103 / 1,060
ep2 .
ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 愚者の贈り物
しおりを挟む
翌日。
俺はなんだか一日中落ち着かなかった。
今日は花園リセと一緒にジャムを作るのだ。
そう思うと何だかめちゃくちゃ緊張してくる。
放課後になるまで気が気ではなく、HRが終わると食い気味に急いで校門に向かう。
足早に通学路を急いだ。
商店街に差し掛かった所でふと俺は無意識に足を止めていた。
マサムネの事も俺のこともまるで家族のように親身になって面倒を見てくれる花園リセ。
その彼女に対してのお返しという訳では無いが、唯一俺に差し出せるアイテムが梨だった。
しかしその梨ですら彼女はジャムにして俺にも食べるように勧めてくれている。
挙句にジャム作りの共同作業まで提案してくれた。
じゃあ俺は彼女になにを差し出せばいいんだろう。
心ばかりの感謝の印。
何か気の利いたものはないだろうか。
俺はポケットの中の財布を確認する。
あいにく給料日前で手持ちは殆どなかった。
178円。
それが今の俺の全財産だった。
二学期の真ん中だから給食もあるし、花園リセが毎回持たせてくれる菓子類のお土産もある。
小泉が気を利かせてか毎回、学校全体の余った給食のパン(欠席者の物で個包装されている)をこっそりキープして横流ししてくれるという謎のアシストもあってか、有難いことに餓死はしない程度に生き延びることが出来ていた。
きちんと毎回3食にありつけるだけ幸運だった。
しかし、相変わらず所持金は限りなく心細かった。
今のこの所持金で何か買えるだろうか。
花園リセに渡すに足りるような物品がこの178円で買えるとは到底思えなかった。
女子にプレゼントするには定番のアイテム、クッキー?ケーキ?それともキャンディ?
しかし、もし買えたとしてもいつもハイレベルな手作り菓子を用意している花園リセにふさわしいクオリティのものではないだろう。
ではこの全財産で一体何が買えるというのか。
俺は目の前の店をチラリと見た。
ふわりとした軽やかな香りが漂う。
カラフルな色彩に囲まれていたのは花屋だった。
俺は店先の花を軽くざっと眺めてみた。
鉢植えやアレンジメントはかなりの値段だった。
とても手が届かない価格帯。
花も無理だよな…
諦めて引き返そうとした瞬間、レジのカウンターに数本挿してある花が目に飛び込んだ。
『プチプレゼントにいかがですか 一つ100円(税込)』
黄色の画用紙に書かれた手描きのポップが踊っている。
一輪の薔薇が透明なセロハンに包まれ、鮮やかなリボンが結んである。
100円。
所持金で買える金額だった。
俺はなんだか一日中落ち着かなかった。
今日は花園リセと一緒にジャムを作るのだ。
そう思うと何だかめちゃくちゃ緊張してくる。
放課後になるまで気が気ではなく、HRが終わると食い気味に急いで校門に向かう。
足早に通学路を急いだ。
商店街に差し掛かった所でふと俺は無意識に足を止めていた。
マサムネの事も俺のこともまるで家族のように親身になって面倒を見てくれる花園リセ。
その彼女に対してのお返しという訳では無いが、唯一俺に差し出せるアイテムが梨だった。
しかしその梨ですら彼女はジャムにして俺にも食べるように勧めてくれている。
挙句にジャム作りの共同作業まで提案してくれた。
じゃあ俺は彼女になにを差し出せばいいんだろう。
心ばかりの感謝の印。
何か気の利いたものはないだろうか。
俺はポケットの中の財布を確認する。
あいにく給料日前で手持ちは殆どなかった。
178円。
それが今の俺の全財産だった。
二学期の真ん中だから給食もあるし、花園リセが毎回持たせてくれる菓子類のお土産もある。
小泉が気を利かせてか毎回、学校全体の余った給食のパン(欠席者の物で個包装されている)をこっそりキープして横流ししてくれるという謎のアシストもあってか、有難いことに餓死はしない程度に生き延びることが出来ていた。
きちんと毎回3食にありつけるだけ幸運だった。
しかし、相変わらず所持金は限りなく心細かった。
今のこの所持金で何か買えるだろうか。
花園リセに渡すに足りるような物品がこの178円で買えるとは到底思えなかった。
女子にプレゼントするには定番のアイテム、クッキー?ケーキ?それともキャンディ?
しかし、もし買えたとしてもいつもハイレベルな手作り菓子を用意している花園リセにふさわしいクオリティのものではないだろう。
ではこの全財産で一体何が買えるというのか。
俺は目の前の店をチラリと見た。
ふわりとした軽やかな香りが漂う。
カラフルな色彩に囲まれていたのは花屋だった。
俺は店先の花を軽くざっと眺めてみた。
鉢植えやアレンジメントはかなりの値段だった。
とても手が届かない価格帯。
花も無理だよな…
諦めて引き返そうとした瞬間、レジのカウンターに数本挿してある花が目に飛び込んだ。
『プチプレゼントにいかがですか 一つ100円(税込)』
黄色の画用紙に書かれた手描きのポップが踊っている。
一輪の薔薇が透明なセロハンに包まれ、鮮やかなリボンが結んである。
100円。
所持金で買える金額だった。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる