[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

SPD

文字の大きさ
上 下
782 / 1,060
ep8

ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 再生

しおりを挟む
結局のところ、昔の時代だろうが現代だろうが関係ない。

俺には女子の考えてることなんか1ミリもわからない。

この一件で─────────俺が唯一得た教訓はそれだった。

その後。

美術室にこれ以上居ても小泉の蘊蓄を延々と聞かされるだけだと悟った俺は早々に退散し、保健室に逃げ込んだ。

「……何か用?」

ドアを開け、俺が室内に足を踏み入れる前に佐々木はそっけなく言い放つ。

つれないなぁ、と言いながら俺はパイプ椅子に勝手に座る。

「この後、後輩と遊ぶ約束しててさ。待ち合わせの時間までちょっとここで暇つぶしさせてくれよ」

俺がそう言うと、佐々木は忙しそうに手を動かしながら答える。

「──────今日はわたしも早めに切り上げる予定よ。こっちも約束があるの」

「へぇ?意外だな。お前が誰かと約束とか──────」

誰かとデートとかwと俺が少し揶揄うように言うと佐々木はため息をついた。

「おあいにくさま。デートの相手は上野さんよ。駅前の喫茶店に一緒に行こうって誘われたの」

なんでも、最近入ったアルバイトのギャルソンに物凄いイケメンが居るって話で、と佐々木は少し笑みを浮かべる。

「聞き上手でどんな話も聞いてくれるって言っててね。彼女、最近はそこの喫茶店に通い詰めてるそうよ」

なるほど、上野らしいな、と言いながら俺はぼんやりと相槌を打った。

「イケメンに釣られて行くなんてさ、お前も結構ミーハーなとこあるよな」

まあね、と佐々木は少し表情を固くした。

「これから情報収集の場になる可能性もある店だって思ったから、ま、念の為にね」

俺は忙しくペンを走らせる佐々木の手元を覗き込む。

「また何かの事件を追ってるのか?」

ああ、これは、と佐々木はため息をつく。

「わたしってこうして保健室登校って形にして貰ってるでしょう?一ヶ月に一回、近況報告のような形でレポートを提出しなきゃいけないのよ」

それがまた厄介なのよね、と佐々木はぼやく。

「は?お前ってこういうの得意だろ?パパッと書いちゃえばいいじゃん」

俺がそう言うと佐々木は首を振った。

「そうもいかないの。何せ、『困難を抱えて教室に登校出来ない生徒』を演じてる訳だから」

元気一杯にやる気に満ち溢れてても駄目だし、かと言って落ち込み過ぎてても心配されるし、と佐々木はペンを止めて考え込む素振りをみせる。

「なるほどなぁ。保健室登校って身分の性質上、あんまりポジティブ過ぎると『そろそろ教室で授業を受けたらどうだ?』的な提案をされるって事か」

そういうこと、と佐々木は頷く。

「……この匙加減がなかなか難しくてね。毎回悩みどころなのよ────────」

佐々木がため息をついた拍子に、消しゴムが机の上からポロリと落下する。

「おっと」

俺がそれを拾うと───────消しゴムとケースの隙間から『G』とマジックで書かれた文字がチラリと見えた。

「……ん?」

「ちょっ!!!!」

佐々木が珍しく慌てた様子で俺の手から消しゴムを奪い取った。

「……なんかさ、さっき消しゴムになんか字が書いてあんのチラっと見えたんだけど───────」

俺がそう言い掛けると、佐々木は珍しく感情を露わにした。

「ちょ……勝手に見ないでくれる!?これはその───────!!」

佐々木は何故か焦っているような表情を浮かべた。

「デ……データを入れてるマイクロSDカードを消しゴムに隠してカモフラージュしてて!!」

その為の識別記号だから!!と佐々木は耳を真っ赤にした。

「なんだよ……機密事項が入ってんのか」

おっかねぇな、と俺が呟くと佐々木は同調する。

「そう!これは極秘事項なの!だから貴方の目に触れさせる訳にはいかないの!」

はいはい、わーったよ、と適当に返事を返すと佐々木は俺の背中を押した。

「さあ、もう出ていって!わたしもこの後、ここを閉めて帰るから!」













極秘事項とやらを知られたくないのか───────妙な反応の佐々木に困惑しながら俺は保健室を後にした。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...