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ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第一夜
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こんな夢を見た。
木曜日の放課後辺りから小泉の様子がなんとなくおかしいのは察していた。
妙に落ち着かない様子、とでも言ったほうがいいだろうか。
推しているジャンルのイベントかキャンペーンでもあるんだろう。
或いは、やってるソシャゲの新規イベントでも始まったか。
それは日常茶飯事──────────いや寧ろ通常運転と言うに相応しい状態だったので特に気に留める必要など無かった。
金曜日の昼休憩。
給料日前で金欠だった俺はいつものように小泉に飯を集ろうと声を掛けた。
「なあ、センセェ。金無くて食いモンも無いんだけどさ。明日、センセェんとこ行っていいか?」
なんか食べさせてよ、と俺が言うと途端に小泉の顔色が変わった。
「……!」
小泉は何か言いたげにパクパクと口を動かしている。
「……っ!……明日は……その……!」
明日は都合でも悪いんだろうか。
「ん?また別のバイトでも入れてんのか?」
またメイドの助っ人か?と俺が尋ねると小泉はブンブンと首を振った。
「……あ……明日は……神社には居なくて……」
なんだよ、出掛けてんの?アニメのイベントか何かか?と訊くと小泉は黙った。
「どしたんだよ?またファミレスだの牛丼屋だのでアニメコラボとかあんの?」
そういうヤツなら俺も連れてってくれよ、と俺が言うと小泉は無言で首を振った。
小泉の推してるジャンルの作品ってさ、頻繁にいろんなコラボやってんだよ。
コンビニで[対象商品◯個お買い上げでクリアファイルプレゼント!]みたいなキャンペーンもあれば、[コラボメニューご注文につき一枚、コースタープレゼント!]なんてものもある。
推しのグッズの無限回収したい小泉からすりゃ、いくら食べてもキリが無いって感じなんだろうな。
そんな時に重宝されて駆り出されるのが俺だ。
とにかく、テーブル一杯に並べられたコラボドリンクもコラボメニューも片っ端から平らげてくんだな。
いくら食べ盛りの男子中学生でもさ、流石にその量はキツそうって思うだろ?
でも案外、そうでもないんだよな。
コラボメニューってのは通常の飲食店のメニューに比べて割高だったり、量が少なかったりするパターンも結構あってさ。
まあ、缶バッジだのブロマイドだののオマケの値段が入ってるからなんだろうな。
で、全然食えるんだよ。毎回、かなりの量を全部食ってんだよ俺。
俺はタダで飯が食えるし、小泉は目当てのグッズが手に入るしでwin-winだろ?
だからさ、今回もそういうやつだと思ったんだよな。俺的にさ。
小泉は黙って俯いたまま、何か言いづらそうにしている。
「ん?なんだよ?言いづらいジャンルのコンテンツなのか?」
R-18ジャンルとかBLとかのサイン会とか商品お渡し会とか?と俺が質問すると小泉はまた無言で首を振った。
「そ……その、明日はそういうんじゃなくて────────」
ちょっとお前は連れて行けないから遠慮してくれ、と絞り出すように小泉は答えた。
「なんだよセンセェ。俺とセンセェの仲だろ?」
何恥ずかしがってんだよ、そんなんじゃ目当てのグッズとか入手出来ねぇぞ、と俺が言いかけた瞬間──────机の上に見慣れない雑誌が置いてあるのが目に留まる。
「なんだこの本?」
「……ちょ!それは──────!」
俺が手に取ろうとすると小泉がそれを制止する。
机に置かれていた分厚い本は────────────コンビニでよく見かける結婚情報雑誌だった。
木曜日の放課後辺りから小泉の様子がなんとなくおかしいのは察していた。
妙に落ち着かない様子、とでも言ったほうがいいだろうか。
推しているジャンルのイベントかキャンペーンでもあるんだろう。
或いは、やってるソシャゲの新規イベントでも始まったか。
それは日常茶飯事──────────いや寧ろ通常運転と言うに相応しい状態だったので特に気に留める必要など無かった。
金曜日の昼休憩。
給料日前で金欠だった俺はいつものように小泉に飯を集ろうと声を掛けた。
「なあ、センセェ。金無くて食いモンも無いんだけどさ。明日、センセェんとこ行っていいか?」
なんか食べさせてよ、と俺が言うと途端に小泉の顔色が変わった。
「……!」
小泉は何か言いたげにパクパクと口を動かしている。
「……っ!……明日は……その……!」
明日は都合でも悪いんだろうか。
「ん?また別のバイトでも入れてんのか?」
またメイドの助っ人か?と俺が尋ねると小泉はブンブンと首を振った。
「……あ……明日は……神社には居なくて……」
なんだよ、出掛けてんの?アニメのイベントか何かか?と訊くと小泉は黙った。
「どしたんだよ?またファミレスだの牛丼屋だのでアニメコラボとかあんの?」
そういうヤツなら俺も連れてってくれよ、と俺が言うと小泉は無言で首を振った。
小泉の推してるジャンルの作品ってさ、頻繁にいろんなコラボやってんだよ。
コンビニで[対象商品◯個お買い上げでクリアファイルプレゼント!]みたいなキャンペーンもあれば、[コラボメニューご注文につき一枚、コースタープレゼント!]なんてものもある。
推しのグッズの無限回収したい小泉からすりゃ、いくら食べてもキリが無いって感じなんだろうな。
そんな時に重宝されて駆り出されるのが俺だ。
とにかく、テーブル一杯に並べられたコラボドリンクもコラボメニューも片っ端から平らげてくんだな。
いくら食べ盛りの男子中学生でもさ、流石にその量はキツそうって思うだろ?
でも案外、そうでもないんだよな。
コラボメニューってのは通常の飲食店のメニューに比べて割高だったり、量が少なかったりするパターンも結構あってさ。
まあ、缶バッジだのブロマイドだののオマケの値段が入ってるからなんだろうな。
で、全然食えるんだよ。毎回、かなりの量を全部食ってんだよ俺。
俺はタダで飯が食えるし、小泉は目当てのグッズが手に入るしでwin-winだろ?
だからさ、今回もそういうやつだと思ったんだよな。俺的にさ。
小泉は黙って俯いたまま、何か言いづらそうにしている。
「ん?なんだよ?言いづらいジャンルのコンテンツなのか?」
R-18ジャンルとかBLとかのサイン会とか商品お渡し会とか?と俺が質問すると小泉はまた無言で首を振った。
「そ……その、明日はそういうんじゃなくて────────」
ちょっとお前は連れて行けないから遠慮してくれ、と絞り出すように小泉は答えた。
「なんだよセンセェ。俺とセンセェの仲だろ?」
何恥ずかしがってんだよ、そんなんじゃ目当てのグッズとか入手出来ねぇぞ、と俺が言いかけた瞬間──────机の上に見慣れない雑誌が置いてあるのが目に留まる。
「なんだこの本?」
「……ちょ!それは──────!」
俺が手に取ろうとすると小泉がそれを制止する。
机に置かれていた分厚い本は────────────コンビニでよく見かける結婚情報雑誌だった。
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