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ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 週末に捨てる童貞

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「は!?」

俺は思わずテンパってしまう。

いやいやいやいやいや……

なんだコレ?????

意味がわかんねぇ?

は?

中出し?

は???

クリームパイ?

そんな意味あんの!?

口をパクパクさせている俺を横目に、上野は呆れたように呟く。

「あらら。マジで佐藤っち何も知らなかったんだ」

ま、知らないのはそれだけじゃないだろうけどね、と上野は意味ありげに付け加えた。

「何がだよ!?どういう意味だ!?」

「ふーん。土曜日にねぇ。一体、何を注入しに行くんだか」

上野はいつもの調子に戻り、ニヤニヤと俺を揶揄った。

ブンブンと俺は首を横に振った。

「いやマジで!俺、そんなつもりねぇし!!」

冗談じゃねぇ。

俺、割と真面目にパイを焼きに行くだけのつもりだったし。

焼き加減や生地作りに関してめっちゃ心配してるレベルには真剣なんだけど?!

いや、マジで。

確かに、夢野くるみについて調べる必要はあるが─────

だからと言っても、もう既に一回時間は戻ってるんだ。

俺は夢野くるみとどうこうなろうなんて微塵も思っちゃいなかった。

その必要なんてないだろ?

時間を戻る必要が無けりゃヤる必要なんて無いんだからな。

「佐藤っち、慌てちゃってかわいー!」

あ、もしかしてまだ童貞だったりすんのー?と上野の弄りはヒートアップする。

「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

俺はブンブンと首をフルスイングさせて再び全力で否定した。

いや。

正確には俺ってなんなんだろう。

確かに、童貞は何度も捨てている。

だけど、その度に時間が戻って記憶が無くなってるんだ。

非童貞では無いってことか?

かと言って純度100%の童貞でもない?

それでも胸を張って非童貞、経験済みだと断言も出来ない。
 
俺が口ごもったのを見て上野は更にニヤニヤとした表情を浮かべる。

人が童貞だってのを揶揄ってそんなに面白いのかよ。クソが!

「あれれ?その反応じゃまんざらでもないって感じじゃない?未遂か何かあった?最後まで出来なかっただけとか?」

畳みかけるように怒涛のラッシュを掛けて来る上野の視線をかわしながら俺はカウンターを仕掛けた。

「人のことばっか聞いてくっけどよ。じゃあお前はどうなんだよ?」

上野は一瞬ピタリと動きを止めると、瞬きを何度も繰り返した。

「え?あーし?」

少し沈黙が続いた後、上野は大きく笑った。

「そんなんヒミツに決まってるっしょ!?」

やだなー佐藤っち!と上野は俺の肩をバンバンと叩いた。

意味がわかんねぇ。

「上野、お前マジで意味わかんねぇ」

おれがそう呟くと、上野は急に真顔になって静かに言った。





「佐藤っちにはさ。ホントに好きな相手で童貞捨てて欲しいって思ってるからさ」
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