぇ? ふふふ……片付け終わったら服あげるから、待っててくれ」

「ん……」

セイカが去ってしばらく、皿が全てキッチンに運び込まれるとミフユとホムラがやってきて後片付けを手伝ってくれた。

「次は歌見殿の誕生会か……テストの打ち上げに七夕に誕生日、随分と重なったものだ。ケーキ、もう出すのか?」

「みんなまだお腹いっぱいだろうし、まずはプレゼントにしましょう。俺ちょっと着替えてきますね」

「うむ、皆に言っておこう。歌見殿に気取られぬようにしなければ……」

「メッセでいいんじゃないですかね」

「む」

セイカとの約束を果たすため、俺は一人自室で着替えた。肌に残る汗を服で拭い、別の服に袖を通し、普段なら洗濯機に投げ入れるシャツを持ってダイニングに戻った。

「セイカ、お待たせ」

「鳴雷っ、それ……! ぁ……ありがとう、鳴雷……この服鳴雷が濃い、嬉しい……」

ソファで俺を待っていたセイカにシャツを渡すと彼は大喜びでそれを抱き締めた。胸の中で火花が散ったような感覚を覚え、一瞬とはいえ自分がさっきまで着ていた服に嫉妬するなんて馬鹿だなと自分自身を蔑んだ。

「服に夢中だな、本体がここに居るのにさ」

心のままに拗ねた言葉を紡ぐ自分も馬鹿馬鹿しかった。

「……鳴雷、他のヤツと話してばっかだから。俺はこれで我慢する、あのメガネにでも構ってこいよ、何か約束してるんだろ?」

「セイカは勘がいいなぁ、シュカとの約束はもう少し先だからいいんだよ。まぁ……服でいいならいいけどさ、寂しかったらすぐ来いよ? 俺セイカに甘えられるのすごく好きだから遠慮せずにな」

「遠慮なんかしてたら今ここに居ねぇよ、それに……」

セイカは隣に座っているアキに視線を移す。スマホを弄っていたアキはセイカの視線に気付くとスマホを置いてセイカの肩に腕を回した。

《どうしたスェカーチカ、今こっち見たよな?》

「…………秋風がずっと傍に居てくれるから寂しくない。紅葉の目はちょっと痛いけど」

「そっか。仲良くなってくれて嬉しいよ、また後でな」

彼氏達がコソコソと歌見へのプレゼントを俺の部屋に取りに行っている。俺も行こう。

《何その汚ぇ服》

《汚くない。鳴雷のだ》

《……スェカーチカは匂いフェチか。勃ったら言えよ、抜いてやる。口でも手でも好きな方選びな》

ダイニングを出る俺の耳にはセイカとアキの仲良さげな俺には分からない会話が届いていた。



俺が歌見に渡すのは彼が好きそうなジャンルのレア物同人誌。発行部数は確か百、作者は失踪済み、データ販売はなし、二冊目が手に入ることのないこれを渡すのは断腸の思いだが、愛しい彼氏に俺の愛の大きさを示すには腸程度では足りやしない。

「せーんぱいっ、何してるんですか?」

ダイニングに戻った俺はレイの隣でスマホを弄っている歌見に声をかけた。

「対戦……」

「ここに飛車……ぅー、ダメっす、桂馬を……んんん……」

「対戦? ゲームですか?」

「将棋ベースのソシャゲだ、攻撃力が低いと駒を取れなかったりする。王将の耐久が高ければ王手を取られてもゲームオーバーにはならん」

「歌見先輩歩が全部SR以上だから全然攻め込めないんすよぉ!」

「金銀はコモンだから一撃だぞ」

「攻撃力全振りの香車で体力半分も減らなかった歩なんて突破出来ないっすよ……何とか角か桂馬を……ぅ~」

説明を聞いても面白さが全く伝わってこなかったのに、二人の様子を見ているとインストールしてみようかという気になってくる。

「ゲームしたままでいいんで、ちょっとこっち座ってくれます?」

「……? あぁ、分かった」

 不思議そうな顔をしながらもスマホ片手に歌見は席を移った。ここはいわゆるお誕生日席だ。

「先輩」

「ん? まだ何か……」

「お誕生日おめでとうございます!」

隠し持っていたクラッカーを鳴らすと歌見は大きく目を見開き、カラフルな紙テープをその身に浴びながら硬直した。
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