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第1章
第17話 放棄
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「オクライナの領主はいるか?」
オクライナにやってきたのはウラスの王の近衛兵シンザリオ。文を持ち閉められた門の前で城壁上の兵士に声をかけた。
「王の文を持ってきた。開門せよ」
シンザリオの言葉で門が開いていく。
「援軍は? 援軍ではないのか!?」
シンザリオを傷だらけの領主ライナが迎えて声を荒らげた。待ちに待った援軍だと思ってぬか喜びした。
残念ながらウラスの王ラエラルは援軍を向かわせることはない。それ故に愚王と蔑まれているのだ。
「援軍ではないが少しの間休むがいい。これが王からの文だ」
シンザリオは文を渡すと城壁上に登っていった。
ライナは膝を落として落胆していた。やっとのことで開いた文には残酷な言葉が並べられていた。
「『お前のところの民が農場を作り出している。早急に壊すように』……なにを言っているんだ。こっちは命をかけているというのに」
ライナは文を握りしめ言葉を吐いた。
「愚王ラエラルとはよく言ったものだな。よし! おかげで決心がついた!」
落胆から呆れに変わったライナは何かを決心して立ち上がる。疲労がピークになっていたライナは少しふらつきながら城壁上へと登った。
「みな! 聞いてくれ。俺は決心した」
城壁上にあがるとライナは叫ぶ。そして兵士達が驚く言葉を吐いた。
「この町を放棄する!」
急な領主の言葉に兵士たちは驚き戸惑った。しかし、終わりのみえない戦いに終わりが訪れて少しずつ嬉しさで涙を流し始めた。
「終わったのか……」
「だけど故郷が……」
「命の方が大事だ」
それぞれ近くにいた兵士同士でそんな声が聞こえてくる。
誰も故郷を犠牲になどしたくないと思ってはいるもののこのまま援軍もなしに戦うのは自殺と同じ。そう考える兵士達は涙して領主に歓声をあげた。
「考えはわかった。では私がしんがりをしよう」
「そ、そんな! シンザリオ様は……」
「大丈夫だ。私は殺されても死なん」
「すみません……」
幾多もの戦場を渡り生き延びてきた戦士シンザリオ。彼はオクライナに残り敵の的になることを選択する。
彼一人ならば生きて帰ってくることはできるかもしれないと判断したのだろう。
「怪我人を馬車へ。馬に乗れるものは乗れ歩けるものは馬車に続け!」
門が開き王都への道へと領主ライナは走り出した。
丁度その時、反対の門に魔物達が群がりシンザリオの火柱が上がる。炎の中で魔物を蹴散らすシンザリオ。彼は英雄として名をはせるのだった。
◇
「よう。やってるな」
「いらっしゃいグライアスさん」
農場に家も建ててくつろいでいるとグライアスさんがやってきた。オクライナのみんなの中には大工さんが多くいる。木材さえあれば何でも建てられるから家なんかも簡単につくっちゃうんだよな~。
それに最近気づいたんだけど、みんな体格が一回り大きくなったように感じる。
食べているものがBランクの魔物だから栄養がいいのかもしれない。
グライアスさんはお母さんに勧められて椅子に座ると街での話をし始めた。
「あの青年達に関して何だが、悪い噂を耳にしたんだ」
グライアスさんはそう話しだして続ける。
「青年達のリーダーが貴族の息子でね。その貴族っていうのも失格紋のあるものを毛嫌いしているらしい。農場のこともよくおもっていないみたいでね。悪い噂が絶えないよ」
「そうですか……」
農場の道具を買ったお店のおじさんから聞いた話をおとうさんにしたらグライアスさんに相談しようってことになって話しておいたんだ。
グライアスさんはいたるところに知り合いがいて、情報通なのですぐに情報を掴んできたよ。
思っていた通り、狙っているのはあの青年の親っぽいね。武器なんかも買いあさっているらしいから色々ときな臭い。
「その貴族は現王を失墜させようとしている男らしい。そのくせ王のそばにいる男。シンザリオをオクライナに行くようにしたのもその貴族らしい」
「シンザリオ?」
「ああ、最強の兵士だよ。王の近衛兵だったんだが、なぜかオクライナに文を届けに行ったんだ。その間に何かを起こそうとしている可能性があるな」
なるほどね。クーデターみたいなことを起こそうとしている可能性があるってことか。愚王の次は暴王かな?
「できればランネローゼ様に手紙がだせればいいんだがな」
「ランネローゼ様に?」
「お? 知ってるか? ランネローゼ姫を」
「知っているも何も今度遊びに来るわ」
「こんにちは~」
噂をすればランネローゼ様がやってきた。近所の少女が遊びに来たくらいのテンションで扉を開けて入ってきました。
毎回、クリスさんが可愛そうなくらい顔を真っ赤にしている。近衛兵だけど使用人みたいな立場みたいだから恥ずかしいのかもしれないな。
「ランネローゼ様!」
「あら? グライアス商会の? あなたも来ているのね」
グライアスさんが跪いて首を垂れた。ランネローゼさんは『楽にして大丈夫よ』というとグライアスさんはソファーに座らずに後ろに立ってしまった。
やっぱり王族ってそういう存在だよね。ランネローゼさんが軽すぎるんだ。
「一緒に座っても大丈夫なのに」
「ランネローゼ様、あれが普通です」
まるで僕らが普通じゃないようないいようですねクリスさん。あなたもなかなか普通じゃないと思いますけどね。
「それで何の話をしていたの?」
来る前の話を聞いてきたランネローゼさんにグライアスさんの話をするとプルプルと震えだして、
「反逆じゃない!」
と叫んだ。クリスさんも憤りをあらわにしている。
「シンザリオが帰ってくる前にやるかもしれないって今まさに起こってもおかしくないわ! クリスすぐに手配を! グライアス。こういうことはもっと早く知らせてちょうだい。この紋章を渡しておくわ。これをかざせばすぐに私を呼べるから!」
「あ、はい……」
グライアスさんは唖然としながら二人を見送った。僕らも唖然です。
嵐のように去った二人はこの後、青年の親と青年達を捕まえた。やはり青年達の屋敷からはごろつきのような男達と武器が見つかったらしい。ご丁寧に契約書類まで残していて、言い逃れもできない状況だったとか。
彼らは鉱山奴隷として山の街へと向かうらしいです。迫害していた人が奴隷になるなんて因果応報だね。
オクライナにやってきたのはウラスの王の近衛兵シンザリオ。文を持ち閉められた門の前で城壁上の兵士に声をかけた。
「王の文を持ってきた。開門せよ」
シンザリオの言葉で門が開いていく。
「援軍は? 援軍ではないのか!?」
シンザリオを傷だらけの領主ライナが迎えて声を荒らげた。待ちに待った援軍だと思ってぬか喜びした。
残念ながらウラスの王ラエラルは援軍を向かわせることはない。それ故に愚王と蔑まれているのだ。
「援軍ではないが少しの間休むがいい。これが王からの文だ」
シンザリオは文を渡すと城壁上に登っていった。
ライナは膝を落として落胆していた。やっとのことで開いた文には残酷な言葉が並べられていた。
「『お前のところの民が農場を作り出している。早急に壊すように』……なにを言っているんだ。こっちは命をかけているというのに」
ライナは文を握りしめ言葉を吐いた。
「愚王ラエラルとはよく言ったものだな。よし! おかげで決心がついた!」
落胆から呆れに変わったライナは何かを決心して立ち上がる。疲労がピークになっていたライナは少しふらつきながら城壁上へと登った。
「みな! 聞いてくれ。俺は決心した」
城壁上にあがるとライナは叫ぶ。そして兵士達が驚く言葉を吐いた。
「この町を放棄する!」
急な領主の言葉に兵士たちは驚き戸惑った。しかし、終わりのみえない戦いに終わりが訪れて少しずつ嬉しさで涙を流し始めた。
「終わったのか……」
「だけど故郷が……」
「命の方が大事だ」
それぞれ近くにいた兵士同士でそんな声が聞こえてくる。
誰も故郷を犠牲になどしたくないと思ってはいるもののこのまま援軍もなしに戦うのは自殺と同じ。そう考える兵士達は涙して領主に歓声をあげた。
「考えはわかった。では私がしんがりをしよう」
「そ、そんな! シンザリオ様は……」
「大丈夫だ。私は殺されても死なん」
「すみません……」
幾多もの戦場を渡り生き延びてきた戦士シンザリオ。彼はオクライナに残り敵の的になることを選択する。
彼一人ならば生きて帰ってくることはできるかもしれないと判断したのだろう。
「怪我人を馬車へ。馬に乗れるものは乗れ歩けるものは馬車に続け!」
門が開き王都への道へと領主ライナは走り出した。
丁度その時、反対の門に魔物達が群がりシンザリオの火柱が上がる。炎の中で魔物を蹴散らすシンザリオ。彼は英雄として名をはせるのだった。
◇
「よう。やってるな」
「いらっしゃいグライアスさん」
農場に家も建ててくつろいでいるとグライアスさんがやってきた。オクライナのみんなの中には大工さんが多くいる。木材さえあれば何でも建てられるから家なんかも簡単につくっちゃうんだよな~。
それに最近気づいたんだけど、みんな体格が一回り大きくなったように感じる。
食べているものがBランクの魔物だから栄養がいいのかもしれない。
グライアスさんはお母さんに勧められて椅子に座ると街での話をし始めた。
「あの青年達に関して何だが、悪い噂を耳にしたんだ」
グライアスさんはそう話しだして続ける。
「青年達のリーダーが貴族の息子でね。その貴族っていうのも失格紋のあるものを毛嫌いしているらしい。農場のこともよくおもっていないみたいでね。悪い噂が絶えないよ」
「そうですか……」
農場の道具を買ったお店のおじさんから聞いた話をおとうさんにしたらグライアスさんに相談しようってことになって話しておいたんだ。
グライアスさんはいたるところに知り合いがいて、情報通なのですぐに情報を掴んできたよ。
思っていた通り、狙っているのはあの青年の親っぽいね。武器なんかも買いあさっているらしいから色々ときな臭い。
「その貴族は現王を失墜させようとしている男らしい。そのくせ王のそばにいる男。シンザリオをオクライナに行くようにしたのもその貴族らしい」
「シンザリオ?」
「ああ、最強の兵士だよ。王の近衛兵だったんだが、なぜかオクライナに文を届けに行ったんだ。その間に何かを起こそうとしている可能性があるな」
なるほどね。クーデターみたいなことを起こそうとしている可能性があるってことか。愚王の次は暴王かな?
「できればランネローゼ様に手紙がだせればいいんだがな」
「ランネローゼ様に?」
「お? 知ってるか? ランネローゼ姫を」
「知っているも何も今度遊びに来るわ」
「こんにちは~」
噂をすればランネローゼ様がやってきた。近所の少女が遊びに来たくらいのテンションで扉を開けて入ってきました。
毎回、クリスさんが可愛そうなくらい顔を真っ赤にしている。近衛兵だけど使用人みたいな立場みたいだから恥ずかしいのかもしれないな。
「ランネローゼ様!」
「あら? グライアス商会の? あなたも来ているのね」
グライアスさんが跪いて首を垂れた。ランネローゼさんは『楽にして大丈夫よ』というとグライアスさんはソファーに座らずに後ろに立ってしまった。
やっぱり王族ってそういう存在だよね。ランネローゼさんが軽すぎるんだ。
「一緒に座っても大丈夫なのに」
「ランネローゼ様、あれが普通です」
まるで僕らが普通じゃないようないいようですねクリスさん。あなたもなかなか普通じゃないと思いますけどね。
「それで何の話をしていたの?」
来る前の話を聞いてきたランネローゼさんにグライアスさんの話をするとプルプルと震えだして、
「反逆じゃない!」
と叫んだ。クリスさんも憤りをあらわにしている。
「シンザリオが帰ってくる前にやるかもしれないって今まさに起こってもおかしくないわ! クリスすぐに手配を! グライアス。こういうことはもっと早く知らせてちょうだい。この紋章を渡しておくわ。これをかざせばすぐに私を呼べるから!」
「あ、はい……」
グライアスさんは唖然としながら二人を見送った。僕らも唖然です。
嵐のように去った二人はこの後、青年の親と青年達を捕まえた。やはり青年達の屋敷からはごろつきのような男達と武器が見つかったらしい。ご丁寧に契約書類まで残していて、言い逃れもできない状況だったとか。
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