上 下
81 / 89
ロング帝国 ルーク

25話

しおりを挟む



〔さて、ぼく達も行こっか。〕
〔そうだね。お肉貰って帰ろう。〕
〔うん。〕

ハルは、アキを抱っこして部屋を出て、受付に向かった。

夕方ということもあって受付は混みあっていた。

〔結構混んでるね。〕
〔そうね。…………あ、ローガンさんのところ空いてる。〕
〔じゃあ、あそこ行こう。〕
〔うん。〕

ハルは、人混みを避け、昨日同様に空いているローガンの居る受付に向かった。

「ローガンさん。」
「おー、ハル、どうした。」
「お肉取りに来ました。」
「あー、ホルスタインな。ちょっと待ってろ。」
「はい。」

ローガンはハルの肉やお金などを取りに裏に行った。

「ほい、お待たせ。これが肉だ。確認したらしまえ。」
「はい。」

ハルはローガンの言う通りにリュックにしまう振りをしながらアキのインベントリに肉をしまった。

「金はギルドカードで良いか?」
「はい、お願いします。」

ハルはギルドカードをローガンに渡してお金を入れてもらった。

「ほらよ。」
「ありがとうございます。
そういえば、昼間の件大丈夫でしたか?」
「あぁ、とりあえず相手の貴族が分かったから手紙を送っといた。そのうち慰謝料が来ると思う。」
「え?慰謝料ですか……?」
「あぁ。子供に手出しといて謝罪だけで済むわけねえだろ。」
「いえ、済むと思いますけど。」
「貴族じゃ、そうもいかねーんだと。」
「へー」
「なにか来たら伝えるから。まだしばらくはこの町に居るか?」
「そうですね。ギルドでの依頼などに慣れるまでは居ると思います。」
「そうか。」
「それじゃあ、また来ますね。」
「あぁ、気を付けて帰れよ。」
「はい。」

ハルは、ローガンに挨拶をするとギルドをあとにした。










〔アキちゃんー〕
〔なーにー〕
〔今日はついてないねー〕
〔そうだねー〕

ハルはアキを抱っこしたまま宿に戻っていると、ギルドでローガンと話している時から感じていた嫌な視線が後を付けてきた。

ハルとアキは、サーチを使い、後ろを確認しながら歩いた。

〔3人だねー。なにか話してるかな?〕
〔どーだろ。聞いてみる?〕
〔うん。〕

2人は耳に魔力を込めて話しを聞くことにした。

「なぁ、ディランあのガキどうするんだ?」
「そうだな……」
「んなの決まってんだろ!俺様達の凄さを身に染みて解らせんだよ!!」
「どうやってだ?」
「んなもん、捕まえてぶん殴ってやればいい!」
「まぁ、そうだな。俺様達に挨拶も無しだしな。」
「そうだ!アイツ、挨拶に来てねぇ!」

〔ねぇ、アキちゃん〕
〔んー?〕
〔冒険者に挨拶って全員にしないといけないの?〕
〔さー?しなくていいんじゃない。他の人たちには何も言われてないし。〕
〔だよね。じゃああの人たちは?〕
〔んー……、ナルシストなんじゃない?〕
〔なる……え?〕
〔ごめん、前世の言葉使っちゃった。〕
〔そっかー。どうゆう意味?〕
〔んー、意味かぁ、どう説明したらいいかな……。
とりあえず、自分に酔ってる自分大好き人間の事を言うかな。〕
〔なるほど。理解した。〕
〔ほんとに!?〕
〔うん。〕
〔すご……〕
〔ふふっ〕

あとを付けてくる人達の話しを聞きながら話しをしながら歩いていく。
宿に迷惑を掛けないように宿を過ぎ、門を抜けて、近くの草原に来た。

「バカかアイツは。」
「ギャハハハ!俺様達に付けられてること気付いてねぇんだな!」
「そうだな、その可能性は高いな。」
「高いというか確実だろ!」
「で、どうするか。」
「捕まえたらいい!」
「暗くなってきたが、まだ探索から戻ってくる奴らがいるし、門番からも見える位置だ。迂闊には近寄れねぇ。」
「マジかよ!めんどくせー所に止まりやがって!」
「まぁ、そうだな。」
「ひとけが無くなるまで待つか?」
「んな事しねーで、さっさと捕まえて有り金全部貰おうぜ!」
「まぁ、そうだな。まだバレてねぇし、フリッツ、魔法で捕まえてくれ。」
「あぁ。」

〔お、捕まえるってどうする?〕
〔んー、近付く気は無さそうだしどうしよっか。〕
〔捕まえたって思ってたら自分達が捕まってたとかどお?〕
〔どうするの?〕
〔んー、土魔法で足元固めるとか。〕
〔うん、いいんじゃない。〕
〔やったっ!じゃあ、早速。〕

ハルは、フリッツと呼ばれた男が魔法の呪文を唱えている間に3人の足元をバレない程度に緩くして、地面に足が沈むと地面を固めた。

「目の前の子供を拘束せよ《ウィンドロープ》」

呪文を唱え終わり、魔法を発動させ、目に見えない風のロープがハルの周りに漂った。

〔なにこれ。こんなんで捕まえられるの?〕
〔無理でしょ。あの人、ただ単に呪文唱えて魔法発動させただけだよ。魔力全然こもってない。〕
〔ねー。でも、一応捕まろっか。〕
〔その必要無くない?〕
〔なんで?足が動かない反応見たくない?〕
〔まぁ。
でも、ハルが動けば『なんで?』ってなって追いかけてくるでしょ。〕
〔なるほどー、そうだね。〕
〔それで良くない?〕
〔それもそうだね。〕
〔じゃあ、宿に戻ろう。〕
〔あの人たちは?〕
〔いいんじゃない、ほっとけば。〕
〔そうねー、暗くなってきたけど、門番さんからはギリギリ見える位置だし大丈夫だよね。〕
〔うん。
ハルをぶん殴ってお金奪うなんて言ってたヤツらへのお仕置きとしては私は不満だけど、関わりたくないし帰ろ。〕
〔そうだね。今日は、色々あって疲れたしね。〕
〔うん。〕

ハルは、周りにある到底捕まえられないであろう風のロープを無視して町の方に歩いて行った。
もう声を聞く必要は無いから耳に込めた魔力を解除して町に戻って行った。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離婚を告げられることは、既に知っていましたので。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:51,710pt お気に入り:546

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,262pt お気に入り:7,529

リタイア賢者の猫ファーストな余生

HAL
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:342

いずれ最強の錬金術師?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,552pt お気に入り:35,440

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,072pt お気に入り:3,467

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:90,075pt お気に入り:30,015

お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:269pt お気に入り:7,497

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,111pt お気に入り:643

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:186,411pt お気に入り:7,574

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:795pt お気に入り:9,825

処理中です...