冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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七夕を兼ねた誕生日

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膝の少し上から切断され、太腿しかない左足に義足を取り付ける。かぽん、と大したことなさげにハマった血の通っていない足で立ち上がったセイカはすぐによろけた。

「っと」

支えてやると彼は気恥ずかしそうに俯いた後、恐る恐る顔を上げて「ありがとう」と呟いた。可愛い。

「晩ご飯はちらし寿司とお刺身だぞ、セイカ生魚はイケる口か?」

「さぁ……」

「給食で生のお魚は出ませんからね。ちらし寿司は給食で食べた覚えがあります、塩梅のいい酸っぱさでした」

「俺食ったことないぞ、新メニューか?」

狭雲兄弟の会話を聞いて彼らが俺の想像するような食生活を送ってこなかったことを思い出し、内省した。

(逆に何なら食べてるんでそ……給食で出なさそうなヤツは全滅と考えてよろしいか?)

好きな物も嫌いな物も分からないんじゃこれから先献立を考えるのも大変だな、というところまで考えてから明日以降同居出来るか分からないのだと思い出して落ち込んだ。

「鳴雷一年生、支度を手伝うぞ。酢飯は力仕事だろう、鳥待一年生にでも手伝わせるか」

「ありがとうございます。酢飯は作って置いてるので大丈夫ですよ」

「む、そうか。準備がいいな、偉いぞ。では取り分けるだけか?」

「卵も作ってるし……あ、魚は短冊のままなので切らないとです」

人数分の皿を用意しながら数時間前の行動を思い返し、やらなければならないことを炙り出していく。

「では刺身は自分が作ろう、貴様はちらし寿司の取り分けだ」

「え、でも……」

「自分の方が包丁の扱いに長けている。任せろ」

「……じゃあ甘えちゃいます。お願いしますね、ミフユさん」

ミフユは背が低いから失念してしまいがちだが、俺の方が歳下なのだから甘えたり頼ったりすればミフユは喜んでくれるかもしれない。さぁ、どうだ?

「うむ! 任せておけ!」

喜んでいるみたいだ、背が低いから歳下にまで歳下扱いされてきた悲しい過去があったりするのだろう。



れんこんにニンジン、しいたけが混ざった酢飯を均等に皿に盛り、錦糸卵をかけていく。七夕だからと星型に切ったニンジンと薄焼き卵を皿の縁に並べ、綺麗に出来たなと一人頷いた。

《おぉ……和食は見た目も綺麗だな》

《ロシアの料理は見た目にこだわってないのか?》

《ババア料理クッソ下手だったから俺ろくなロシア料理食ってねぇと思うしアンタらが想像するロシア料理結構な割合でウクライナ発祥だぜ、ウィキ曰く》

《……前半スラング多過ぎてよく分かんなかった。後半は……そんなこと言ったら日本だって天ぷらはポルトガルだしカレーはインドだしラーメンは中国だぞ。つーか自分の国の情報をネットに頼るな》

《スェカーチカがロシアのこといっぱい聞いてくるから調べてんじゃん……俺外界と関わってこなかったから文化も特産品も分かんねぇのに》

《俺のため? そっか……ごめん》

《クソチョロ》

《……? もう少し簡単な言い方してくれ》

セイカとアキがぼそぼそ話し合っている。七夕やちらし寿司について説明してくれているのだろうか。

「みんな、そろそろ座ってくれ。刺身来たぞ」

ミフユが切って綺麗に盛り付けてくれた刺身の大皿が机の真ん中に運ばれてきた。マグロ、サーモン、ハマチ、タコ、イカ、貝柱、イクラ、などなど有名どころばかりだ。

「刺身は一人四切れずつ、イクラは……んー、スプーン二すくい。嫌いなのとか苦手なのがあったら隣近所と交換すること。一方的にあげたりするのは原則ナシな」

「イクラ一粒やるから刺身三切れずつ寄越せ、とかは?」

「もちろんカツアゲはダメだぞ~」

注意事項を説明し終える頃には全員に箸と飲み物が行き渡ったので、アキ以外の者はみんな「いただきます」と言って食べ始めた。

「卵星型に切られとるやん」

「一人一つずつだけどな、構想段階だと卵は全部星型だったんだけど、やっぱり面倒臭くて」

「俺イクラ無理なんすよね……他のならどれでもいいんで誰か交換してくれないっすか?」

「ではハマチかタコのどちらかと」

《これ何? 魚卵? これも生? うぉぉ……凝縮された鮭》

みんな美味しそうに食べてくれているし、会話も盛んだ。ちらし寿司にして正解だったな。

「酢の具合が優しくて美味い、この間自分で作ったら上手く粉を混ぜられなくてただの米と噎せる米の混合物になったんだ……」

「お酢って粉なのかい?」

「お酢は液体だけどすし粉は粉だぞ」

「すしこ……? あ、そうだ歌見さん。しいたけとれんこんを交換しないかい?」

「ほじくり返すのか? いや、遠慮しておく。面倒だし……お付きの者が恐ろしいんでな」

「…………ネザメ様! 全く嘆かわしい!」

酢飯に混ぜ込んだしいたけをほじり出して皿の端に並べていたネザメはミフユにたっぷり叱られた。

「水月、おかわりあります?」

「あるある。おひつ向こうに置いてあるから入れてきな。あ、卵はないな……すぐ焼くからちょっと待っててくれ」

箸を置いてキッチンに向かい、冷蔵庫から卵を取り出す。

「…………私ご飯だけでいいですよ」

「遠慮するなよ、らしくない。もう割っちゃったし」

「らしくないってあなたねぇ」

シュカはため息をついて話すのをやめ、飯櫃にしゃもじを突っ込んで軽くかき混ぜてから皿に盛った。

「……今日みんなにはアキの部屋で寝てもらおうと思ってるんだ、だからさ、俺の部屋で……しよう。二人きりでたくさん。ヤり疲れて寝て、起きたらすぐ学校、楽しそうだろ?」

「ええ、期待していますよ、水月」

その時までは数時間ある、今は意識したくないのかシュカは俺のボディタッチを拒絶して上品に微笑んだ。
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