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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 柔らかな押し問答
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「じゃあさ、これって切らないと見れねぇの?」
ハサミかカッターで切るもんなのか、と尋ねると小泉は鋏を差し出してくる。
「……自分で確かめてみればいいだろう。ほら」
ほらって言われても。
「え、マジで切って開けていいのか?なんか大丈夫なんかこれ?」
初めてのケースに困惑してしまう。
「袋綴じの意味わかんないしヤバくね?なんか毒とか塗られてなけりゃいいんだけどさ。中にカッターの刃が貼り付けられてるとかあるかもよ?」
俺がビビり散らしていると小泉がまた溜息をついた。
「ここで怯んでどうするんだ。お前がやった事だろう?」
最後まで責任を持つべきじゃないのか、という小泉の言い分はもっともなものに思えた。
「まあそうなんだけどさ─────────いや、童貞を捨てたとかの経緯にビビってるとかじゃなくて」
急に変な仕様変更が実装されてんのが不気味っていうか、と俺が漠然とした不安を告げると小泉が頷いた。
「ま、まあ気持ちは分からんでもないが……」
そうだろそうだろ?
呪いシステムの定期メンテなんかいつ入ったんだよ?それとも不具合でも見つかったか?詫び石寄越せよ。
勝手な事しやがって、という気持ちの方が段々と強くなる。
「よくわかんねぇんだけど……これって向こうの都合って感じじゃない気がするのもなんか引っ掛かるっていうか──────」
俺が思ったままのことを口にすると小泉は怪訝そうな表情を浮かべた。
「[向こうの都合ではない]とは?」
まあそういうリアクションになるよな。
「いや、うまく説明出来ないんだけどさ。なんていうか、自覚が無いこともないっていうか─────────」
そう、なんとなく心当たりはあるにはあるんだ。
多分これはこっち側の問題だろう。
俺の方に“変化”があった。それは確定でほぼ間違いないだろう。
ハサミかカッターで切るもんなのか、と尋ねると小泉は鋏を差し出してくる。
「……自分で確かめてみればいいだろう。ほら」
ほらって言われても。
「え、マジで切って開けていいのか?なんか大丈夫なんかこれ?」
初めてのケースに困惑してしまう。
「袋綴じの意味わかんないしヤバくね?なんか毒とか塗られてなけりゃいいんだけどさ。中にカッターの刃が貼り付けられてるとかあるかもよ?」
俺がビビり散らしていると小泉がまた溜息をついた。
「ここで怯んでどうするんだ。お前がやった事だろう?」
最後まで責任を持つべきじゃないのか、という小泉の言い分はもっともなものに思えた。
「まあそうなんだけどさ─────────いや、童貞を捨てたとかの経緯にビビってるとかじゃなくて」
急に変な仕様変更が実装されてんのが不気味っていうか、と俺が漠然とした不安を告げると小泉が頷いた。
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そうだろそうだろ?
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まあそういうリアクションになるよな。
「いや、うまく説明出来ないんだけどさ。なんていうか、自覚が無いこともないっていうか─────────」
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