312 / 1,060
ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 童貞であることの意味
しおりを挟む
俺は若干、戸惑いながら上野を見た。
その発言の真意はわからない。
だけど、コイツは俺の事をわりとガチで心配してくれてるんじゃないか。
そんな気がしたんだ。
上野は言葉遣いは悪いが、根は悪いヤツじゃないって思うんだよな。
「そりゃ、俺だってそうしたいって思ってるぜ?」
だけど現実はそうは行かないんだよな。
上手く行かない事ばっかりだ。
この前の花園リセの時だって─────
俺はふと前回の“文庫本”の内容をを思い出し、メチャクチャ嫌な気分になった。
アレは最悪だった。
自信も何もあったもんじゃねぇ。
プライドも何もかも粉々になったからな。
童貞を捨てるって作業には─────
いや、童貞じゃないにしても、ああいう場面は避けられないんだろうな。
俺があまりにも悲惨な表情をしていたからか、上野は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「ゴメン。佐藤っち。余計な事言っちゃった?」
そうじゃねぇよ、と俺は首を振った。
「俺、やっぱ女子と付き合うとかどうこうなろうとかってさ、10年くらい早いのかもな」
俺の言葉に対し、上野は意外そうな声を上げた。
「は?何言ってんのよ佐藤っち?自信持ちなよ」
自信ってなんだよ。もう既に俺のプライドも何もかもズタズタなんだが。
上野はまたしても俺の肩をバンと叩く。
しかしさっきまでの力はなく、威力は半減している。
「やだ佐藤っち……マジでそんなに彼女のコト、本気で好きなの?」
そんなに思い悩むくらい?と上野はトーンを落とした声で俺に問いかける。
あ、俺ってマジで夢野の事がめっちゃ好きみたいに思われてる?
違う違う、と俺は首をブンブンと振った。
「夢野の事だけじゃなくてさ。ちょっと周囲でゴタゴタしてて」
女子全般がよくわかんねぇんだ、女心っていうかさ、と俺は作り笑いを浮かべた。
それは本当だった。
夢野くるみ。花園リセ。
それに、今まで関わってきた女子。
雪城マコトや諸星キクコも含まれるだろう。(あ、小泉はカウントに含まなくてもいいとしてだ)
俺には女子たちがどんな事を考えてるかなんてわかんねぇんだ。
ましてやセックスなんてとんでもないよな。
俺は結局、心のことも身体のこともきっと何も理解してないんだよ。
自分のことも、相手のこともな。
「そんなことないよ」
上野は静かに首を振った。
「佐藤っちはいつも他の人の事をちゃんと大切にしてくれてるじゃん」
自分自身のこともね、と上野は付け加えた。
「え?自分自身?」
意味が分からず俺は聞き返す。
そうだよ。自分のこともだよ、と上野は少し寂しそうに笑った。
「自分を大切にできない人は、他人も大切に出来ないからね」
その発言の真意はわからない。
だけど、コイツは俺の事をわりとガチで心配してくれてるんじゃないか。
そんな気がしたんだ。
上野は言葉遣いは悪いが、根は悪いヤツじゃないって思うんだよな。
「そりゃ、俺だってそうしたいって思ってるぜ?」
だけど現実はそうは行かないんだよな。
上手く行かない事ばっかりだ。
この前の花園リセの時だって─────
俺はふと前回の“文庫本”の内容をを思い出し、メチャクチャ嫌な気分になった。
アレは最悪だった。
自信も何もあったもんじゃねぇ。
プライドも何もかも粉々になったからな。
童貞を捨てるって作業には─────
いや、童貞じゃないにしても、ああいう場面は避けられないんだろうな。
俺があまりにも悲惨な表情をしていたからか、上野は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「ゴメン。佐藤っち。余計な事言っちゃった?」
そうじゃねぇよ、と俺は首を振った。
「俺、やっぱ女子と付き合うとかどうこうなろうとかってさ、10年くらい早いのかもな」
俺の言葉に対し、上野は意外そうな声を上げた。
「は?何言ってんのよ佐藤っち?自信持ちなよ」
自信ってなんだよ。もう既に俺のプライドも何もかもズタズタなんだが。
上野はまたしても俺の肩をバンと叩く。
しかしさっきまでの力はなく、威力は半減している。
「やだ佐藤っち……マジでそんなに彼女のコト、本気で好きなの?」
そんなに思い悩むくらい?と上野はトーンを落とした声で俺に問いかける。
あ、俺ってマジで夢野の事がめっちゃ好きみたいに思われてる?
違う違う、と俺は首をブンブンと振った。
「夢野の事だけじゃなくてさ。ちょっと周囲でゴタゴタしてて」
女子全般がよくわかんねぇんだ、女心っていうかさ、と俺は作り笑いを浮かべた。
それは本当だった。
夢野くるみ。花園リセ。
それに、今まで関わってきた女子。
雪城マコトや諸星キクコも含まれるだろう。(あ、小泉はカウントに含まなくてもいいとしてだ)
俺には女子たちがどんな事を考えてるかなんてわかんねぇんだ。
ましてやセックスなんてとんでもないよな。
俺は結局、心のことも身体のこともきっと何も理解してないんだよ。
自分のことも、相手のこともな。
「そんなことないよ」
上野は静かに首を振った。
「佐藤っちはいつも他の人の事をちゃんと大切にしてくれてるじゃん」
自分自身のこともね、と上野は付け加えた。
「え?自分自身?」
意味が分からず俺は聞き返す。
そうだよ。自分のこともだよ、と上野は少し寂しそうに笑った。
「自分を大切にできない人は、他人も大切に出来ないからね」
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる