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求めてないタイプがグイグイくる (〃)
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苦手なタイプだと確定した霞染から目を逸らすと、彼の方からやってきた。
「お、話題のイケメン委員長じゃん。他の奴らはお断りだけどアンタとは仲良くしたいなー」
「…………っ!?」
自分が超絶美形になったことを一瞬忘れていた、中学の頃とは違うのだ。もう邪険にされたりしない、向こうから好感を持ってくれるのだ。
(でも怖い! 名門校のくせしてなんでこんな頭悪そうな奴入れてるんです!?)
ここでキョドったら舐められる。こういう奴には舐められたら終わりだ。
「あぁ、仲良くしような。霞染」
無理矢理手を握ってやる。コイツは攻略したくないし、クラスメイトとしてしか見てませんよ感を出して脈ナシアピールをしよう。顔は良いからもったいないけどギャル系は怖い。
「……よろしくぅー、てかハルでいいよー?」
距離を詰めてくるな、俺は距離を取りたいんだ。
「…………みなさんもチームが決まったようですね、試合をお願いしてきます」
鳥待が別のチームに試合をしようと言いに行った。
「堅物って感じー、俺ああいうの苦手かも。ぁ、委員長って下の名前なんだっけ?」
「……おい、ベタベタし過ぎちゃうか」
「えっやだ何こわーい、委員長守ってー?」
動きが完全にムカつくタイプの女子じゃねぇか何なんだコイツ。
「委員長、右側のコートで決まりました。行きましょう」
「あぁ、ありがとう……霞染? ちょっと離れてくれないか、歩きにくい」
「えー、じゃあハルって呼んでくれたら考えたげる」
「…………ハル、離れてくれ」
「り」
霞染、改めハル……やっぱ霞染でいいや。
霞染はようやく俺から少し離れてくれた。試合開始のホイッスルが鳴り、セッターを任された俺は自チームの方へボールを飛ばした。
「ナイッスー、っしゃ受け取れメガネぇっ!」
「鳥待です! 時雨さんパス!」
「ぇ、ぁ、あっ、み、みーくんっ……!」
まずリュウがボールを取り、鳥待へパス。鳥待がカンナへ投げ、慌てたカンナはゴールの方へ走っていた俺に向かって投げる。しかし腕力が足りず、敵チームに奪われてしまった。
「ぁ……! ご、め……」
「あっクソ、止めろメガネ!」
「鳥待です……つってんだろ金髪っ!」
見事に敵チームから奪った鳥待がリュウにボールを投げる。それまで上品だった鳥待のドスの効いた声に驚いたのか、リュウはボールを持ったまま呆然としている。
「投げないならボールちょーだーい。えいシュート……やーん入んない、委員長あとよろしくー」
リュウからボールを掠めとった霞染がおそらく知らずにスリーポイントシュートを狙い、失敗。俺はそのボールを取り、シュートの打ち方がよく分からなかったのでゴールに直接叩き込んだ。
「ダンク……! 流石です委員長!」
「委員長やっるぅー」
痩せたおかげか体が軽い、ゴールに一瞬ぶら下がれるなんて自分でも驚きだ。バスケ楽しいかも。
「ナイスリバウンド! 時雨パス!」
ゴール下にぼーっと立っていたカンナがボールをキャッチ。声のした方へ向かって投げる。
「っしゃナイス! 次は俺……無理! 水月パス!」
敵チームに補足されて素早く判断したリュウは下手投げの低いパスを披露したが、低過ぎて俺は取れなかった。
「わ……」
俺の足に当たって失速したボールをカンナが拾う。
「カンナ! シュート!」
「へっ? む、むり……」
「失敗したら俺が取るから頑張れ!」
カンナのシュートはゴールのはるか下に弧を描く、やはり腕力が足りなかったが、俺は宣言通りボールを取った。ゴールの真下からは無理だ、誰かに渡さなければ。
「……っ、リュウ決めろ!」
「ナイス! 今度こそやったるわ!」
いい位置にいたリュウにパス。
「もう計算済みや、この位置から、この角度で、こんくらいの力で……っしゃ入ったぁ!」
見事にゴール、そして俺がしっかりリバウンド──リバウンド、嫌な言葉だな。
「鳥待! 頼む!」
「承知しました」
俺は背が高くリバウンドに有利だ、専門になってもいいかもな。何をしていいか分からずオタオタしているカンナが近くで見れるし。
「……どけっ!」
ボールを取りに来た敵チームをドスの効いた声で牽制し、鳥待は見事にシュートを決めた。
「やりました!」
「さっきの何」
「……何かありました?」
にっこり微笑む鳥待には先程の恐ろしさの欠片もない。それが逆に気になって俺はリバウンドに失敗した。
「ぁ、ゃ、やめ……」
俺が取りこぼしたボールを拾ったカンナが敵チームに群がられる。なんかエロいな、もうちょい見たい。
「足の間通せ時雨!」
リュウの指示通りカンナが敵チーム達の足の隙間からボールを転がす。それを拾ったリュウの目線の先は、床に貼られたテープを見ている霞染だ。
「赤メッシュ! 行くで!」
「はーい」
「取ったら投げろ!」
「よっと……わ、入った。すごーい、こっから投げたら入るんだ、アンタの言った通りじゃん」
どうやらリュウが待機を命じていたようだ。
「自分の投げ方覚えたからな、あとは入る位置考えたええだけや」
「ふーん、すごーい……ちょっとキモい」
「なんやと、失礼なやっちゃな」
意外にもリュウは指示が上手い、まさかそれも数学の……? いやいや、まさか。きっと中学ではバスケ部だったとかそんなところだろう。
「……終了ー!」
ホイッスルが鳴り、試合が終わる。俺達の勝利だ。
「お、話題のイケメン委員長じゃん。他の奴らはお断りだけどアンタとは仲良くしたいなー」
「…………っ!?」
自分が超絶美形になったことを一瞬忘れていた、中学の頃とは違うのだ。もう邪険にされたりしない、向こうから好感を持ってくれるのだ。
(でも怖い! 名門校のくせしてなんでこんな頭悪そうな奴入れてるんです!?)
ここでキョドったら舐められる。こういう奴には舐められたら終わりだ。
「あぁ、仲良くしような。霞染」
無理矢理手を握ってやる。コイツは攻略したくないし、クラスメイトとしてしか見てませんよ感を出して脈ナシアピールをしよう。顔は良いからもったいないけどギャル系は怖い。
「……よろしくぅー、てかハルでいいよー?」
距離を詰めてくるな、俺は距離を取りたいんだ。
「…………みなさんもチームが決まったようですね、試合をお願いしてきます」
鳥待が別のチームに試合をしようと言いに行った。
「堅物って感じー、俺ああいうの苦手かも。ぁ、委員長って下の名前なんだっけ?」
「……おい、ベタベタし過ぎちゃうか」
「えっやだ何こわーい、委員長守ってー?」
動きが完全にムカつくタイプの女子じゃねぇか何なんだコイツ。
「委員長、右側のコートで決まりました。行きましょう」
「あぁ、ありがとう……霞染? ちょっと離れてくれないか、歩きにくい」
「えー、じゃあハルって呼んでくれたら考えたげる」
「…………ハル、離れてくれ」
「り」
霞染、改めハル……やっぱ霞染でいいや。
霞染はようやく俺から少し離れてくれた。試合開始のホイッスルが鳴り、セッターを任された俺は自チームの方へボールを飛ばした。
「ナイッスー、っしゃ受け取れメガネぇっ!」
「鳥待です! 時雨さんパス!」
「ぇ、ぁ、あっ、み、みーくんっ……!」
まずリュウがボールを取り、鳥待へパス。鳥待がカンナへ投げ、慌てたカンナはゴールの方へ走っていた俺に向かって投げる。しかし腕力が足りず、敵チームに奪われてしまった。
「ぁ……! ご、め……」
「あっクソ、止めろメガネ!」
「鳥待です……つってんだろ金髪っ!」
見事に敵チームから奪った鳥待がリュウにボールを投げる。それまで上品だった鳥待のドスの効いた声に驚いたのか、リュウはボールを持ったまま呆然としている。
「投げないならボールちょーだーい。えいシュート……やーん入んない、委員長あとよろしくー」
リュウからボールを掠めとった霞染がおそらく知らずにスリーポイントシュートを狙い、失敗。俺はそのボールを取り、シュートの打ち方がよく分からなかったのでゴールに直接叩き込んだ。
「ダンク……! 流石です委員長!」
「委員長やっるぅー」
痩せたおかげか体が軽い、ゴールに一瞬ぶら下がれるなんて自分でも驚きだ。バスケ楽しいかも。
「ナイスリバウンド! 時雨パス!」
ゴール下にぼーっと立っていたカンナがボールをキャッチ。声のした方へ向かって投げる。
「っしゃナイス! 次は俺……無理! 水月パス!」
敵チームに補足されて素早く判断したリュウは下手投げの低いパスを披露したが、低過ぎて俺は取れなかった。
「わ……」
俺の足に当たって失速したボールをカンナが拾う。
「カンナ! シュート!」
「へっ? む、むり……」
「失敗したら俺が取るから頑張れ!」
カンナのシュートはゴールのはるか下に弧を描く、やはり腕力が足りなかったが、俺は宣言通りボールを取った。ゴールの真下からは無理だ、誰かに渡さなければ。
「……っ、リュウ決めろ!」
「ナイス! 今度こそやったるわ!」
いい位置にいたリュウにパス。
「もう計算済みや、この位置から、この角度で、こんくらいの力で……っしゃ入ったぁ!」
見事にゴール、そして俺がしっかりリバウンド──リバウンド、嫌な言葉だな。
「鳥待! 頼む!」
「承知しました」
俺は背が高くリバウンドに有利だ、専門になってもいいかもな。何をしていいか分からずオタオタしているカンナが近くで見れるし。
「……どけっ!」
ボールを取りに来た敵チームをドスの効いた声で牽制し、鳥待は見事にシュートを決めた。
「やりました!」
「さっきの何」
「……何かありました?」
にっこり微笑む鳥待には先程の恐ろしさの欠片もない。それが逆に気になって俺はリバウンドに失敗した。
「ぁ、ゃ、やめ……」
俺が取りこぼしたボールを拾ったカンナが敵チームに群がられる。なんかエロいな、もうちょい見たい。
「足の間通せ時雨!」
リュウの指示通りカンナが敵チーム達の足の隙間からボールを転がす。それを拾ったリュウの目線の先は、床に貼られたテープを見ている霞染だ。
「赤メッシュ! 行くで!」
「はーい」
「取ったら投げろ!」
「よっと……わ、入った。すごーい、こっから投げたら入るんだ、アンタの言った通りじゃん」
どうやらリュウが待機を命じていたようだ。
「自分の投げ方覚えたからな、あとは入る位置考えたええだけや」
「ふーん、すごーい……ちょっとキモい」
「なんやと、失礼なやっちゃな」
意外にもリュウは指示が上手い、まさかそれも数学の……? いやいや、まさか。きっと中学ではバスケ部だったとかそんなところだろう。
「……終了ー!」
ホイッスルが鳴り、試合が終わる。俺達の勝利だ。
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