冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
391 / 2,304

知らぬ間に解ける誤解

しおりを挟む
作ったことはおろか食べたことすらないビーフストロガノフという料理。年積に作り方を習い、一応形に出来た。

「いい手つきだね。いつも料理をしているのが分かる。にも関わらず君の手は荒れていないね、指先まで潤っていて美しい。君に美しくないところはないのかい? 全部肉眼で確認したい……いや、手で触れて確認したいな」

調理中、ネザメは俺と年積の背後や隣をウロウロと歩き回っていた。一段落すると俺の手の甲をつぅっと撫でながら、もう片方の手で腹や太腿をまさぐった。

「ネザメ様、調理中は危険ですから近寄らないでくださいと何度申せば分かってくださるのですか」

「ミフユは君の邪魔になっていないかい?」

「え、えぇ、もちろん……あの、他にも作るので、ちょっとどいてください……」

筋トレの汗を流すためアキはシャワーを浴びている、ネザメの関心を奪うことは期待出来ないだろう。



ビーフストロガノフ以外のものも作り終え、年積と共に机に運んだ。レイは飲み物を用意してくれたけれど、ネザメは俺の後を着いてくるだけだった。

「……素晴らしい。どの角度から見ても、どの瞬間を切り取っても美しい。人間、大抵は苦手な角度や欠伸などの美が歪む瞬間があるものだけれど、君はずっと美しいね」

そりゃ視線を感じている間は気を抜いたりしないからな。気を張り続けるのはいつものことだ、疲れたりしない。けれど、湯上がりのアキに癒しを求めてしまう。

「アキ、シャワー終わったか。ちゃんと髪乾かしたか?」

首にかけたタオルを頭に被せて引き寄せ、軽く拭いてやるとアキは俺の胸に顔を押し付けてぎゅっと抱きついてきた。

「にーにぃ」

「フヒッ……ど、どうした? もうすぐ晩ご飯だぞ~」

変な声が出てしまった、ネザメ達には聞かれなかっただろうか。

「……木芽くん、君はこんな光景を毎日見ているのかい?」

「ここんとこはそうっすねー、幸せっすよ」

「だろうね……羨ましいな」

しっとり濡れた頬に触れると指に肌が吸い付いてきた。アキも心地よさそうに目を閉じている。このままいつまでも愛で続けたいけれど、それは我慢してタオルを片付けさせ、席に着かせた。

「いただきます」

全員同時に手を合わせ──アキだけはお祈りをし、食事開始。初めて作ったビーフストロガノフは想像よりも好評だ。

「美味しいっすけど、俺クリームのが好きっす」

「じゃあ今度はホワイトソースで作るよ」

「よく出来ている。これならネザメ様の舌に耐えうるだろう、よくやったぞ鳴雷一年生」

「ありがとうございます、年積先輩」

「とても美味しいよ、お肉が柔らかくて食べやすい。味付けも僕好みだ、やはり君とは縁を感じるね」

初めて作る料理なのでアレンジは加えず年積の言う通りに作った、ネザメ好みの味なのはつまりそういうことなのだ。

《美味い。兄貴やっぱ料理上手ぇわ。肉ほろっほろ……どうせ牛肉食うなら焼いた方が好きだな。串焼きがいい串焼き》

「どうだ? 美味しいか? アキ」

笑顔で頷くアキの頭を撫でると、ネザメが大きくため息をついた。それが不機嫌を表すものではないとオタクの俺には分かる。

《んだよアイツろくに食わねぇで、兄貴の飯美味いのに……兄貴、俺アイツ嫌いだ》

「どうしたアキぃ、おかわりもあるぞ」

アキに話しかける時たまに「どちたの~?」なんて仔犬に使うような話し方をしてしまいそうになる。アキは一歳年下なだけだから失礼だと分かっているのに、彼の幼い言動や仕草が喃語を誘う。

「ネザメ様、手が止まっていますよ」

「喉を通らない……」

ネザメが食事を終えたのは俺達四人が食べ終えてから三十分後のことだった。

「ふぅ……ごちそうさま。美味しかったよ」

「よかったです。お皿は洗っておきますから、くつろいでいてください」

レイと二人で皿を洗いながら、今日いよいよネザメと深い関係になれるのだと胸を高鳴らせた。儚げな彼の俗っぽい一面を見てしまった今、淫らな想像を阻む聖域らしさが薄れ、喘ぎ声が聞きたいという欲求が際限なく膨らむようになりつつある。

「ただいま戻りました」

「すまないね、洗い物を任せて。ケーキ、食べるかい?」

「そうですね、持ってきます」

野菜室に入れておいたケーキと人数分のフォークを用意し、再び机を囲む。レイと俺の分は決まっているが、残り三つの分配はアキとネザメ次第だ。

「仲良くなる好機ですよ、ネザメ様。ケーキを選ばせてあげましょう」

「う、うん……秋風くん、ケーキ、好きな物を選びなさい」

三つ入った箱をアキに見せると、彼は少し戸惑った後シンプルなショートケーキを選んだ。

「……なるほど。ショートケーキ、原点にして頂点、シンプル・イズ・ベスト。白いクリームと赤い果実は秋風くんを表しているようにも見える。ドレスのフリルのようなホイップクリームのデコレーション、他のケーキに比べて控えめなそれはまるで淑女の──」

「ネザメ様はどちらになさいますか!」

「モンブラン」

ネザメにモンブランを渡した年積は抹茶ケーキを自分の前に置いた。俺はフォークを持つ前にネザメ達に礼を言い、レイも俺にならった。

「アキ、このケーキ、ネザメさん……紅葉さんが買うしてくれたんだ。何か言うすることがあるだろう?」

「もみじー……?」

「あっ、あぁ、君の喜ぶ顔が見たかったんだ。仲良くなりたいんだよ……その、ごめんね、緊張してしまって、時々無視していたと思う……許して欲しい、どうか僕に心を開いて欲しいな」

アキが年積をそうそうに受け入れたのに反してネザメを未だに警戒しているのは、身長で脅威度を測っているからだろうか、それとも視姦されているせいだろうか。

《……なんだ、そんなに嫌なヤツじゃねぇんだな。いや、俺も悪かったよ、ケーキありがとうな》

「あ……! すぱしーばくらいは分かるよ、ふふ……お礼を言ってくれたんだね。あぁ、拙い日本語の幼い危うさ、不完全ゆえの美しさも素晴らしいけれど、故郷の言葉で話す君もいいね」

「もみ、じー……ありがとー、です!」

日本語でないと伝わらないと思ったのか、アキは礼を言い直した。

「……っ!」

ネザメが返事が出来なくなったのは言うまでもないだろう。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...