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3章:学校生活

5:ガレットとの学校生活

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 扉を開ける。俺に注目が集まる。いつも向けられているような、怖がったりとか怯えられたり、みたいな視線もある。けれど、それとはまた別の種類の視線が俺に向けられていた。 
 多分俺に視線を向けている全員が、俺とガレットの関係を知りたがってるんだと思う。
 視線を感じながら、俺の座席まで向かう。窓際の一番後ろの席。席替えの時にくじ引きをしたらここになった。39人クラスだったから、一人席が余って、俺の隣には誰もいなかった。けれど、俺の席の隣に机が置いてある。ガレットがここに座るんだろう。
 

「なあ、て、転校生と、どういう、関係なんだ……?」

 俺が席に着くと、怯え半分、興味本位半分、という感じで、野球部の桃山くんが話しかけてきた。クラスの中心によくいて、なんとなく印象的だったから名前を覚えていた。

「……。えっと……なんか、いろいろ、あって……」

 どこからどう説明すればいいのかわからなかった。さすがに「魔法使いだ」なんて本当のことを言えるわけがないし、うまい関係性も思いつかなくて。友達、とも、同級生、とも、家族、とも、恋人……も違う。
だから、ものすごくぶっきらぼうな答えになってしまった。

桃山くんは、まずいことを訊いた、という表情を浮かべている。俺のどうすればいいのかわからなかった、ぶっきらぼうな返答に対して、「これ以上話しかけるな」みたいに受け取ってしてしまったのかもしれない。

「あ、ああ……。わ、わかった……。ご、ごめん……」

 俺に謝罪をしながら、そそくさと、彼は席に戻っていく。

せっかく話しかけてくれたのに、なんだか、申し訳ないことをしてしまった。
 申し訳なさと居心地の悪さを感じてしまう。

 ……俺が、この調子だったら、俺と一緒にいるガレットにもしかしたら悪い評判が立ってしまうのかもしれない。
 そんな不安感がよぎる。

 どうすればいいのかわからないまま時間は過ぎていって、HRが始まった。

 担任の先生が教室に入り、いつも通り朝の挨拶をする。教室の扉のガラスからきらきらとした金髪が見える。背が高いから、彼が外にいるのが見えている。他の生徒の視線も、そちらへと向かっていた。

「今日からうちのクラスに転校生が来てくれた。みんな、仲良くしてほしい」

 教室にガレットが入った瞬間、わあ、と歓声が起きた。背筋をすっと伸ばして堂々と歩くガレット。さらりと揺れる綺麗な金髪。レリーフになってもおかしくないくらいの美しい横顔。クラス全員が彼の方に視線を向けていた。

 ガレットは黒板の前に立って、柔らかな笑みを浮かべる。

「今日からこのクラスに転校してきた、ガルレリッド・アーモドリア・ソイラーティヌ。と言うんだ。名前は長いと思うので略してガレットと呼んでほしい」

 よく通る声でガレットは自己紹介を始めた。
 出会った時に、長い、と言っていたガレットの本名を初めて聞いた。そういう名前なのか。
確かにその名前じゃ呼びにくいな、と思った。
 その後、ガレットは遠い国から来た、ということとか、まだ日本に来てあまり時間が経っていないこととか、嘘でもないけれど100パーセント本当ではない自己紹介をした。

「いろいろとわからないことだらけだが、よろしく頼むよ」

 自己紹介を終えると、ガレットはこっそり、俺の方に視線を向けた。ニュースの芸能コーナーで見た、アイドルが視線を合わせるような雰囲気で。

「じゃあ。ガレットくんは古谷くんの隣の席に座ってくれ」
「分かりました」

颯爽とした動きで、俺の隣に来るガレット。まるで絵本の中に出てくる、姫を迎えに来る王子様みたいな歩き方。その動きにクラス中の視線が集まっている。

 ガレットは、俺の隣に来る。家で隣同士になることは何度もあるというのに、なんだか落ち着かなかった。

「それじゃあ、これからも、よろしく頼むよ。章太郎」
「……ああ」

こうして、ガレットとの学校生活が始まった。
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