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ep2 .
ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 卵巣からジャム
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「こんなにたくさんの梨、どうしましょうね……」
ふふ、と彼女は悪戯っぽく笑う。
「もったいなくて食べられませんわ。あら、でも早く食べなくちゃいけませんし……」
彼女は頬に人差し指を当てて小首を傾げる。
こういう仕草も品があっていいものだな、と俺は彼女の横顔に見とれた。
「ジャムにでもしましょうか。そうしたら佐藤さんも一緒に食べられますし日持ちもしますわ」
花園リセはにっこりと微笑む。
「え?ジャム?梨でか?」
今まで親戚が送って来た梨といえば爺さんが生きていた頃から近所へ配るトレードアイテム、またはそのまま切って食べるものと相場が決まっていた。
梨のジャム。
今まで考えたことのない発想だった。
ジャムと言えば給食の食パンに付いてくるいちごジャムしか知らない俺にはやや衝撃だった。
梨がジャムになるのか、と驚く俺に対し花園リセは小さく笑いゆったりと頷く。
「簡単ですのよ。たくさん作って瓶詰めにしましょう。是非、佐藤さんもいくつかお持ちになって」
俺が持って来た梨をジャムにしてまた俺に与えてくれるのか。
物々交換にすらなっていないじゃないか、とも思えた。
日頃のお返しのつもりだったのだが、逆に倍返しされた気分である。
こうなると俺が花園リセに差し出せるものなんてもう何もないように感じてしまう。
「え、じゃあせめて俺にも手伝わせてくれね?」
俺はダメ元で彼女に提案する。
「ジャムって作るとこ見たことないしさ。俺も一緒にやっていいか?」
まあ、と小さく驚いた花園リセはその後ゆっくりと微笑んだ。
「嬉しいですわ。佐藤さんと一緒にお料理できるなんて」
じゃあ、準備をしておきますから明日一緒に作りませんこと?と彼女は俺の方に視線を向ける。
「よっしゃ!よろしく頼むぜ」
俺はなんとなく張り切りたい気分になってテンションが上がった。
貴婦人の御令嬢と一緒に二人きりでジャムを作る。
全く謎のシチュエーションである。
俺もびっくりだ。
ジャムってどうやって作るんだろう。
砂糖はどれくらい使うんだろう?
火加減はどうするんだろう、鍋が焦げ付いたら大変だ、しっかり気合い入れないとな。
俺は早くも明日のジャム作りの工程のことで頭がいっぱいになってしまった。
しかし。
ジャムよりも甘く蕩けるものの味を知ってしまう事になるなんてその時の俺は思いもしなかったのだった。
ふふ、と彼女は悪戯っぽく笑う。
「もったいなくて食べられませんわ。あら、でも早く食べなくちゃいけませんし……」
彼女は頬に人差し指を当てて小首を傾げる。
こういう仕草も品があっていいものだな、と俺は彼女の横顔に見とれた。
「ジャムにでもしましょうか。そうしたら佐藤さんも一緒に食べられますし日持ちもしますわ」
花園リセはにっこりと微笑む。
「え?ジャム?梨でか?」
今まで親戚が送って来た梨といえば爺さんが生きていた頃から近所へ配るトレードアイテム、またはそのまま切って食べるものと相場が決まっていた。
梨のジャム。
今まで考えたことのない発想だった。
ジャムと言えば給食の食パンに付いてくるいちごジャムしか知らない俺にはやや衝撃だった。
梨がジャムになるのか、と驚く俺に対し花園リセは小さく笑いゆったりと頷く。
「簡単ですのよ。たくさん作って瓶詰めにしましょう。是非、佐藤さんもいくつかお持ちになって」
俺が持って来た梨をジャムにしてまた俺に与えてくれるのか。
物々交換にすらなっていないじゃないか、とも思えた。
日頃のお返しのつもりだったのだが、逆に倍返しされた気分である。
こうなると俺が花園リセに差し出せるものなんてもう何もないように感じてしまう。
「え、じゃあせめて俺にも手伝わせてくれね?」
俺はダメ元で彼女に提案する。
「ジャムって作るとこ見たことないしさ。俺も一緒にやっていいか?」
まあ、と小さく驚いた花園リセはその後ゆっくりと微笑んだ。
「嬉しいですわ。佐藤さんと一緒にお料理できるなんて」
じゃあ、準備をしておきますから明日一緒に作りませんこと?と彼女は俺の方に視線を向ける。
「よっしゃ!よろしく頼むぜ」
俺はなんとなく張り切りたい気分になってテンションが上がった。
貴婦人の御令嬢と一緒に二人きりでジャムを作る。
全く謎のシチュエーションである。
俺もびっくりだ。
ジャムってどうやって作るんだろう。
砂糖はどれくらい使うんだろう?
火加減はどうするんだろう、鍋が焦げ付いたら大変だ、しっかり気合い入れないとな。
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