冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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幸せになっていいの?

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背中の古い傷跡を見て彼が母親から虐待を受けていたのではと不安になり、尋ねた。しかしセイカは返事をしない。

「違う……のか? 不快に思ったなら謝るよ。お母さん疑ってごめん。ただ心配で……心配…………違う、心配じゃない、心配もあるけど、心配だけじゃない」

「…………さっさとヤれよ。ヤりたいんだろ」

背中に手を這わせてからベッドに手をついて上体を倒してセイカに覆い被さり、セイカの耳の真後ろで囁く。

「俺のセイカにこんな酷いことしたヤツ許せない、すごく憎い……教えてくれよセイカ、誰にやられたんだよこんなこと、俺は誰を憎めばいいんだ」

「……ヤらないなら服着せてくれ。寒い」

俺はセイカを抱き起こして服を着せ、膝に乗せて強く抱き締めた。

「教えろ、セイカ」

「…………」

「セイカ」

少しだけ声を低くして名前を呼ぶ。セイカは居心地悪そうにするだけで無言のままだ。

「教えてくれよ、なぁ、セイカ」

「……………………お前には関係ない」

「……は? セイカは俺の彼氏だろ? 俺の彼氏に怪我させたヤツが俺に関係ない訳ないだろ。カンナのはどうしようもないよ、逮捕されてるっぽいから復讐のしようがない。でもセイカのは違う、そいつは何の制裁も受けてないだろ」

勢い余ってカンナの話をしてしまった。カッとなるのはよくない癖だ、治さなければ……と思っているとセイカが何かを鼻で笑った。

「せっかく産んだ子供がこんなんになっちまったのは十分制裁だろ」

「…………やっぱりお母さんなんだな」

「……お母さんにはほむらだけでいいのに、俺が生きてる為の金まで払わなきゃいけないんだ。可哀想なもんだろ」

全力で否定したい考え方だ。

「なぁ、セイカ……退院したら俺のとこに来いよ。お母さんがいらないって言うならいいじゃん俺が全部もらっても。今までセイカに酷いことしたんだから治療費とか義足代とかは慰謝料としてもらってさぁ……家出ろよセイカ、いいじゃんどうせ後三年足らずで自立させられるんだろうしさぁ、ちょっと早くなってもいいじゃん……」

「え……ちょ、ちょっと待てよ、俺のとこ来いって何お前、え……? ど、どういう……お前の家に、居ていいってこと?」

「うん、早めの同棲。進学とか就職とかで家借りたりするまでは俺の部屋で我慢してくれ、それなりに広いし不便はないと思う」

「………………お前、そんなに……そんなに、俺のこと、好きなの。同棲……? 進学とか就職とかって……何、何っ、なんなのお前っ、俺とそんな何年も一緒に居る気なのかよっ」

「え……? セイカは俺とずっと一緒に居てくれる気じゃなかったのか? 元々卒業したらプロポーズする気でいたのに……セイカは俺のことそこまで好きじゃない?」

セイカは首を横に振った。それはそれは激しく、目眩を起こさないか心配になるくらいに。

「すきっ……だいすきっ、だいすきぃ……」

「……よかった。嬉しい」

「鳴雷っ、鳴雷ぃ……いい、の? 俺っ、俺……死ななくて、いいの? 生きてるだけで迷惑なのにっ、産まれてきちゃダメだったのに、みんなそう言ったのにっ、鳴雷のこと好きで……鳴雷に好かれてて、本当に、いいの?」

「いいよ、セイカ……いいんだよ、幸せになろう。迷惑なんかじゃない、ダメなんかじゃない、そう思わせてみせるから俺と一緒に生きてくれ」

「………ぅんっ」

強く抱き締め合い、どちらともなく顔が見たくなって少し離れる。セイカの瞳が輝いているように見えたのは涙で潤んでいたからという理由だけではないはずだ。



将来を約束し合って安心したのか、セイカはそれ以降泣くことも怒ることもなく、微笑んで俺と話してくれた。

「明日、ハルとリュウ……俺の彼氏の中でも明るい方の子が来たいって言ってるんだけど」

「うん」

「……いいかな?」

「ん? うん。なんか気ぃ付けとくこととかあるか?」

「え、うーん……ハルは男性恐怖症で、触られるのが苦手。リュウは特には……あ、リュウの二人称は自分だ、しばらく慣れなかったんだよなこれ」

「ふーん……楽しみ」

目に見えて機嫌がいい。ぐすぐす泣いているセイカも可愛けれど、ニコニコ笑っているセイカも可愛いし、相手が楽だ。

「……みんないい子だからさ、仲良くなれるよ。アキとそうなったみたいに」

「うん……あ、日曜はアキ来ないのか?」

「うーん……誘ってみようか?」

「あぁ、初対面二人はちょっと緊張するし、知ってる顔欲しいよ」

「分かった、誘っておく」

これからはずっとこんな調子でいてくれるだろうか? 少なくとも俺が帰るまでは上機嫌だった、明日に期待と不安が募る。




日曜日、アキを連れて駅へ向かうとハルとリュウが俺を待っていた。

「あっ、みっつーん!」

「お、アキくんも居るやん」

「…………よぉ、男前」

何故かレイの元カレも居た。ハルとリュウの身長はは170前後なのに、二人の頭は彼の肩にも届かない。相変わらず距離感をバグらせるヤツだ。

「おはよう……えっと、お久しぶりです。ど、どうして……その、あなた、が」

「待ち合わせしてんねんて。俺らもやん。お互い暇やからなんか話しとこー言うてな、なぁかーくん」

「…………あぁ」

かーくんだのくーちゃんだのカ行のあだ名で呼ばれやがって。そんな可愛い存在じゃないだろ二メートル越えの大男だぞ。

「あ、あぁ、そう……」

「俺らの待ち人もう来たから行くな。ほななかーくん」

リュウとハルを連れて四人でホームへと出た瞬間、ハルが俺の腕を強く抱き締めた。

「ぅおっ……どうしたハル」

「聞いてよみっつーん! 怖かった! 俺めっっちゃ怖かったぁ! ここ来たらねあのデカいのが居てねっ、俺ヒュってなってさぁ! 離れとこって思ってたらりゅーが話しかけてさぁ! もうマジふざけんなって感じぃ!」

「リュウから話しかけてたのか……」

「見た顔やったから。このめん探しとるだけでそない無闇矢鱈に人殴るようなもんとちゃうし、このめんのこと黙っとったらええだけやろ?」

「うーん……でも怖い人なのは間違いないし、金髪フェチらしいからリュウはあんまり近付かない方がいいと思うんだよなぁ」

今回は危なっかしい事案だったが、リュウのこのコミュニケーション能力の高さはやはり素晴らしい。セイカとの関係もきっと良好なものになるだろう。
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