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お昼ご飯 (〃)

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今日は童貞卒業の日、そう思っていたが直前で留年を言い渡された。

「……そろそろ腹減ったな」

何発も中出ししてやろうと思っていたが、結局イラマチオ一回だけ。リュウは何度もイかせてやったから満足しているだろうけど、俺はまだまだ。しかし、性欲よりも食欲の方が強い。

「飯用意しとるん? 外行く?」

自室を出てキッチンへ向かいながら会話する。俺は母によるカロリー制限を受けているので外食なんて出来ない。

「材料買ってある」

「……水月みつきって料理とかするん?」

「いや、料理って感じのはあんまり。今日の昼飯は……」

冷蔵庫から麺、豚肉、キャベツ、タマネギ、ピーマン、ニンジンを出して机に並べる。

「焼きそばだ!」

「ほーん、ええやん」

ダイエット食ではないと思っただろう? 俺は今は太っていないので、太らないように摂取カロリーと消費カロリーを計算していればそれでいいのだ。なら外食してもいいと思うのだが、母は厳しい。自炊の方が安いからかもしれない。

「せっかくだしさ、ホットプレート出して楽しくやろうと思って」

「……二人で? まぁええけど」

友達との楽しいパーティを夢見ていた期間が長すぎて先走ってしまった。確かに二人だとそこまで盛り上がらないかもしれない。

「はよやろ、腹減ったわ。ホットプレートどこなん?」

「ここ」

冷蔵庫と食器棚の隙間に押し込んでいたホットプレートを引っ張り出す。ダンボール箱から出し、組み立てていく。

「ん……? これたこ焼きのんないやん」

「鉄板は一枚だけだよ、そんな何種類もあるような高級品じゃない」

「たこ焼き器ないのん?」

リュウは隙間を覗き込んでいる。

「普通の家にはないだろ」

雑談しつつホットプレートの準備を終え、肉を焼き、小さく切った野菜達をぶち込む。

「これほかしとくで」

「え?」

「なにぃ、あかんの? なんか使うん?」

リュウが持っているのは肉が入っていたカラのパックと野菜が入っていたビニール、どちらもゴミだ。

「えっと……」

「ほかしたあかんの?」

やばい、方言勉強し忘れてた。

「…………いいよ!」

「……なんやねんな」

一か八かでOKを出してみるとリュウはゴミをゴミ箱に捨てた。なるほど、捨てていいか聞いてたのか。

「包丁なおしとくで」

「へ? 包丁壊れてた?」

「…………は?」

「……治すって」

「…………包丁、元の場所に戻しときますわ」

気まずくなってきたな、早く焼きそば焼けないかな。

「そろそろええんちゃう?」

「んー、まだニンジンが硬い……」

「他のんもういけるやん、ニンジン後にしたらええやろ」

後でニンジンだけ食べるのか? まぁいいか。俺もソースの匂いに食欲を刺激されてもう限界だ。

「ん、焼き加減いい感じ……」

ちょっと味が薄いな。

「味薄いわ。ソース足してええ?」

「粉ソースもうないけど……それトンカツ用だぞ。え、いける? どう……? お、いい顔」

リュウを真似て俺もトンカツ用ソースを混ぜて食べた、ちょうどいい濃さだ。

「美味なったわ。せや、昨日自分に時雨しぐれ送れ言われたやん」

「あぁ、大丈夫だったか?」

「あいつほんま何も喋らんわ。こっちが気ぃ使って話しかけたってんのにガン無視」

「はは……ごめんな」

カンナはリュウを怖がっていたんだろうな。その時の様子が目に浮かぶ。

「自分、時雨が本命なん?」

思いがけない質問に箸が止まる。

「そんなポケーっとせんで答えてや、時雨が俺らの関係知っとるかでどうするか変わるやん」

「……どうするか?」

「時雨の前では他人らしくするかどうかっちゅーこっちゃ。時雨が知っとるんやったら面倒ないんやけど」

「カンナは……知らない。でも、本命って感じでもない。平等だよ、タイミングを見て話すつもりだ」

リュウは露骨に嫌そうな顔をする。

(あぁぁまずいでそまずいでそ~、みんな可愛いから一人に絞るとか無理ですぞ! ハーレムがいいんですぞぉ~! そんな嫌そうな顔しないで欲しいでそ!)

「……アホちゃうん自分」

(怒らないでくだされ~! あっでも怒った顔も可愛いですな。浮気ではなく皆様本気で可愛いと思って手ぇ出そうとしてるのですぞ!)

「そこは俺なんかオモチャや言うてくれなあかんやんかアホ! 今日の初めの頃調子よかった思たんに、結局いつも通りのポンコツやないかい。はぁーっ、冷めるわー」

(………………ふざけんなこのドMぅ!)

心の中で罵倒しながらも俺はホッとしていた。少なくともリュウはハーレムを作り上げたとしても崩壊の一因にはならなさそうだ。

「あ、あぁ……悪かったよ。でも……お前のことは本気で好きで、愛してるんだ。それだけは忘れないでくれ」

「…………アホ、そんなん口に出すもんとちゃうわ」

ふいっと顔を背けられてしまった。

「でも態度で示しても嫌がるんだろ? リュウは」

「当たり前や。言うとるやろ、サンドバッグ兼オナホがええて」

「……善処するよ」

そんな扱いしたくない。カンナとのように甘くじゃれ合っていたい。けれどリュウが一番喜ぶことをしてあげたいから、サディストの一面が自分の中に出来上がることを祈るしかないな。
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