冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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選挙結果

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六時間目の授業を潰して行われた選挙結果の発表。昼休みに事前に聞いていた俺にとっては退屈な時間だ。

「皆様の期待に応えられるよう──」

生徒会長に選ばれたネザメが舞台の上で話している。当選後の演説も事前に用意しておくものなのだろうか、落選した人は虚しいだろうな……それとも誰でも同じことを言わされるのかな? 後でネザメに聞いてみようかな。



選挙結果の発表が終わり、一クラスずつ順番に教室に帰っていく。選挙管理委員は舞台裏に集まって「お疲れ様」と言い合った。

(美少年成分不足でそ……)

さっさと帰りたいなと思いつつ、キャットウォークへ上がる階段に行くための扉の前に立って選挙管理委員長の話を聞いていると、背後の扉が開いて腕を掴まれた。

「……っ!?」

俺の腕を掴んだ男は俺を扉の中へ引っ張り込むと扉を閉め、唇に人差し指を当てて静かにするよう声なく伝えた。

「当選したよ、鳴雷くん」

「……おめでとうございます、ネザメさん」

「ありがとう。僕の演説どうだったかな? 見直してくれたかい?」

「素晴らしいものだったと思います。確かに、あんな演説が出来るなら選挙活動なんて必要なかっただろうなとも」

これは本心だ。ネザメの演説は素晴らしいものだった。数多くのアニメやゲームで演説シーンを見てきた俺が言うのだから間違いない。ネザメにはカリスマ性がある。

「見直してくれたと考えていいのかな?」

「……まぁ、そうですね。でも」

言葉の続きを待たずしてネザメは俺の腰に腕を回し、もう片方の手で頬をするりと撫でた。

「僕のものになる気になっただろう?」

「俺、彼氏居るんですよね」

流石のネザメも驚くかと思っていたが、彼は余裕の笑みを崩さなかった。見事なポーカーフェイスだ、感情が全く読めない。真顔よりも不気味だ。

「……今、九人です」

「へぇ……? 何人か侍らせているんじゃないかとは思っていたけれど、予想の二倍だよ。これは驚いた」

驚いたなんて口だけだ、彼はくすくすと笑っている。

「素直で真面目で可愛い君がどんな風に九人もの恋人と過ごしているのかは気になるところだけれど、今は君が僕のものになるのかどうかの話をしているんだ」

「こう言えばネザメさんの気持ちが変わらないかと思ったんですが……」

「変わらないねぇ。君がどうしてそこまで渋るのか分からないな、そんなに僕は君の好みから外れているのかい?」

ドストライクです、と正直に言おうかな。ハーレムを受け入れてくれるようだし、付き合えそうな今恋愛的な駆け引きをする必要はないだろう。主導権争いは付き合ってから行うとして──と考えて「いいえ」と答えたその時、扉が乱暴に開け放たれた。

「見つけた! ネザメ様、こんな埃っぽいところに居てはいけません!」

年積だ。選挙管理委員会の者はもう各々の教室に戻ったらしく、扉の外には彼以外誰も居ない。

「ん……? 鳴雷一年生、何をしている」

「えっ、ぁ、えっと」

「このような暗がりで! ネザメ様と二人で! 何をしていたかと聞いているんだ! いや、ネザメ様に何をする気だった! このケダモノ!」

「は……!? ちょ、ちょっと誤解です! 俺はネザメさんに引っ張られてここに!」

150センチもないだろう低身長の年積に丸っこい猫のようなツリ目で睨まれても怖くない。小型犬にキャンキャン吠えられているような気分だ。

(うぅ~年積たんも攻略したいのにぃ。嫌われちゃってますな、どうしたものか……うぅむ、こういう露払いキャラってBLよりGLに多い気がするんですが、男の子でも居るもんなんですなぁ)

何を言っても年積の怒りは収まらないだろう。刺激しないよう努めるので精一杯だ。

「少し笑いかけられたからと勘違いする貴様のような輩からネザメ様を守るのが自分の役目だ! 排除させてもらうぞ鳴雷一年生!」

「はぁ……ミフユ、やめなさい。彼の言う通り僕が彼をここに引っ張ったんだよ」

「このような輩に情けなど無用ですネザメ様!」

「黙りなさいミフユ、僕の言うことが聞けないのかい?」

「今回ばかりは聞けません! ネザメ様の身に危険が……!?」

年積が喚き始めるとネザメはポケットに手を入れ、年積を睨んだ。数秒後年積は口を押さえて顔を真っ赤にし、俯くようになった。

「……っ、く……ぅんっ……ネザメ、さまぁっ」

「黙りなさいと言っただろう? 悪かったね鳴雷くん、ミフユは少し思い込みが激しいところがあって……」

「い、いえ」

年積の様子が気になる。真っ赤になって俯いて肩を震わせて──まるでバイブを挿入したまま外出させた時のリュウだ。

「それで、えぇと……何を聞いていたんだったかな。いや、質問はもう必要ないかな。鳴雷くん、美しい君の全てを知りたい。僕のものになりなさい」

「……あなたのものになった場合、俺の彼氏達は」

「さぁ、跪いて僕にキスを」

ネザメは右手を突き出して微笑む。ハーレムに理解はあるようだが、許容してくれるのか分からない。俺だけを引き抜こうとしているようにすら感じる。

「……っ、ね、ざめ……様っ、何を……!」

もしそうなら挑戦と受け取ろう。恋人になる前の駆け引きでどうにかするのではなく、恋人としか出来ない行為でネザメを堕としてしまおう。俺がネザメのものになるのではなく、ネザメが俺のものになるのだと理解させてやろう。

(いざ、分からセックスですな!)

俺はその場に跪いてネザメの手を取り、すべすべの手の甲に唇を触れさせた。

「…………ふふふ」

ネザメは左手で俺の頭を撫で、瞳を愉悦に歪めている。

「鳴雷くん、明日の昼休みに生徒会長室へおいで」

「……明日は先約があります」

「僕の言うことが聞けないのかい?」

「聞きません、先約があります」

余裕の笑みが崩れ、眉間に皺が寄る。しかしネザメはすぐに自らの手で眉間の皺を伸ばし、首を軽く横に振った。

「……誰とのどんな先約なのか、彼氏の僕に教えてくれるね?」

「ええ、もちろん。シュカとのセックスです。ほぼ毎日昼休みに抱いていたんですが、最近は選挙活動で忙しくて時間がなくて……久しぶりなので、ズラせません」

「なるほどねぇ……なら生徒会長室を貸すよ。僕はひとまず見ているだけでいい。昼休みに人が近付くことはないし、鍵がかかる、ソファもあるよ」

「……シュカと相談した上で決めます」

「そう、なら遠くに居ても話せるようになっておかないとね。今持っているかい?」

そう言いながらネザメはポケットからスマホを取り出した。

「はい」

俺もスマホを取り出して連絡先交換を始める。スマホを操作しながら横目で年積の様子を見る、身を屈めて何かに必死に耐えながら、涙目で俺を睨んでいる。

「あの、年積さん大丈夫ですか?」

「そろそろ教室に戻らないとまずいんじゃないかな?」

「……そうですね」

ネザメの持つ異様な雰囲気は詮索を許さない。いずれ明かしてくれることを願い、今日のところは彼氏が増えたことを喜ぼう。
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