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中学時代の暗澹消えゆく (〃)
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体育が終わり、更衣室。チームを組んだ五人で固まってワイワイ騒ぐ。
「俺実は体育嫌いだったんだけど、今日のは何か楽しかったし好きになれるかも」
やっぱり脂肪の代わりに筋肉を身につけたのと仲の良いチームメイトが居るのがよかったんだろうな、二つとも以前は持っていなかったものだ。
「みなさんいい働きをされていましたし、案外いいチームだったのかもしれませんね」
「…………」
「自分えらい怖い声出しとったけどなんなんアレ」
「昔取った杵柄ですよ、気にしないでください」
切り傷が身体中にあり、左目を縦に裂いた傷跡もある。本人は山登りでつけた傷だと言っていたが……どうだろう。まぁいい、今は俺の背後で黙々と着替えているカンナが気になる。
「カンナ、カンナもよくやってたな。楽しかったよ」
「…………! ぼ、く……ぜんぜ、できて、な……」
「出来てたよ、なぁ?」
「ま、俺よりは働いてたんじゃな~い?」
霞染が俺の二の腕を掴んでカンナの顔を覗き込む。カンナは怯えたように顔を背けた。
「委員長の補助だとかはよく出来ていたと思いますよ。さ、次は現国です。早く教室に帰りましょう」
「あ、ねーねー委員長、お弁当一緒に食べよ~?」
「いいですね、この五人で食べましょうか」
「はぁ? アンタらはお呼びでないんだけど~」
「みんなで食べた方が美味しいよ。な?」
本当はカンナと二人きりでゆっくり癒されながら食べたかったけど。
「……ま、委員長がそー言うなら」
「決まりですね」
「俺なんも言ってへんねんけど」
これぞ青春って感じの楽しい騒ぎだ、俺にとっては新鮮でなかなか悪くない。好みの男子を食い漁って性春を送ろうと思っていたけれど、のんびり友達として過ごすのもいいな。
教室へ戻り、現代文の授業が開始。リュウは机に突っ伏して居眠り。霞染は鏡片手に……何してるんだろう、アレ。瞼を挟む……何アレ、拷問器具? アイツもドM?
なんだかんだあって昼休み、五人集まって中庭で食べることになった。中庭には机付きのベンチが幾つかあり、その中でも六人が座れる物を選んだ。
「えー外ぉー? 日焼けするじゃん最悪~」
「ほな自分帰れや」
「やーだ、俺は委員長と食べんの。アンタ嫌がってたんだから来なきゃよかったのに」
霞染を攻略する気はないのだが、なんか好かれてるな。あんまり嬉しくない。
「じゃ、俺委員長の隣ね~」
「…………!? ゃ……ぼ、く……」
「カンナ、右おいで」
「…………! ぅん……」
霞染を左隣に、カンナを右隣に、カワイイ系男子に挟まれまさに両手に花。
「ほな俺ここ……隣来んなやメガネ!」
「ここしか空いてないんですから仕方ないでしょう」
正面に鳥待、斜め右前にリュウ、顔のいい彼らを眺められて素晴らしい景色だ。
「……霞染、昼それだけで足りるのか?」
「十分っしょ。てかハルって呼んでってば~」
霞染の昼食はサラダチキン入りシーザーサラダ、茶碗一杯ほどの量だ。
「足りるならいいけど……リュウ、お前それ、何……?」
リュウはパックに詰めた何かを食べている、ソースの匂いがする。
「昨日のお好み焼きの残り」
詰め込んでいるせいで見た目が酷いな。後は……別に気になるところはないかな、カンナは平均より少なめで、鳥待が平均的な量だ。俺も平均。
「……ちょっと足りひん。購買行ってくるわ」
「いてらー。帰ってこなくていーよ」
「すぐ戻るわアホンダラ」
残り物では足りなかったようで、リュウは購買へ走った。それとほぼ同時に鳥待が食べ終わり、弁当箱を鞄に戻すと同時に二つ目の弁当箱を出した。
「……鳥待? お前、二個食べるのか?」
「三つですが」
三つ目の弁当箱が鞄から出てくる。全てそこそこな大きさだ、半透明の蓋から見る限りパンパンに詰まっている。眼鏡っ子のくせに大食いって……いや、眼鏡関係ないか。
「……ごちそうさま。そういえば霞染」
「ハルだよー。何?」
「現国の時、目……瞼? 何かしてたよな、あれ何?」
「まぶた……? あぁ、ビューラー?」
霞染は鞄の中から小さなポーチを取り出し、そこから俺が先程目撃した瞼挟み拷問器具を出した。
「見たことない? こーやってまつ毛挟んで、くりーんって」
どうやら挟むのは瞼ではなかったようだ。挟まれた長いまつ毛はくるんと上を向いている。
「へー、すごいな。目が大きく見えるよ」
「……化粧道具を学校に持ってくるのは関心しませんね」
「校則に載ってなかったもーん」
一応校則に目を通しているのか、流石にこの名門校に受かるだけのことはある──なんかいい匂いするな。
「あ、ポテトー! いいなー、一本ちょうだい」
「嫌や」
リュウは揚げたてのポテトを買って戻ってきた。いいなアレ……今度買おう、いや、ダメだ、母の厳しいカロリー制限を無視した買い食いなんてしたらまた太る。
「…………ごち、そ……さ、でし……た」
カンナがひっそりと手を合わせ、挨拶している。食べるのが遅いのも、誰にも聞こえなくてもごちそうさまを言う純朴さも可愛くて、肩を撫でる。
「…………!?」
驚いたのか勢いよく俺を見上げてきたので、微笑みを返してやる。
「…………っ!」
照れて俯いた。カンナは可愛いなぁ、本当に癒しだ。
「俺実は体育嫌いだったんだけど、今日のは何か楽しかったし好きになれるかも」
やっぱり脂肪の代わりに筋肉を身につけたのと仲の良いチームメイトが居るのがよかったんだろうな、二つとも以前は持っていなかったものだ。
「みなさんいい働きをされていましたし、案外いいチームだったのかもしれませんね」
「…………」
「自分えらい怖い声出しとったけどなんなんアレ」
「昔取った杵柄ですよ、気にしないでください」
切り傷が身体中にあり、左目を縦に裂いた傷跡もある。本人は山登りでつけた傷だと言っていたが……どうだろう。まぁいい、今は俺の背後で黙々と着替えているカンナが気になる。
「カンナ、カンナもよくやってたな。楽しかったよ」
「…………! ぼ、く……ぜんぜ、できて、な……」
「出来てたよ、なぁ?」
「ま、俺よりは働いてたんじゃな~い?」
霞染が俺の二の腕を掴んでカンナの顔を覗き込む。カンナは怯えたように顔を背けた。
「委員長の補助だとかはよく出来ていたと思いますよ。さ、次は現国です。早く教室に帰りましょう」
「あ、ねーねー委員長、お弁当一緒に食べよ~?」
「いいですね、この五人で食べましょうか」
「はぁ? アンタらはお呼びでないんだけど~」
「みんなで食べた方が美味しいよ。な?」
本当はカンナと二人きりでゆっくり癒されながら食べたかったけど。
「……ま、委員長がそー言うなら」
「決まりですね」
「俺なんも言ってへんねんけど」
これぞ青春って感じの楽しい騒ぎだ、俺にとっては新鮮でなかなか悪くない。好みの男子を食い漁って性春を送ろうと思っていたけれど、のんびり友達として過ごすのもいいな。
教室へ戻り、現代文の授業が開始。リュウは机に突っ伏して居眠り。霞染は鏡片手に……何してるんだろう、アレ。瞼を挟む……何アレ、拷問器具? アイツもドM?
なんだかんだあって昼休み、五人集まって中庭で食べることになった。中庭には机付きのベンチが幾つかあり、その中でも六人が座れる物を選んだ。
「えー外ぉー? 日焼けするじゃん最悪~」
「ほな自分帰れや」
「やーだ、俺は委員長と食べんの。アンタ嫌がってたんだから来なきゃよかったのに」
霞染を攻略する気はないのだが、なんか好かれてるな。あんまり嬉しくない。
「じゃ、俺委員長の隣ね~」
「…………!? ゃ……ぼ、く……」
「カンナ、右おいで」
「…………! ぅん……」
霞染を左隣に、カンナを右隣に、カワイイ系男子に挟まれまさに両手に花。
「ほな俺ここ……隣来んなやメガネ!」
「ここしか空いてないんですから仕方ないでしょう」
正面に鳥待、斜め右前にリュウ、顔のいい彼らを眺められて素晴らしい景色だ。
「……霞染、昼それだけで足りるのか?」
「十分っしょ。てかハルって呼んでってば~」
霞染の昼食はサラダチキン入りシーザーサラダ、茶碗一杯ほどの量だ。
「足りるならいいけど……リュウ、お前それ、何……?」
リュウはパックに詰めた何かを食べている、ソースの匂いがする。
「昨日のお好み焼きの残り」
詰め込んでいるせいで見た目が酷いな。後は……別に気になるところはないかな、カンナは平均より少なめで、鳥待が平均的な量だ。俺も平均。
「……ちょっと足りひん。購買行ってくるわ」
「いてらー。帰ってこなくていーよ」
「すぐ戻るわアホンダラ」
残り物では足りなかったようで、リュウは購買へ走った。それとほぼ同時に鳥待が食べ終わり、弁当箱を鞄に戻すと同時に二つ目の弁当箱を出した。
「……鳥待? お前、二個食べるのか?」
「三つですが」
三つ目の弁当箱が鞄から出てくる。全てそこそこな大きさだ、半透明の蓋から見る限りパンパンに詰まっている。眼鏡っ子のくせに大食いって……いや、眼鏡関係ないか。
「……ごちそうさま。そういえば霞染」
「ハルだよー。何?」
「現国の時、目……瞼? 何かしてたよな、あれ何?」
「まぶた……? あぁ、ビューラー?」
霞染は鞄の中から小さなポーチを取り出し、そこから俺が先程目撃した瞼挟み拷問器具を出した。
「見たことない? こーやってまつ毛挟んで、くりーんって」
どうやら挟むのは瞼ではなかったようだ。挟まれた長いまつ毛はくるんと上を向いている。
「へー、すごいな。目が大きく見えるよ」
「……化粧道具を学校に持ってくるのは関心しませんね」
「校則に載ってなかったもーん」
一応校則に目を通しているのか、流石にこの名門校に受かるだけのことはある──なんかいい匂いするな。
「あ、ポテトー! いいなー、一本ちょうだい」
「嫌や」
リュウは揚げたてのポテトを買って戻ってきた。いいなアレ……今度買おう、いや、ダメだ、母の厳しいカロリー制限を無視した買い食いなんてしたらまた太る。
「…………ごち、そ……さ、でし……た」
カンナがひっそりと手を合わせ、挨拶している。食べるのが遅いのも、誰にも聞こえなくてもごちそうさまを言う純朴さも可愛くて、肩を撫でる。
「…………!?」
驚いたのか勢いよく俺を見上げてきたので、微笑みを返してやる。
「…………っ!」
照れて俯いた。カンナは可愛いなぁ、本当に癒しだ。
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