上 下
104 / 2,017

餌付けしたクマに芸を仕込む

しおりを挟む
ウサギを抱えて部屋に戻ったカンナの後を追った。既にウサギは上機嫌に戻ったようで、ケージの中で大人しくしている。

「ぁ……み、くん」

にっこりと自然な笑顔の口元が愛らしい。勃った陰茎のことはいつ切り出そうか、あまり頻繁に性的なことをさせては「性欲処理のために付き合ってるんだろ!」みたいなことになりかねない。好きだからこそ性欲が湧き出てくるというのに、人間はどうして清さこそ真実だと思ってしまうのだろう、人間の本質なんて醜悪だろうに。

(まぁわたくしの彼氏たちは身も心もびゅーてぃふぉーぼーい! 君だけを見つめていますぞ!)

とりあえずウサギのことでも話すかな、もう一度ウサギの様子を見て話のネタを──

「み、くんっ……ごはん、とちゅ、だった……ごめん、ね? 食べよっ」

──得ようとしたが、カンナに手を引かれて部屋から連れ出された。カンナがこんなに積極的にぐいぐい手を引っ張るなんて初めてだ、素顔を見せたことで気が楽になったのだろうか。

「そういえば、クマさんにエサやりするんだったな」

昼食を温め直しているレンジの前で呟くとカンナは部屋着のフードを被り、クマ耳を目立たせた。

「…………が、ぉー」

顔を赤くしながら両手を顔の横に上げる、クマの爪を表現しているらしい手はただただ愛らしい。

「おっと、これはこれは……人里に降りてきた悪いクマさんだな? うーん……退治してやろうか!」

「が、がぉぉ……」

「いやいや、山にご飯がなくて大変なんだろうなぁ……ご飯を食べさせてあげようか」

「……! がぉ」

餌付けの宣言だけでクマが懐いた。なんちゃって。

(安易にクマに餌付けすると人間慣れして平気で人間に近寄ってくるようになり、最悪の場合殺人を犯して殺処分のコンボが決まりますので、人間のためにもクマのためにも野生のクマに餌付けしちゃいけませんぞ。クマが見たい方は動物園にでも行きましょうな)

と、誰に言ってるんだか分からない注意事項も述べてみたり。

「温まったな。さ、クマさん。あーん」

カンナの小さな口に入るだけの量をすくい、そっと入れる。艶やかな唇が伸び縮みする様は見ているだけで射精しそうな光景だったが、何とか耐えて自分の分も美味しく食べた。

「……みぃ、くん……ぼくも、あーん、したい」

「俺にか? もちろんいいぞ」

カンナは自分基準の量をすくって俺の口にそっと入れてくれる。

「ん、美味しい……前から美味かったけど、カンナに食べさせてもらった方が美味く感じるな」

「もぉっ……みぃくん」

それから俺達は一口足りとも自分では食べず、互いに食べさせ合って非常に長い時間をかけて昼食を終えた。

「ごちそうさま、美味かったよカンナ」

「おそ、つ……さま、した」

食後の挨拶を終えたら一緒に皿洗い、それも終わったら部屋でイチャイチャ。ずっと勃起している陰茎をそろそろ慰めてもらわないとまずい。

「さて、クマさん。餌付けされて人間慣れしたクマさんを山に帰すわけにはいかないぞ、他のクマさん連れてご飯ねだりに来られても困るしな」

「えっ……? ぁ、が、がぉー……」

カンナは両手を上げてクマのポーズを取る。どちらかと言うとアライグマの威嚇ポーズだが。

「人間慣れしたクマさんは人間が養わなきゃな。けど……ただのクマを飼うのも難しい、ちょっとした芸でも覚えてもらわないとな」

「がぉ……?」

カンナの私室に戻った俺達はウサギの見守る中予定通りイチャつく、ウサギは視力が低いそうなので無問題だ。ちょっと恥ずかしいけど。

「そうだな、素股でも覚えてくれたら喜んで飼うんだけどな」

「す、ま……た?」

「入れないセックスみたいなもんだ、してくれるか? カンナ」

カンナを抱き寄せて彼の腹に股間を押し付け、昼食の前から硬いままだったそれを主張する。

「……! す、る…………おしえ、て? カンナクマの、飼い主……さん」

「可愛っ……!?」

危ない危ない、つい「可愛いですぞカンナたそ~」とか言いそうになった。声のトーンは普段と違ってしまったが、まだ誤魔化せるはずだ。

「カンナ、あのな……今のは」

「うれ、し……」

「えっ?」

「なんか、つい……言っちゃ、た……みたい、だった」

「あぁ……うん、そうなんだ。つい心の声が。普段はもうちょいトーンとか整えてるんだけどな。ごめん、気持ち悪かっただろ」

カンナは首を横に振り、前髪を少しだけめくって右目を見せた。カミアとそっくりな美しい瞳だが、目の周りは焼けただれ、まつ毛も眉毛も一本も生えていない。

「こ、な……化け物、つい……言っちゃ、くらい……ほんとに、可愛く……思っ、て……くれて」

キラキラと潤む大きな瞳が輝きを増す、涙を浮かべているのだ。

「みぃ、く……だい、すき。みぃくん……が、言……なら、なんでも……」

「……ありがとうな、カンナ。大好きだよ、一生大切にする……愛してる」

華奢な身体を抱き締める俺の頭では「なんでもって今言いましたぞ!」「なんでも! なんでも!」と大騒ぎだ。

「それ、で……素股、なに?」

「ぁ、あぁ、すぐ教えるよ」

俺はカンナを抱き締める手を尻と内腿に向かわせ、すりすりと撫でながら素股の説明を開始した。
しおりを挟む
感想 450

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

就職するところがない俺は男用のアダルトグッズの会社に就職しました

柊香
BL
倒産で職を失った俺はアダルトグッズ開発会社に就職!? しかも男用!? 好条件だから仕方なく入った会社だが慣れるとだんだん良くなってきて… 二作目です!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

処理中です...