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コスプレも忘れずに

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ダイニングと廊下を分ける扉が僅かに開き、その奥で黒髪が揺れる。カンナがこちらを覗いているようだが、メカクレヘアの彼が覗き込んできても髪の毛しか見えない。

「カンナ、おいで」

エアコンからの冷気を廊下に逃がされ続けてはたまらない。可能な限り優しい声で呼びかけながら手招きをすると、カンナは恐る恐ると言った様子でダイニングに入ってきた。

「……っ、ふぉおおおーっ!」

「ひっ……!?」

「あー、ほむらくん? 水月はたまにああやって奇声上げるもんやねん」

「今日は多いと思うから~、いちいちビクビクしてたら身が持たないよ~?」

「……ご忠告痛み入ります」

爽やかな白と紺色のコントラスト、ワンポイントの赤。色の配置から分量、何から何まで完璧だ。
身体に張り付いていないシャツ、紺色に白いラインが入った大きな襟、大きな赤いリボンスカーフ、薄っぺらい紺色のプリーツスカート、愛くるしい膝小僧に、清楚さを演出する膝下までの白靴下。何から何まで最高だ、最高過ぎる。

「えんっげっつなく可愛いぞカンナ! たまらん……! カンナのスカートは初めて見たからな……それもあってもう、興奮がもう、すごい。あーやっぱ靴下白にしてよかったなぁ、清楚感抜群だよ」

「俺着なくてよかった~。白い長靴下とか絶対やだもん、足太く見えちゃう」

「……あー、だがら清楚っぽさあるのかな。まだそういうの分かってない垢抜けてない感がもう……! な!」

「おっさんみたいな趣味だねみっつん」

「もちろんギラギラ派手派手な美少女男の娘も大好きだぞ」

呆れ顔のハルにフォローを入れつつ扉の前で固まってしまっているカンナの傍に寄る。初めての女装で恥ずかしいのか頬が真っ赤だ。

「可愛いぃい~……触っていいか? いいよなっ?」

「ぅん…………ひゃっ……!」

細い身体を抱き締めて薄っぺらいプリーツスカートの上から尻を揉みしだく。全体的にもちもちとした幼児っぽい肉付きのカンナは直接揉んでも服の上から揉んでも楽しめるのだ。

「はぁ……テスト期間中ずっと禁欲生活だっからさぁ、もう、やばい……」

「んっ……ゃ、だめ……みぃくん、こーいう、のっ……は、後で……」

勃ってしまった陰茎をカンナの腰に押し付ける。服と下着が二枚ずつ挟まっていようと、俺の硬さと大きさはカンナに伝わるはずだ。

「はぁっ……はぁ……あぁ、カンナ、もう無理だ、我慢出来なっ……!?」

背後から頭を拳で殴られた。

「焼肉の準備しておきましょうよ、そろそろ皆さん来るんでしょう?」

「ヤってる暇ないで」

頭を摩りながら注意を受けていると、隙を突いてカンナが俺の腕の中から逃げ出した。俺は諦めのため息をつき、昼食のための準備を始めた。



ホットプレートをダイニングの机に乗せ、コンセントにプラグを挿す。人数分の椅子を並べる。

「また何人かはキャンプ用の折り畳み椅子に座ってもらうことになっちゃうな……」

「これはこれで座り心地いいよ~? お尻沈んでフィット感ぱない」

「長く座ってると腰痛くなりますよ」

「あはっ、しゅージジくさ~い」

「喧嘩するなよー? まぁ椅子決めるのは全員集まってからにしようか、ネザメさんの椅子いいのにしないとミフユさん絶対うるさいし……」

いや、彼はもはやネザメ用の椅子を持ってくるだろうとか考えるべきなのか?

「準備一段落したね~。で、みっつん。ほむくん……せーかの弟ってのは分かったけどさ~、どうなの? やっぱ口説いてんの~?」

「いや、流石にそこまで節操なくないよ。さっき話した通りほむらくんがここに居る経緯は全員集まってから説明するからな。ちょっと待っててくれ」

「…………アレ説明すんの?」

「嫌か? セイカ」

痩せ過ぎているセイカ普通の椅子に座ると骨が座面に当たって痛いらしいので、今はソファでくつろいでもらっている。

「……俺がぬいぐるみ離さないくだりと、こっち来てから鳴雷に、その……甘えたとこは、やめて欲しいんだけど」

「あぁ、セイカの可愛いところは俺が独占させてもらうよ」

「…………他のとこも、別に他のヤツらに言う必要ないんじゃねぇのか」

「でも、依然問題は山積みなんだし、みんなに話して一緒に考えてもらった方がいいと思うんだよ。三人寄ればなんとやらって言うだろ?」

「文殊の知恵、な。一緒にって……そんな、嫌だろ、みんな……俺なんかのこと」

セイカはブツブツと呟きながらテディベアに顔をうずめる。

「何や悩んどんねんやったら相談乗んで? 話聞くだけになるかもしれへんけど、一人で抱え込んどるよりマシやろ」

「どうしようもなくなるまで隠すのは無能のやることですよ。早めの報連相が問題解決の近道です」

「初春さんナイスアイディア出しちゃうよ~?」

「……とり、で……落ち、ま……な、で……ね?」

俺の彼氏達に励まされ、セイカは顔を紅潮させて目を潤ませたが、そんな顔を見られるのが恥ずかしかったのかテディベアで顔を隠した。

《…………何か言う流れな気はする。えーっと、帽子被らねぇと脳が冷えてやべぇ》

《ロシアの特に寒いとこの雑豆知識やめろ涙引っ込んだわ》

しかし、アキが何かを言うとテディベアをぼふっと下げて火照った顔を見せてくれた。

「目冷ました方がいいかもな。濡れタオル目に乗せとくか?」

「俺絞ってくるね~」

「あなたの握力じゃびっちょびちょになりますよ、私がやります」

「……カッチカッチもダメだぞー?」

タオルを取りに脱衣所へ向かったハルとシュカを見送り、俺の彼氏達は良い奴ばかりだろう? とセイカにドヤ顔をしてみた。

「兄様、御友人に……鳴雷さん、確認なのですが、彼らは鳴雷さんの恋人で、兄様の恋人は鳴雷さんだけ……で合っていますか? はい……はい、ありがとうございます。理解が鈍くお恥ずかしい。兄様、御友人に恵まれましたね」

ややこしくて申し訳ない。

「せーか、タオル出来たよ~。はい」

「あ、ぁりが、と……霞、染」

裏返った声で礼を言いながら濡れタオルを受け取り、ソファの肘掛けを枕にして仰向けに寝転がると、折り畳んだ濡れタオルを顔に乗せた。

「…………ぁ、気持ちいい」

その後、短冊を作った余りの折り紙で七夕飾りを作ったりしながら他の彼氏達を待った。セイカが眠ってからしばらく、ネザメとミフユがやってきた。

「こんにちは、みんな。すまないね、少し遅れてしまった。歌見さんはもう来ているかい?」

「こんにちは、ネザメさん。先輩はまだ来てませんよ、早くプレゼント隠しちゃいましょう。俺の部屋こっちです」

歌見への誕生日プレゼントは全て俺の私室に隠している。ネザメとミフユからのプレゼントはどちらも小物のようだ。

「お土産は全員集まってからの方がいいかな?」

「そうですね」

お土産らしき紙袋はダイニングに置いてもらった。

「おや、彼は? 新人かい?」

「セイカの弟です。恋人じゃないですよ、こっちの事情は分かってくれてますけど」

深々と頭を下げ、自己紹介をしたホムラの態度をミフユは気に入ったようだが、ネザメは興味なさげな返事をしていた。

(……そういやほむほむ居ると乱交とか出来ませんな)

私室やアキの部屋にコソコソ呼び出すことになるかな、と若干落ち込みはしたが、あの時ホムラに「来い」と叫んだことを後悔することなど出来なかった。
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