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ロング帝国 ルーク

25話 ディランside

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俺様は、ディラン。剣士だ。
冒険者をしている。
魔法使いのフリッツと斧戦士のゴードンの3人で『カンピーネ』というパーティを組み冒険者として活動している。

俺様達は、最強だ。
だが、何故かDランク冒険者だ。

この間なんかは、魔の森に入り、オークの子供1体を討伐した。
フリッツが魔法で足止めし、ゴードンが斧で足を切りつけ逃げられなくして、俺様がトドメに剣で滅多刺しにした。

ものすごく連携の取れた討伐だった。
しかし、金にはならなかった。
オークはギルドで高値で買い取って貰えるのに、1回の酒で消えてしまった。
意味が分からなかった。

しかも、ギルドに登録も出来ないであろうガキは、ホルスタインを高値で買い取ってもらっていた。
自分が討伐した訳でも無いのに売りに出し、しかも大金を手にしていた。
これは絶対、ギルド職員を籠絡して金を巻き上げたはずだ。
ガキのしかも男なんかを好きな変態なんかもいるからな。そんなヤツを見付けて身体を売ったんだ。絶対!

こちとら命掛けて魔物の討伐してるってのによ!

だから、そのガキから冒険者とはなにかを教え、不当に得た金を頂こう。

ギルドから出たガキを3人で追った。

「なぁ、ディランあのガキどうするんだ?」
「そうだな……」
「んなの決まってんだろ!俺様達の凄さを身に染みて解らせんだよ!!」
「どうやってだ?」
「んなもん、捕まえてぶん殴ってやればいい!」
「まぁ、そうだな。俺様達に挨拶も無しだしな。」
「そうだ!アイツ、挨拶に来てねぇ!」

どう捕まえ、金を貰うか考えていると、ゴードンが空っぽな頭でシンプルな事を言った。
捕まえて殴るのは冒険者とはなにかを伝えるためには必要だからやるとして、どう捕まえるかを聞いているのに、馬鹿なヤツだ。
ムキムキマッチョのゴードンの脳みそは、身体と同じで筋肉で出来てるんだな。
しかも、新人冒険者は、俺様達に挨拶に来るのが普通なのに来てない事にも気付いていなかった。

どう捕まえるか考えていると、ガキは何故か門を抜けて、近くの草原に向かった。

「バカかアイツは。」
「ギャハハハ!俺様達に付けられてること気付いてねぇんだな!」
「そうだな、その可能性は高いな。」
「高いというか確実だろ!」
「で、どうするか。」
「捕まえたらいい!」
「暗くなってきたが、まだ探索から戻ってくる奴らがいるし、門番からも見える位置だ。迂闊には近寄れねぇ。」
「マジかよ!めんどくせー所に止まりやがって!」
「まぁ、そうだな。」
「ひとけが無くなるまで待つか?」
「んな事しねーで、さっさと捕まえて有り金全部貰おうぜ!」
「まぁ、そうだな。まだバレてねぇし、フリッツ、魔法で捕まえてくれ。」
「あぁ。」

門から近い場所だが、スライムぐらいは出る草原で突っ立ってるガキを見ながらゴードンは、待てが出来ないのかソワソワしながら向かおうとした。
あまり目立ってギルドに目を付けられるのは避けたい。
俺様は、冷静に物事を判断出来るフリッツに頼むことにした。

「目の前の子供を拘束せよ《ウィンドロープ》」

フリッツは、拘束するための魔法、《ウィンドロープ》を使ってガキを拘束した。

かに思えたが、何故かガキは歩き始めた。

「は?」
「おい!フリッツ!なにしてんだ!!さっさと捕まえろ!」
「やったさ!何故だ。何故あのガキは動ける…………。」

フリッツの魔法は、何故か効かず、ガキは町に戻って行った。

「おい、行くぞ。」
「「あぁ!」」

町に入られると不味い。見失う可能性があるし、町中で堂々と捕まえるのはさすがに不味い。

グンッ

「「「っ、」」」
「なんだ?」
「は?」
「どうなってんだよ!!?」

ガキを追いかけようとした俺様達の足は何故か動かなかった。

下を見ると、何故か足が地面に埋まっていた。

「っ、」
「っ、くっそ……!」
「ぐがぁぁ!!」

膝を手で持って持ち上げようとしても足は抜けずに地面に埋まっている。
ゴードンは、馬鹿力で足を抜こうとするが、ゴードンの力でも抜く事は不可能だった。

「っ、どうなってんだっ……。」

なにがどうなってるのか分からないが、とりあえず足を抜かなくてはっ!

「くっ、ぐぅっ、」

どんなに力を入れて抜こうとしても抜けず、徐々に体力が奪われていった。

「はぁ、はぁ、はぁ………。」

どのくらい時間が経ったか分からないが、太陽は完全に沈み、月が真上に来ていた。

「「「はぁ……、はぁ……、はぁ……」」」

3人とも体力の限界まで力を使ったが、全く抜く事が出来なかった。

俺様は力で抜くのを一旦諦めて良い方法は無いか考えた。

「…………、あ、」
「どうした、ディラン。」
「フリッツ、魔力残ってるか?」
「は?まぁ、多少は。」
「なら、地面を水魔法で柔らかくしてくれ。そうしたら抜けるかもしれない。」
「っ!それだっ!」
「さすがディランだ!天才だな!」
「だろ!頼むフリッツ。」
「あぁ!」

フリッツは、俺様の解決策を早速実践してくれた。
フリッツは、風魔法の他に水魔法も使えるセカンド魔法使いなのだ。

フリッツの水魔法のおかげで地面はぬかるみ、最後の力を振り絞り足を引き抜いた。

「「「おらっ!!!」」」

スポンッ

片方が抜けるともう片方なんか楽に抜けた。

「「「はぁ……、はぁ……、はぁ……」」」
「助かったぜフリッツ!」
「あぁ、お前のおかげだ。」
「あ、あぁ………、」
「すまないな、疲れてるのに魔法まで使わせちまって。」
「いや、ディランの解決策のおかげで足が抜けたんだ、逆に感謝するよ。」

俺様達は、少し休憩すると、肩を抱き合い町に戻って行った。

疲れたが、仲間の絆が強くなったぜ!!





※彼らは、マヌケなことにディランの解決策が出るまでの約4時間、手で膝を持ち自力で足を抜こうとしていた。
ハルは鑑定を使いフリッツが水魔法も使える事に気付いたため、水に濡れると緩くなるように地面に魔法を掛けていた。


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