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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 嘘つき達の朝食
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どことなくぎこちない雰囲気が漂う。
そうだよな、今朝の俺達はどこかおかしいのかもしれない。
揃いも揃って────────────俺達はお互いに嘘をついている。
なんとなくだがそんな気がした。
誰に嘘をついているって訳でもないんだ。
多分だけどそう、これは自分に嘘をついてる。
お互いにさ、自分に自分で嘘をついてるんだよ。
だけどそれって何の嘘だろう?
それが解らないんだ。
小泉は視線を逸らしたまま何も言わない。
そうだよな、こんな時のリアクションて困るよな?
俺はぼんやりと適当なことを口にした。
「さっきの豆大福さ、美味かったけどちょっと足りないんだよな」
まだ腹減ってるんだけどさ、なんか食べ物ないの?と俺が尋ねると小泉はおもむろに立ち上がった。
「……そうだな。そろそろ朝食にするとするか」
小泉は咳払いをしながら給湯室に下がった。
冷蔵庫や戸棚を開け閉めする音がわざとらしく響く。
向こうも向こうでどうしていいかわかんなかったんだろうな。
しばらく経ってから小泉が微妙な表情でこちらに戻ってきた。
「いや、探す努力はしたんだが────────」
生憎、どうにか出来そうな食材は揃っていなくてな、と小泉は少しがっかりしたように俺に告げる。
「え?全くの何もない状態ってこと?」
俺がそう聞き返すと小泉は考え込むような素振りを見せた。
「いや、何もないわけでもないんだがな、ちょっとこれだけじゃ無理があるというか────────」
小泉が見せてきたのは6個入りの卵1パックとレトルトの白米だった。
「卵かけ御飯というのも不味くはないが少し地味すぎやしないか…?」
小泉が心底すまなさそうにする。
「いや、何言ってんだよセンセェ。これだけありゃ普通の朝飯になるんじゃね?」
俺は立ち上がると小泉にそう告げた。
「まあ見てなって。俺がこれで朝飯、作ってやんよ」
そうだよな、今朝の俺達はどこかおかしいのかもしれない。
揃いも揃って────────────俺達はお互いに嘘をついている。
なんとなくだがそんな気がした。
誰に嘘をついているって訳でもないんだ。
多分だけどそう、これは自分に嘘をついてる。
お互いにさ、自分に自分で嘘をついてるんだよ。
だけどそれって何の嘘だろう?
それが解らないんだ。
小泉は視線を逸らしたまま何も言わない。
そうだよな、こんな時のリアクションて困るよな?
俺はぼんやりと適当なことを口にした。
「さっきの豆大福さ、美味かったけどちょっと足りないんだよな」
まだ腹減ってるんだけどさ、なんか食べ物ないの?と俺が尋ねると小泉はおもむろに立ち上がった。
「……そうだな。そろそろ朝食にするとするか」
小泉は咳払いをしながら給湯室に下がった。
冷蔵庫や戸棚を開け閉めする音がわざとらしく響く。
向こうも向こうでどうしていいかわかんなかったんだろうな。
しばらく経ってから小泉が微妙な表情でこちらに戻ってきた。
「いや、探す努力はしたんだが────────」
生憎、どうにか出来そうな食材は揃っていなくてな、と小泉は少しがっかりしたように俺に告げる。
「え?全くの何もない状態ってこと?」
俺がそう聞き返すと小泉は考え込むような素振りを見せた。
「いや、何もないわけでもないんだがな、ちょっとこれだけじゃ無理があるというか────────」
小泉が見せてきたのは6個入りの卵1パックとレトルトの白米だった。
「卵かけ御飯というのも不味くはないが少し地味すぎやしないか…?」
小泉が心底すまなさそうにする。
「いや、何言ってんだよセンセェ。これだけありゃ普通の朝飯になるんじゃね?」
俺は立ち上がると小泉にそう告げた。
「まあ見てなって。俺がこれで朝飯、作ってやんよ」
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