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ep9

ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 BOOM BOOM FIRE

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「ハァ…!?お前があの『爆炎の王(ウォン)』……!?」

愚羅淫怒(グラインド)陣営がざわつく。

てか、前から『爆炎の王(ウォン)』て名前だけ伝わってるかのような雰囲気だな?

俺が動揺する気配を感じ取ったのか、湯浅が解説を始めた。

「ええ。以前に越境してきた隣県のグループを壊滅させた実績がありますから」

噂だけが一人歩きしていた状態にあったようです、という湯浅の言葉にウォンが反応する。

「やっと愚羅淫怒(グラインド)の皆さんに自己紹介出来たアル!」

相変わらずウォンは屈託のない様子で笑顔を振りまいている。

「てか、コレって族同士の抗争なんだよな……?まるでお祭り騒ぎみたいなテンションしてやがるじゃねぇか」

俺がそう言うと、ウォンは胸を張ってこう答えた。

「そうアル!お祭りアルよ!あっちではニューイヤーに爆竹と花火でド派手にお祝いするアルからな!」

爆竹…?

え?

爆竹だって?と俺が聞き返すと湯浅が頷いた。

「ええ。これらの総長の攻撃は全て仕込みの爆竹と花火によるものです」

ハァ!?

どういうことだよ!?

「予め湯浅と一緒にここにセットしといたアルな!着火装置のボタンを押したら作動する仕組みアル!」

ウォンが鼻高々に種明かしする。

そうか。

普通に考えたら現実世界で爆発系魔法だのを使える筈ねぇもんな。

当然、どっかに仕掛けがある訳で────────

「ん?じゃあさっきの指パッチンてなんなんスかwww?」

概史がそう尋ねると、ウォンはこう答える。

「ああすると雰囲気が出てカッコいいアルからな!実際にはポケットに入れた左手でスイッチを押してるだけアル!」

ウケるwwwと概史がゲラゲラと笑った。

おいおいおい……

やっぱアニメの見過ぎじゃねぇか?影響受け過ぎだろ。

それにしても。

先代総長の鈴木先輩といい、現総長のウォンといい────────ド派手に火を使い過ぎだろう。

これじゃ暴走族なのか大道芸人なのかわかんねぇじゃねぇか。

大道芸ってよりイリュージョンに近いよな、仕込みやタネがあるんだからさ。

てか、揃いも揃ってマジでイリュージョニストかマジシャンでも目指してんのか?どうなってんだよ?

俺がそんなことをぼんやりと考えてるうちに、ウォンは次々と爆発を起こしていく。

まるでやまびこの帽子を被ってイオナズンを連発してるかのようだ。

向こう陣営は阿鼻叫喚、ド派手に上がる火柱に逃げ惑っている。

「香港じゃ爆竹と花火は法律で禁止されてるアルからな~!日本じゃ自由に伸び伸び出来て嬉しいアル!」

ウォンはそう言いながら指をパチンパチンとリズミカルに鳴らす。

「いや、日本でもダメだろ……法的にアウトだろ、条例とか」

俺がそう言うとウォンは胸を張る。

「そこは大丈夫アル!ここは私有地で使用許可も取ってあるから大丈夫って初代総長が言ってくれたアルからな!」

初代総長?

そんな奴も居るのか?

その瞬間だった。

ウォンが指を鳴らす。しかし、爆発は起こらない。

「あれ……?おかしいアルな?」

続けて二度三度、指を鳴らすが何も起こらない。

「……総長。残念ですが」

そろそろ弾切れのようです、と湯浅が淡々と指摘する。

その言葉を愚羅淫怒(グラインド)陣営が聞き逃す筈がなかった。

「おいィィ!!聞いたかァ!?お前らァ~!?」

タブチが舌なめずりをしながら角材を握る。

「さんざん俺らのことコケにしてくれたよァ~!?」

タブチを始め、比較的常識人っぽいヤツとヒョロガリの馬場も手に鉄パイプを持ちこちらに向かってくる。

「アイヤー!ペース配分間違えたアルなー!?」

てか、こう言う時にホントにアイヤーって言うんだな。漫画の中だけかと思ってたんだが。

「テラピンチwwwもう打つ手なくないスかwww」

概史がヤケクソ気味にゲラゲラ笑う。

いや、笑い事じゃなくね……?

俺ら全員ヤラれて、そしたら鈴木先輩も───────!?

俺らはボコられるだけで済むだろう。

だけど、鈴木先輩はそうはいかないんじゃないのか?

やっぱり身体の何処かを切断される───────!?

俺たちはオーディエンスを含む愚羅淫怒(グラインド)陣営に完璧に囲まれてしまう。

さっきは調子に乗ってド派手に爆発させちまったもんな。そりゃ反撃されるわな。

仕込んであったのが爆竹なだけに、見た目は派手だが致命傷は与えられてねぇんだな。ヤツらほぼ軽傷じゃねぇか。

タブチが勢いに任せて角材を振り下ろす。

もうダメだ。

そう思った瞬間だった。

背後から間抜けな声が聞こえてきた。

「おーいみんな~?大丈夫~?」

俺たちの背後を見た愚羅淫怒(グラインド)陣営が真っ青になっていくのがわかった。















振り返ると背後から───────────大型ロードローラーがこちらに向かって進んで来ているまっ最中だった。
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