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バスケットボール (水月+シュカ・カンナ・リュウ・ハル)

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体育館でのバスケットボール。初回の体育だからお遊び程度に、とは体育教師の気遣い。

(体育は嫌いですぞ。ボール回ってきませんし片付け押し付けられますし、空き時間にボールを投げつけられるのですぞ、アレめっさ痛い)

小中の記憶を思い出して憂鬱になりつつも、今は高身長かつ筋肉のある超絶美形なので何とかなるだろうと思い直す。

(コツはともかく、パワーはついたはずですし……ボールも回してもらえるでしょうし、まぁ真面目にやりますかな。さてさて着替え、バレないように皆様の裸を品定めしますぞ~)

更衣室の端に行きたがったカンナに付き合い、その隣で着替える。そういえばカンナの上半身は見ていなかったなと視線を向けたが、彼は肌を出さないよう器用に着替えており、裸は見られなかった。

(くっ……女子みたいな着替え方しますな。まぁ女子の着替えなんて見たことありませんが!)

リュウの裸は明日見れるだろうし、鳥待とりまちを見るかな。眼鏡だしヒョロいだろう。

(鳥待きゅ~ん、ぉ、居た居た)

俺の後ろで着替えていた鳥待を見つける。ちょうど肌着を脱いだタイミングだ。

(……なにっ!?)

格闘漫画でしか見ないようなバッキバキの背筋、クルミでも挟んで割りそうな肩甲骨、薄らと見えるのは切り傷だろうか、思わず目が奪われる。

「マジかよ……」

「おや? 委員長、どうされました?」

つい声を出してしまい、鳥待が振り返る。予想通り腹筋は割れている。服を着ていれば細身に見える程度の、筋肉が盛り上がってはいない実用的な肉体、その随所にある切り傷。

(目にも切り傷ありますし……傭兵でもやってたんですかな)

カンナも鳥待を見てぽかんとしている。

「あ、あぁ、いや、鍛えてるんだな、意外だよ」

「あなたの方が鍛えてらっしゃるじゃありませんか」

鳥待は眼鏡の奥の瞳を細めてにっこりと微笑む。センター分けの髪が揺れ、眼鏡の縁に擦れる。

「……その傷、何なんだ?」

「傷? あぁ……お恥ずかしいのですが私はドジでして、過去に山登りをした時に岩場で滑落し、こんなことに」

尖った石で切った傷だと? ナイフで切りつけられた跡のように見えるが、俺は創傷の専門家ではない。分からないから信用するしかない。

「そうか、痛かっただろ。俺がその場に居たらお前をしっかり捕まえて、滑落なんてさせなかったんだけどな」

その代わり、俺に陥落させるけど。

「ありがとうございます、お優しいですね委員長は」

鳥待の肉体はクラスメイトも気にしている。しかし話しかけにはこない。

「そんなことないよ……そろそろ上着ろよ、俺もそうする。カンナ、行くぞ」

体操服に着替え終えたらカンナを連れて更衣室を出る。

「す、ご……かた、ねっ」

「鳥待か? あぁ、すごかったな」

「…………みぃくん、ああいうのの、ほぉが……いい? ぼく……きたえ、よっかな」

「カンナのぷにっとしたお腹好きだよ」

そっとカンナの腹に触れる。太っている訳ではない、幼児のようなぷにぷに感もカンナの魅力だ。体操服の独特の手触りの良さも手伝っていつまでも触っていたくなる。

「ぷ……!? ぼ、ぼく、太っ……て……?」

「いやいや、太ってはない。大丈夫、健康体だ、可愛いよ。このままでいい」

「そ……? よ……か、たっ」

ホッとした様子のカンナと共に列に並ぶ。まだ身長を計っていないので、とりあえず出席番号順だ。ほどなくしてチャイムが鳴り、体育教師がやってきて、軽いウォーミングアップが始まる。

「えー、全員バスケのルールは知ってるな? 今日はまぁお遊びくらいで。五対五だ、コートは二面あるから二十人か……四人余るな。そいつらは適当に練習、とりあえずボール触っとけ」

五人の集まりが作れない連中が余りの四人だ。まずはボールに慣れたいから俺は余りでいいのだが。

「カンナ、とりあえず俺と一緒にな」

カンナは鈍そうだし、余って練習希望の俺にはピッタリだが……残り三人が集まったらいきなり試合か、集まって欲しくないな。

水月みつきぃー、時雨しぐれぇー、よーしーてー」

三人目はリュウだ。

「いいけどまだ五人集まってないぞ」

「ええよええよ、試合なんかかったるいやん、このまま余ろ」

リュウも俺と同じ気持ちらしい。カンナはまだリュウが怖いのか俺の背に隠れた。

「委員長、私と彼で五人集まりましたね」

鳥待が五人目を連れてきてしまった。彼の背後に居るのは赤いメッシュが入った黒い長髪が特徴的な中性的な美少年、顔は好みだが苦手な雰囲気なので避けていた生徒だ。

(余計なことを! 眼鏡かち割りますぞ!? しかも、彼……溢れ出る陽キャ感と言いますか、絶対苦手なタイプですぞ~)

鳥待が自己紹介を促すと彼は面倒臭そうにため息をついた。

霞染かすみぞめ 初春はつはるでーす。よろしくー……てかクラスメイトなんだから名前くらい知ってるっしょ」

髪を弄りながら誰とも目線を合わさない自己紹介。

(…………ギャルですぞぉぉーっ! これはギャルですぞ、男ですがギャルですぞ! 嫌でそ嫌でそトラウマが蘇るァーッ!)

中学の頃こんな感じの女子にされた扱いを思い出し、身勝手な苦手意識からのトラウマを蘇らせて震えていると霞染の視線がこちらに向いた。
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