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ep8
ep8『我が逃走』 Not Gonna Get Us その④
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詐欺師は顔を強張らせたまま固まった。
少年の言った言葉の意図が理解できない。
「……は?」
遠くでサイレンの音が響く。
「だからさー」
なんでわかんねぇんだよ?ちゃんと聞いてたか?と少年は乱暴に吐き捨てる。
「もうすぐお前、消し炭みてぇに真っ黒になるんだろ?じゃあいいじゃねぇか」
どの道、死ぬんだから関係ねぇだろ?という少年の台詞に対し、詐欺師はポカンとした様子で答える。
「……それだと君も死ぬんじゃないの?」
悠長にそんな事してたら君まで焼け死ぬだろ、と詐欺師はやっとのことで絞り出す。
「いいんだよそれで」
少年は詐欺師の肩を壁に押し付けながら答えた。
「元々、死のうかなって思ってたんだよ俺も。ちょうどいいだろ?」
リアタイで実況配信までしてもらえて校舎が派手に爆発炎上するんだろ?最高の死に場所じゃね?と少年は精一杯の虚勢を張った。
「───────何言ってるんだ?本気か?」
詐欺師は少年の発言が何一つ理解できなかった。
「ほら、体育館の屋根からサイコパス共がこっち見ながらカメラ回してんだろ?この位置ならちょうど死角になるし────────」
少年は階段へ続く扉とは反対方向の物陰に詐欺師を引っ張り込んだ。
「ほら。早くヤろうぜ」
「……は?!」
まるで決定事項のように平然と言い放つ少年に対し、詐欺師は戸惑いを隠せない。
「───────この状況で何言ってるの?頭おかしいんじゃない?!」
目の見えない詐欺師の腕は空を切る。
少年に掴まれた身体は身動きが取れず、コンクリの壁に強く押し付けられていた。
二人の頭上には給水塔が見える。
「ここなら誰にも見えねぇからさ──────ほら、早く脱げよ」
少年は詐欺師のネクタイに手を掛ける。
「……な!?なんで僕がそんなこと───────」
そう言いかけた詐欺師の言葉を遮り、少年はこう宣言した。
「せめて死ぬ前に懺悔して罪滅ぼししろって。学校をド派手に爆破してリアタイ実況しながら死ぬとか──────────ここの中学は今後30年はネットで語り継がれる事になるんだぜ?」
在校生やこれから入学予定の奴らにとっちゃいい迷惑だろうが、と少年は説教じみた台詞をもっともらしく言ってのける。
少年の言動に一貫性など一切ない。
辻褄も合わなければ正気の沙汰とも思えない。
だが。
少年の意思はここに来る前から既に決まっていたのだ。
「一人だけ死んで楽になろうとするとか卑怯だろ?アンタの親も家族も一生……生き地獄の中を過ごさなきゃなんねぇのにさ」
残された両親が堕とされる地獄。
そのことを突きつけられた詐欺師は半狂乱になった。
「だってそうだろ?自分の子どもが中学生相手に詐欺まがいの事しててさ。薬物飲んで放火・焼身自殺された挙句に───────残された親族一同はマスコミに延々と粘着され続けんの確定なんだからさ」
「……っ!?」
提示されるこの後の未来に───────そこで初めて詐欺師は猛烈な恐怖を抱いた。
「……!」
後戻り出来ない段階で突きつけられた最悪な現実。
校舎を包囲する炎は勢いを増し─────────二人に迫ろうとしていた。
少年の言った言葉の意図が理解できない。
「……は?」
遠くでサイレンの音が響く。
「だからさー」
なんでわかんねぇんだよ?ちゃんと聞いてたか?と少年は乱暴に吐き捨てる。
「もうすぐお前、消し炭みてぇに真っ黒になるんだろ?じゃあいいじゃねぇか」
どの道、死ぬんだから関係ねぇだろ?という少年の台詞に対し、詐欺師はポカンとした様子で答える。
「……それだと君も死ぬんじゃないの?」
悠長にそんな事してたら君まで焼け死ぬだろ、と詐欺師はやっとのことで絞り出す。
「いいんだよそれで」
少年は詐欺師の肩を壁に押し付けながら答えた。
「元々、死のうかなって思ってたんだよ俺も。ちょうどいいだろ?」
リアタイで実況配信までしてもらえて校舎が派手に爆発炎上するんだろ?最高の死に場所じゃね?と少年は精一杯の虚勢を張った。
「───────何言ってるんだ?本気か?」
詐欺師は少年の発言が何一つ理解できなかった。
「ほら、体育館の屋根からサイコパス共がこっち見ながらカメラ回してんだろ?この位置ならちょうど死角になるし────────」
少年は階段へ続く扉とは反対方向の物陰に詐欺師を引っ張り込んだ。
「ほら。早くヤろうぜ」
「……は?!」
まるで決定事項のように平然と言い放つ少年に対し、詐欺師は戸惑いを隠せない。
「───────この状況で何言ってるの?頭おかしいんじゃない?!」
目の見えない詐欺師の腕は空を切る。
少年に掴まれた身体は身動きが取れず、コンクリの壁に強く押し付けられていた。
二人の頭上には給水塔が見える。
「ここなら誰にも見えねぇからさ──────ほら、早く脱げよ」
少年は詐欺師のネクタイに手を掛ける。
「……な!?なんで僕がそんなこと───────」
そう言いかけた詐欺師の言葉を遮り、少年はこう宣言した。
「せめて死ぬ前に懺悔して罪滅ぼししろって。学校をド派手に爆破してリアタイ実況しながら死ぬとか──────────ここの中学は今後30年はネットで語り継がれる事になるんだぜ?」
在校生やこれから入学予定の奴らにとっちゃいい迷惑だろうが、と少年は説教じみた台詞をもっともらしく言ってのける。
少年の言動に一貫性など一切ない。
辻褄も合わなければ正気の沙汰とも思えない。
だが。
少年の意思はここに来る前から既に決まっていたのだ。
「一人だけ死んで楽になろうとするとか卑怯だろ?アンタの親も家族も一生……生き地獄の中を過ごさなきゃなんねぇのにさ」
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「……っ!?」
提示されるこの後の未来に───────そこで初めて詐欺師は猛烈な恐怖を抱いた。
「……!」
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校舎を包囲する炎は勢いを増し─────────二人に迫ろうとしていた。
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