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4章:変化する日常

3:夢の外

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「……ガレット」

 声を出して彼の名前を呼ぶ。すると、俺が目を覚ましたことに安心したのか、彼の表情が和らいだ。
ようやく目が覚めた、と俺も安堵する。
目が覚めた、というよりどちらかというと、夢から抜け出せた、とかようやく現実世界に戻ってこれた、という感覚が身体に走っていた。

「大丈夫かい? 随分うなされていたけれど……」
「……ああ。夢見が悪かっただけだから。大丈夫」
 俺が大丈夫だ、と答えても、それでもまだ不安そうな感覚が抜けきらないような声でガレットは言う。

「本当かい? 具合は悪くないかい?」

ちょっといいかい、と彼は言って、俺の前髪をそっとかきあげて、手の平を額に貼りつける。同じくらいの体温を感じる。むしろガレットの方が少しあたたかいくらい。

「……熱は、なさそうだね」
「ああ。体調も悪くないよ」

 体調が悪い時にもこの夢を見たことはあるけれど、
 手をつないだりだとか、この間みたいに意識をしてしまうかと思ったけれど、そういう感情は、あの夢を見た後だからか、今は起こらなくて、変わりに、柔らかな安心感があった。

 充電中のスマートフォンを開いて時間を確認する。表示されていたのは夜の12時過ぎ。眠ってからそこまで時間は経過していなかった。ガレットがいなかったら、朝まであの夢の中にいたのかもしれない。

「起こしちゃってごめん。ありがとう。もう、大丈夫」
「そうかい? ならいいけど……」

ガレットには大丈夫だ、と言ったけれど、もう一度眠るにしては、すっかり目が冴えてしまった。布団に入ってもなかなか寝付くことは出来なさそうだ。

 試しに、もう一度布団の上に寝転がった。柔らかい布団の感触。俺の体温がまだ残っている、少し目を閉じてみた。やっぱり、眠気は襲ってこなかった。

 ガレットは、俺が寝付くまで傍にいるつもりなのか、離れようとはしていない。どこか、俺がさっきうなされていたことを不安に感じているみたいだ。

「眠れそうかい?」

 Yesとは言えず、それでも、眠れない、と言ってもガレットに気を遣わせてしまいそうで、俺はどう答えればいいのかわからずに首をかしげてしまった。
 俺が答えるのを見て、ガレットは柔らかく微笑む。

「それじゃあ、二人で夜更かしをしようか」
「え、でも、明日……」
 
 元々遅く起きても大丈夫なように計画はしている。でも、今日夜更かしをしてしまえば、明日――日付が変わっているから今日に響いてしまかもしれない。ガレットは、朝、一緒に料理を作るのを楽しみにしているのに。

「キミが眠くなるまで、ワタシも付き合うよ」

 躊躇する俺を安心させるような口調。

「ありがとう。じゃあ、一緒に、夜更かししよう」

 俺は、ガレットの言葉に甘えることにした。
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