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折檻の傷は無能の証だった

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やっぱりヤりたいんじゃないかと笑うセイカに誘ったのはお前の方だろと返しながら入院着を脱がす。

「明日から俺の服着てくれると思うと興奮するよ」

「ホントに持ってくる気かよ……んっ、いいって、ほぐさなくて……ローションなくても入るんだから」

「持ってくるしほぐす」

「ぅあっ……ぁ、んっ……いい、両方……しなくて、いいって」

「したいんだ、させろよ」

ゆるゆるの穴をローションを絡めた三本の指でくぱぁっと拡げ、セイカの顔が赤くなっていくのを楽しむ。確かに瞳は濡れていくのに、真っ黒な目は乾き切って光を宿さない。まだ愛が足りない、もっと愛を注いで満たしてやれば、きっと綺麗に輝くはずだ。

「セイカ、セイカ……あぁ、可愛い……セイカの目、大好き。目力すごいよお前、最高。な、もっと俺見て、俺だけ見て」

囁きながら後孔を掻き回し、快感のあまり目を閉じたり首を振って視線を俺から外してしまうセイカを言外に責めた。

「……ぅあっ! はぁっ、はぁっ……気は、済んだか。指なんかいくら突っ込んでたって変わんねぇのに……ほんと、物好きだよな。俺なんかより気持ちいい穴知ってるくせに…………なぁ、鳴雷、今日は俺が上がいい」

ちゅうっと首筋に吸い付きながらの可愛らしいおねだりを断れる訳もなく、俺はベッドに寝転がってセイカを腹に乗せた。

「一応騎乗位も経験あるから……出せないってことはないと思う。でも微妙だったらいつでもひっくり返してくれ。多分そんなに上手くない、足ないし……」

せめて膝まであれば両足で膝立ちが出来たのに、なんてぼやきながらセイカは膝の上で切断された左足の下に毛布を丸めて詰め、右足とベッドの柵を掴んだ左手で身体を持ち上げ、俺の陰茎の上にゆっくりと腰を下ろした。

「……っ、あ、ぁああっ……! ぁ、ぐっ……ふぅっ、ふぅ……なる、かみっ……重く、ないか? 気持ちいい……?」

「セイカは軽いよ。景色も入れ心地も最高」

「よかった……今、動くから…………ぁ、んっ、んんっ、んぁっ、あっ」

両足が揃っていなければ腰を上下に揺らすのは難しいのだろう。セイカは上体を少し倒して身体を前後に揺らし、俺の腹に陰嚢を押し付けながら緩い穴で俺の陰茎を扱いた。

(正常位だとそうでもないんですが……騎乗位だと腕がないのめっちゃ目立ちますな)

セイカが俺の首に抱きつきたがるから正常位の時はかなり密着していて、彼の腕はよく見えていない。けれど今のような騎乗位だと上半身が離れるから、肘から先のない右腕がしっかり見えるし目が向いてしまう。

「んぁっ、ぁんっ! んんっ……! 奥っ、ずんって……ぁ、ゔっ! ふぅっ、ん、んんぅっ……!」

あまり大声では言えないが、俺は欠損萌えもある。セイカの手足を見ていると胸がきゅうっと締め付けられるような心地いい感覚がある。

「……っ、セイカ……もう、イきそう」

「んっ、出してっ、中に……あっ、ぅ……ぁああっ! んっ、ん……は、はは……鳴雷の、ビクビクしてる……なぁ、鳴雷、鳴雷ぃ……どうだった? よかった? 俺、よかった?」

「そんな不安そうな顔するなよ……よかったに決まってるだろ。もっかいしたいな、体位変えていい?」

「うん、どうする? 鳴雷の好きなように……」

騎乗位をしたい欲は一回で収まったらしく、セイカはあっさりと俺に上を譲った。

「んー、じゃあバックで」

身体を気遣って正常位でゆっくり丁寧に抱いてきたが、自分から跨るくらいに元気になってきたのなら俺も他の体位を試させてもらおう。

「バック……って、後背位?」

「そう、動物の交尾みたいでいいだろ? 顔見えないのはちょっと残念だけどな。ほら、俺が支えるから四つん這いになって」

「ちょ、ちょっと待って、後ろはっ……」

セイカをうつ伏せにひっくり返した俺は、今初めて彼の背中を見た。見なかったことに特に理由はなかった、怪我人をあまりコロコロひっくり返すのはよくないだろうと考えていたくらいのものだ。だが見せなかったことにはそれなりの理由があったようだ。

「萎える、だろ? どうしてもこの体位がいいなら服着せろよ」

「……誰」

背中全体の色がおかしい。見比べなければ分からないほど微かな差だが、腹などとは皮膚の色が違う。色が違う部分は敏感らしく、触れるとビクンと身体を大きく跳ねさせた。

「誰が、こんなこと」

確証はないが、多分火傷だ。カンナほど酷くはないから薬品などではないのだろう。これは誰かの悪意ではなく事故かもしれない、鍋をひっくり返したとかそういうのかも……でも、その上についた傷は違う。明らかに誰かが繰り返し叩いた跡だ。

「イジメっ子か? それとも変態親父にっ……」

容疑者二種類を挙げている途中、不意に点と点が繋がった感覚があった。中学時代の記憶が鮮明に思い出された、まだセイカが仲良くしてくれていた頃のことだ。

「……まさか」

セイカから「躾は?」「どこを殴られてる?」「アザは?」なんて聞かれたことがあった。まるで俺が母に虐待されていると決めつけたような質問に腹が立ったからよく覚えている。

「正直に答えてくれ、セイカ……このちょっと古めの傷……やったの」

あの質問は母から俺への虐待を疑ったものではなかったのかもしれない。セイカにとって母親が子供を痛めつけるのは常識だったのかもしれない、怪我をしていない俺を不思議に思っての単純な疑問だったのかもしれない。

「……お母さんなのか?」

この予想が当たっていたら、俺は顔も知らない女に殺意を抱くことになる。
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