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ep8『我が逃走』 Not Gonna Get Us その⑤
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「なんか……おかしくないか?……君が僕に罰を与えるって言うの?」
背中を壁に押し付けられた詐欺師は途切れ途切れに言葉を絞り出す。
その─────罪滅ぼしを僕にさせようってロジックは兎も角として、と詐欺師は躊躇いがちに言葉を区切る。
「その為にわざわざ君も一緒に死ぬことはないんじゃないのか?」
少年の不可解な言動に不信感を持ったのであろうか。
それはもっともな事だった。
「……その─────僕が上野綾に対してやった行為に君は怒っているの?」
それで僕に罰を与えて……でも、肝心の君が死んでしまうんじゃ意味がないだろう?と詐欺師は心底理解出来ないと言った表情を浮かべた。
「アイツは関係ねぇよ。俺が勝手にそうしたいって思っただけで」
少年は否定したが───────それは意味をなさないものだった。
「僕を裁く為だけにわざわざ君まで死ぬなんてどう考えても間違ってるじゃないか」
そもそも、と詐欺師は強調した。
「……君が居ようが居まいが僕の死は最初から決まってたんだ。飲んでしまった“免罪酒”もだけど────────」
もうすぐここも炎に包まれるんだ。そこらに設置した簡易爆弾に引火したらもうそれで終わりなんだよ、と詐欺師は泣きそうな声で訴える。
「だったら何だって言うんだ?死にてぇって思って実行する権利はアンタの専売特許か?違うだろ?」
お前に死ぬ権利があるのと同じで俺にもあんだよ、と少年は詐欺師のネクタイをもう一度引っ張った。
「……は!?」
詐欺師は悲鳴のような声を上げる。
人生の終着駅、最後の最後でこんな事態になるなんて誰が予想出来ただろうか。
少年は改めて詐欺師の姿を見た。
“執事服”だと少年は思っていたが───────ジャケットを脱ぎ捨てたその姿はカフェのギャルソンか喫茶店のマスターのようにも見える。
「アンタさ、よっぽど好きなんだな。この服装」
似合ってるじゃん、と言いながら少年は詐欺師の白いワイシャツのボタンを外していく。
「……え?ちょっと待っ────────」
混乱する詐欺師の制止を振り切り、少年はそのシャツの下に掌を滑り込ませた。
「ちょっ………!!」
────あ、と詐欺師の口から意図しない声が漏れる。
まだ誰にも触れられた事のない部分に少年の指が触れていた。
詐欺師の肩がブルリと震えたのが少年にも伝わって来る。
「……本当に──────君、なんなの!?気でも触れてるんじゃないの!?」
怒りを込めた詐欺師の精一杯の抵抗を少年は嘲笑うかのように押さえ込んだ。
「───────力で俺に敵うわけねぇだろ?いい加減観念しなって」
背中を壁に押し付けられた詐欺師は途切れ途切れに言葉を絞り出す。
その─────罪滅ぼしを僕にさせようってロジックは兎も角として、と詐欺師は躊躇いがちに言葉を区切る。
「その為にわざわざ君も一緒に死ぬことはないんじゃないのか?」
少年の不可解な言動に不信感を持ったのであろうか。
それはもっともな事だった。
「……その─────僕が上野綾に対してやった行為に君は怒っているの?」
それで僕に罰を与えて……でも、肝心の君が死んでしまうんじゃ意味がないだろう?と詐欺師は心底理解出来ないと言った表情を浮かべた。
「アイツは関係ねぇよ。俺が勝手にそうしたいって思っただけで」
少年は否定したが───────それは意味をなさないものだった。
「僕を裁く為だけにわざわざ君まで死ぬなんてどう考えても間違ってるじゃないか」
そもそも、と詐欺師は強調した。
「……君が居ようが居まいが僕の死は最初から決まってたんだ。飲んでしまった“免罪酒”もだけど────────」
もうすぐここも炎に包まれるんだ。そこらに設置した簡易爆弾に引火したらもうそれで終わりなんだよ、と詐欺師は泣きそうな声で訴える。
「だったら何だって言うんだ?死にてぇって思って実行する権利はアンタの専売特許か?違うだろ?」
お前に死ぬ権利があるのと同じで俺にもあんだよ、と少年は詐欺師のネクタイをもう一度引っ張った。
「……は!?」
詐欺師は悲鳴のような声を上げる。
人生の終着駅、最後の最後でこんな事態になるなんて誰が予想出来ただろうか。
少年は改めて詐欺師の姿を見た。
“執事服”だと少年は思っていたが───────ジャケットを脱ぎ捨てたその姿はカフェのギャルソンか喫茶店のマスターのようにも見える。
「アンタさ、よっぽど好きなんだな。この服装」
似合ってるじゃん、と言いながら少年は詐欺師の白いワイシャツのボタンを外していく。
「……え?ちょっと待っ────────」
混乱する詐欺師の制止を振り切り、少年はそのシャツの下に掌を滑り込ませた。
「ちょっ………!!」
────あ、と詐欺師の口から意図しない声が漏れる。
まだ誰にも触れられた事のない部分に少年の指が触れていた。
詐欺師の肩がブルリと震えたのが少年にも伝わって来る。
「……本当に──────君、なんなの!?気でも触れてるんじゃないの!?」
怒りを込めた詐欺師の精一杯の抵抗を少年は嘲笑うかのように押さえ込んだ。
「───────力で俺に敵うわけねぇだろ?いい加減観念しなって」
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