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本編
21 生殺し
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セオドア様に別れを告げて、その腕の中から出ようとして──止められた。私の腕を捕んだセオドア様は、一瞬見せた驚きの様相などなかったかのような、いつも通りの冷静な彼に戻っている。
「……それはどういうことでしょうか?」
「はい、当初のお約束通り、ちゃんと元の関係に戻ると言うことで……」
「──エリカ、僕が君を逃がすと思っているのですか?」
途端、スピアリング卿が言っていた言葉を思い出す。
『ならば試してみればいい。貴女の口から愛していると、話せばいい。だが……記憶を失っていても、あの人の大元は変わらないはず。その言葉を口にした瞬間から、彼はけして貴女を逃がさないだろう』
まさか、そんな……
どうにか離れようと捕まれた手を振りほどこうとして──けれどいとも簡単に引き寄せられ、胸元に抱え込まれる。
「セオドア、様……?」
「これは事の最中にも言ったことですが……君は僕の子を成せばいいと」
何故だろう。顔はいつも通りお綺麗で美しくて、あまり感情を表に出さないセオドア様なのに。どことなく怖い気がするのは……
激情こそ顔に殆ど出されないけれど。セオドア様がいつになく、とても怒っているような気がした。
「君の体からは僕の匂いがする。そして、君の着る服も……その内側も僕のモノを注ぎ込んで……内も外も全部僕のモノで満たしたつもりだったけれど……」
淡々と耳に心地よく響く、セオドア様の美声。しかしその内容は……やっぱりセオドア様は怒っていた。逃げることは許さない。逃しはしないと、私の背中に回された手にグッと力が入った。
「──まだ、足りていなかったようですね」
「っ!」
刹那、表れた夜行性の獣のように光る、鋭すぎるセオドア様の眼光。気圧されて、私は暫し言葉を失っていた。
セオドア様に腰に手を回されて、互いに見つめ合う距離。ここ数日で、ベッドの上で愛し合い、キスをすることが普通の関係になってしまったのは事実だ。
セオドア様の手に体を触れられていた生々しい感触が、常に体に残っている生活。セオドア様のシャツを着て、セオドアの腕に抱かれて、いつでも体を重ねて愛し合うことができる格好でいる。それが普通になってしまっている。
困ったことに、人間のセオドア様が私を恋人としてずっと傍に置くつもりでいるのが本心だと、それが本心ではないと否定する要素が一つもない。
甘く優しい生活を与えられている。一分の隙も無いほどに、セオドア様は完璧に私を恋人として扱っていた。もしくはそれ以上の存在として、愛してくれているのが分かるほどに。
だからセオドア様の優しさに流されて、延々あそこに彼を受け入れて、応えてしまった。
まるで未来を許された、本当の恋人のように。けれどそれは……
「で、でも本当なら……これは一夜限りで、元の関係に戻るはずで……」
「それを約束した覚えはありませんよ」
「っ!」
やんわりと、しかしキッパリ否定される。確かにそれは、私が一方的に告げただけで、セオドア様は一度も了承したとはおっしゃらなかった。
頭の回転が良い人だ。あっさり軽やかに、セオドア様は面倒な話を躱していく。
「君はもう僕の恋人です。義妹では抱けないと、僕は言ったはずです」
セオドア様が私の頬に手を添え、唇を寄せ──重ねられそうになる。仲直りのキスを求められている。けれどそれを、私は拒絶した。
「いけませんっダメなんです……! 私は……本当のセオドア様とはこんなこと許されな……」
「──本当の僕?」
いつも通りの淡白な受け答え。けれど、ふっと浮かべたセオドア様の静かな冷笑にハッとする。私はとんでもない失言をしてしまった。
「ぁっ……ごめんなさっ……──っんん!」
顎を掴まれ、今度こそ唇を塞がれる。強引に唇を深く重ねて、暫くしてから私を解放すると、セオドア様は私をベッドの上に押し倒した。私の上に覆い被さってくる。
「ふあっ、あっ、待ってっ……ダメですセオドア様っ。これ以上はもう……私たちは関係を続けてはダメなんです……!」
また抱かれてしまえば、きっと流される。セオドア様の胸元を押して、拒絶する。すると、セオドア様の瞳が妖しく光った。美しいアイスブルーの瞳が、違う色へと変わっていく。まるで人のものではない、何か別のものを宿しているような──赤く光る深紅の瞳。
「愛しています。魔眼を使って心を支配し、僕以外の男について考えることを止めるよう誓わせ、もう二度と……君を人目にさらしたくないと思うほどに……」
普段温厚なセオドア様の、あまりに強すぎる独占欲に驚く。
「セオドア様……私……」
魔眼とは吸血鬼特有の能力で、目を合わせた相手の意識を支配し、意のままに操ることができる。そんな現実的にあり得ないような力、どこかおとぎ話の世界のように感じていたのだが……目の前のこの方は、今、それができる。
彼が人でないことを、こんな形で見せられて、指先からカタカタと怖がって震え始めた。
「……もちろん、この魔眼を使って君を傷つけるような真似はしません」
腕の中にいる私の怯えに気付いたのか、セオドア様は「言葉の綾ですよ」と、苦笑すると、瞳を閉じた。次に瞳を開いたときには、元の涼やかな青に戻って、ホッとする。
「院長先生のお話では、セオドア様が記憶を取り戻したとき、記憶喪失だった頃の記憶は消えてしまうそうなのです。だから私たちのこの関係は……続けてはいけないんです」
ゆっくりと丁寧に、そして突き放すためにそう言った。セオドア様は私の言葉を静かに聞いていて、それから落ち着き払った様相で口を開いた。
「分かりました。いいでしょう。僕が記憶を取り戻して、君のことを忘れてしまったときは、君の要求を受け入れます」
「ありがとうございます……!」
セオドア様の事務的で淡々とした口調に、良かった……と、胸を撫で下ろす。しかし同時に、淋しさで胸が張り裂けそうになった。
私にはセオドア様以外の誰かを、異性として愛することはきっともう、一生できない。ずっと独り身で、この思い出だけを糧に生きていくことになるけれど……これで本来のセオドア様に不快な思いをさせなくてすむ。
たとえ記憶が戻らなくても、セオドア様には私ではなく、他にもっと相応しい方がいるわ。私以外の誰かを愛して、私なんて直ぐに忘れてしまわれる……。これでこのことは解決し……
「──ただし、僕が君を忘れなかった場合、君には僕の子供を産んでもらう。これから本物の家族になればいい。そして君にはずっと、僕の傍にいてもらいます」
「セオドア様の、子供を……産む……」
あれ? 解決どころか、悪化した……?
「もっとも、僕の記憶が戻る前に、君を孕ませることになるかもしれないけれど……それとももう中にいるか……」
私の上に覆い被さっているセオドア様が、優しく私のお腹をさすった。思わずきゅっと目を瞑る。あれだけされていたのに、セオドア様の赤ちゃんがお腹にだなんて……あり得なさすぎて考えたこともなかった。
「でも、異種族間ではあまり子供が出来にくいって、だからそんなこと無理で……」
「ならば時間をかけて孕ませることにしましょう。子供ができるまで何度でも、何時間でも、君を抱く……これ以上は譲れない。……いや、元より譲る気はありませんが」
そう言って、セオドア様は、好戦的にアイスブルーの瞳を光らせた。迫力に呑まれている私に、セオドア様はまた、野性味を帯びた鋭過ぎる眼光を向けて、有無を言わせず約束させてしまった。
「僕に抱かれて中に子種を植え付けられているときの君は、完全に僕のモノになった顔をしているのに……」
「きゃっ!」
私が放心いる間に、セオドア様が私の下着を脱がした。途端、露になった局部が外気にさらされて、少しひやっとする。慣れた手付きで、足を開かされて……私も抵抗を忘れていつも通り、素直に従ってしまっていたそこへ、セオドア様が顔を埋めた。
「あっ! 待ってセオドアさ──ひっ」
朝昼晩と、絶え間なく中に子種を注ぎ込まれて、いつもセオドア様の精液と愛液でしっとりと濡れているあそこを、セオドア様が指先で開いてチュッと口づける。
そのまま花弁を舌先で押し開き、舌を入れ込んで、私のそこがセオドア様を受け入れられるか、中の具合を確かめられている。
「いやぁっセオドア様っ……やめっ……ぁっぁっ」
セオドア様の綺麗な長い銀髪を引っ張るようにすると、両手を掴まれた。私の両手を、私の腰の横辺りに押さえつけて、セオドア様は再びあそこに顔を埋め、膣口に舌を入れ込んでしまった。
「ふぁっ……あんっぁっ……」
いつも行為を始める前に、セオドア様は必ずあそこをトロトロに舐め溶かしてから挿入する。私を傷付けないようにするために。
そこに柔らかく唇を押し当てながら、ほぐすために沢山舐められる。
セオドア様が私の秘所に綺麗な顔を埋めて、舌と唇を使ってあそこを愛している。思うだけで、顔から火が出るくらい私は恥ずかしいのに、セオドア様は当然とそこを愛し続けてしまう。
やがてチュグッチュグッと卑猥な水音が陰部から聞こえはじめて、唾液と愛液でしとどに濡れたあそこから、ツゥーと流れ落ちる幾筋もの液体が、シーツを汚していく。
「んっんっ……んあっ」
せめて声を出さないように頑張っているのに、セオドア様の甘い愛撫に膣口がヒクつき、快感が止まらない。
熱く、汗の流れる私の太ももを、セオドア様が更に大きく開かせた。足をシーツに押し付け、更に深く、中に舌を差し入れられる。嫌々言ってもセオドア様はいつも、私の局部の根元に顔を埋めるのを止めてくれないから、結局最後までイカされてしまう。
ビクビクと震える体でシーツを必死に掴みながら耐えて、しかし、あと少しで達してしまう寸前のところで、セオドア様が膣内に入れ込んでいた舌をズルッと引き抜いてしまった。
「ひゃんっ!」
腰を中心に、全身がセオドア様から与えられた快感にガクガクして、止まらない。セオドア様が口元の愛液を片手で拭った。そして──腰を掴まれ、日夜散々愛されセオドア様を受け入れることを覚えたそこへ、クチュッと屹立をあてがわれてしまう。
「きゃあっ」
「君が僕を愛していると知っているのに、離すつもりはありませんよ」
「セオドア、様……こんな……ダメで……」
「──愛しています、君は僕のモノだ。誰にも渡さない。そして僕は……君を忘れない」
入り口に少し肉棒を当てられただけなのに、もう瞳が情欲に潤んでしまっているのが、自分でも分かる。体は素直に、セオドア様を欲しがっていた。
こんな中途半端に入り口だけ当てられて……まるで生殺しだわ……。
「僕が欲しいですか?」
「…………」
「エリカ?」
ふるふると首を横に振る。──が、
「嘘をついても分かります。君のここは、これを咥え込みたがっている。こんなに熱く蜜を流してヒクつかせているのに……僕が欲しいと言って下さい。エリカ……」
それでもなかなか欲しいと言わない私に、セオドア様が「仕方ないですね」と嘆息して、あそこから肉棒を外した。しかし代わりに、セオドア様は指でその入り口を開いた。そして指で入り口を押さえている手とは別の、他方の手の指先を入れ込んで──一気に、ズンッと指を二本、根本までずっぷり埋め込んでしまった。
「ひっ! いやぁっやっセオドア様やめっひっ」
更には男根で抽送するときと同じように、二本の指でそこを突き上げ、根本までずっぷりと入れたり、入り口ぎりぎりまで引き出したりを繰り返した。
「いやぁっセオドア様っやめっふぁっあんっあんっ」
シーツに身を埋めて泣く私の制止を無視して、ちゅぷっちゅぷっと卑猥な水音を立てながら、セオドア様の美しい二本の指が、中を攻め、突き上げるのが絶え間なく続いて──
「ひあぁぁぁぁあっ!」
遂に達してしまった気持ちよさに、全身がビクビクと跳ね上がる。セオドア様が中から指をズルッと引き出すと、愛液が絡んでねっとりと光沢を帯びた指を私に見せつけた。
「こんなに感じているのに、まだ言う気にはなりませんか?」
「あっあっ……ひぅっ……せっセオドア様っ、こんなのふぁっ……ズルい、です……」
涙目で抗議すると、セオドア様が愛おしそうに私を見つめて、快感に震えている私の唇に、しっとりと深く唇を重ねた。
「……それはどういうことでしょうか?」
「はい、当初のお約束通り、ちゃんと元の関係に戻ると言うことで……」
「──エリカ、僕が君を逃がすと思っているのですか?」
途端、スピアリング卿が言っていた言葉を思い出す。
『ならば試してみればいい。貴女の口から愛していると、話せばいい。だが……記憶を失っていても、あの人の大元は変わらないはず。その言葉を口にした瞬間から、彼はけして貴女を逃がさないだろう』
まさか、そんな……
どうにか離れようと捕まれた手を振りほどこうとして──けれどいとも簡単に引き寄せられ、胸元に抱え込まれる。
「セオドア、様……?」
「これは事の最中にも言ったことですが……君は僕の子を成せばいいと」
何故だろう。顔はいつも通りお綺麗で美しくて、あまり感情を表に出さないセオドア様なのに。どことなく怖い気がするのは……
激情こそ顔に殆ど出されないけれど。セオドア様がいつになく、とても怒っているような気がした。
「君の体からは僕の匂いがする。そして、君の着る服も……その内側も僕のモノを注ぎ込んで……内も外も全部僕のモノで満たしたつもりだったけれど……」
淡々と耳に心地よく響く、セオドア様の美声。しかしその内容は……やっぱりセオドア様は怒っていた。逃げることは許さない。逃しはしないと、私の背中に回された手にグッと力が入った。
「──まだ、足りていなかったようですね」
「っ!」
刹那、表れた夜行性の獣のように光る、鋭すぎるセオドア様の眼光。気圧されて、私は暫し言葉を失っていた。
セオドア様に腰に手を回されて、互いに見つめ合う距離。ここ数日で、ベッドの上で愛し合い、キスをすることが普通の関係になってしまったのは事実だ。
セオドア様の手に体を触れられていた生々しい感触が、常に体に残っている生活。セオドア様のシャツを着て、セオドアの腕に抱かれて、いつでも体を重ねて愛し合うことができる格好でいる。それが普通になってしまっている。
困ったことに、人間のセオドア様が私を恋人としてずっと傍に置くつもりでいるのが本心だと、それが本心ではないと否定する要素が一つもない。
甘く優しい生活を与えられている。一分の隙も無いほどに、セオドア様は完璧に私を恋人として扱っていた。もしくはそれ以上の存在として、愛してくれているのが分かるほどに。
だからセオドア様の優しさに流されて、延々あそこに彼を受け入れて、応えてしまった。
まるで未来を許された、本当の恋人のように。けれどそれは……
「で、でも本当なら……これは一夜限りで、元の関係に戻るはずで……」
「それを約束した覚えはありませんよ」
「っ!」
やんわりと、しかしキッパリ否定される。確かにそれは、私が一方的に告げただけで、セオドア様は一度も了承したとはおっしゃらなかった。
頭の回転が良い人だ。あっさり軽やかに、セオドア様は面倒な話を躱していく。
「君はもう僕の恋人です。義妹では抱けないと、僕は言ったはずです」
セオドア様が私の頬に手を添え、唇を寄せ──重ねられそうになる。仲直りのキスを求められている。けれどそれを、私は拒絶した。
「いけませんっダメなんです……! 私は……本当のセオドア様とはこんなこと許されな……」
「──本当の僕?」
いつも通りの淡白な受け答え。けれど、ふっと浮かべたセオドア様の静かな冷笑にハッとする。私はとんでもない失言をしてしまった。
「ぁっ……ごめんなさっ……──っんん!」
顎を掴まれ、今度こそ唇を塞がれる。強引に唇を深く重ねて、暫くしてから私を解放すると、セオドア様は私をベッドの上に押し倒した。私の上に覆い被さってくる。
「ふあっ、あっ、待ってっ……ダメですセオドア様っ。これ以上はもう……私たちは関係を続けてはダメなんです……!」
また抱かれてしまえば、きっと流される。セオドア様の胸元を押して、拒絶する。すると、セオドア様の瞳が妖しく光った。美しいアイスブルーの瞳が、違う色へと変わっていく。まるで人のものではない、何か別のものを宿しているような──赤く光る深紅の瞳。
「愛しています。魔眼を使って心を支配し、僕以外の男について考えることを止めるよう誓わせ、もう二度と……君を人目にさらしたくないと思うほどに……」
普段温厚なセオドア様の、あまりに強すぎる独占欲に驚く。
「セオドア様……私……」
魔眼とは吸血鬼特有の能力で、目を合わせた相手の意識を支配し、意のままに操ることができる。そんな現実的にあり得ないような力、どこかおとぎ話の世界のように感じていたのだが……目の前のこの方は、今、それができる。
彼が人でないことを、こんな形で見せられて、指先からカタカタと怖がって震え始めた。
「……もちろん、この魔眼を使って君を傷つけるような真似はしません」
腕の中にいる私の怯えに気付いたのか、セオドア様は「言葉の綾ですよ」と、苦笑すると、瞳を閉じた。次に瞳を開いたときには、元の涼やかな青に戻って、ホッとする。
「院長先生のお話では、セオドア様が記憶を取り戻したとき、記憶喪失だった頃の記憶は消えてしまうそうなのです。だから私たちのこの関係は……続けてはいけないんです」
ゆっくりと丁寧に、そして突き放すためにそう言った。セオドア様は私の言葉を静かに聞いていて、それから落ち着き払った様相で口を開いた。
「分かりました。いいでしょう。僕が記憶を取り戻して、君のことを忘れてしまったときは、君の要求を受け入れます」
「ありがとうございます……!」
セオドア様の事務的で淡々とした口調に、良かった……と、胸を撫で下ろす。しかし同時に、淋しさで胸が張り裂けそうになった。
私にはセオドア様以外の誰かを、異性として愛することはきっともう、一生できない。ずっと独り身で、この思い出だけを糧に生きていくことになるけれど……これで本来のセオドア様に不快な思いをさせなくてすむ。
たとえ記憶が戻らなくても、セオドア様には私ではなく、他にもっと相応しい方がいるわ。私以外の誰かを愛して、私なんて直ぐに忘れてしまわれる……。これでこのことは解決し……
「──ただし、僕が君を忘れなかった場合、君には僕の子供を産んでもらう。これから本物の家族になればいい。そして君にはずっと、僕の傍にいてもらいます」
「セオドア様の、子供を……産む……」
あれ? 解決どころか、悪化した……?
「もっとも、僕の記憶が戻る前に、君を孕ませることになるかもしれないけれど……それとももう中にいるか……」
私の上に覆い被さっているセオドア様が、優しく私のお腹をさすった。思わずきゅっと目を瞑る。あれだけされていたのに、セオドア様の赤ちゃんがお腹にだなんて……あり得なさすぎて考えたこともなかった。
「でも、異種族間ではあまり子供が出来にくいって、だからそんなこと無理で……」
「ならば時間をかけて孕ませることにしましょう。子供ができるまで何度でも、何時間でも、君を抱く……これ以上は譲れない。……いや、元より譲る気はありませんが」
そう言って、セオドア様は、好戦的にアイスブルーの瞳を光らせた。迫力に呑まれている私に、セオドア様はまた、野性味を帯びた鋭過ぎる眼光を向けて、有無を言わせず約束させてしまった。
「僕に抱かれて中に子種を植え付けられているときの君は、完全に僕のモノになった顔をしているのに……」
「きゃっ!」
私が放心いる間に、セオドア様が私の下着を脱がした。途端、露になった局部が外気にさらされて、少しひやっとする。慣れた手付きで、足を開かされて……私も抵抗を忘れていつも通り、素直に従ってしまっていたそこへ、セオドア様が顔を埋めた。
「あっ! 待ってセオドアさ──ひっ」
朝昼晩と、絶え間なく中に子種を注ぎ込まれて、いつもセオドア様の精液と愛液でしっとりと濡れているあそこを、セオドア様が指先で開いてチュッと口づける。
そのまま花弁を舌先で押し開き、舌を入れ込んで、私のそこがセオドア様を受け入れられるか、中の具合を確かめられている。
「いやぁっセオドア様っ……やめっ……ぁっぁっ」
セオドア様の綺麗な長い銀髪を引っ張るようにすると、両手を掴まれた。私の両手を、私の腰の横辺りに押さえつけて、セオドア様は再びあそこに顔を埋め、膣口に舌を入れ込んでしまった。
「ふぁっ……あんっぁっ……」
いつも行為を始める前に、セオドア様は必ずあそこをトロトロに舐め溶かしてから挿入する。私を傷付けないようにするために。
そこに柔らかく唇を押し当てながら、ほぐすために沢山舐められる。
セオドア様が私の秘所に綺麗な顔を埋めて、舌と唇を使ってあそこを愛している。思うだけで、顔から火が出るくらい私は恥ずかしいのに、セオドア様は当然とそこを愛し続けてしまう。
やがてチュグッチュグッと卑猥な水音が陰部から聞こえはじめて、唾液と愛液でしとどに濡れたあそこから、ツゥーと流れ落ちる幾筋もの液体が、シーツを汚していく。
「んっんっ……んあっ」
せめて声を出さないように頑張っているのに、セオドア様の甘い愛撫に膣口がヒクつき、快感が止まらない。
熱く、汗の流れる私の太ももを、セオドア様が更に大きく開かせた。足をシーツに押し付け、更に深く、中に舌を差し入れられる。嫌々言ってもセオドア様はいつも、私の局部の根元に顔を埋めるのを止めてくれないから、結局最後までイカされてしまう。
ビクビクと震える体でシーツを必死に掴みながら耐えて、しかし、あと少しで達してしまう寸前のところで、セオドア様が膣内に入れ込んでいた舌をズルッと引き抜いてしまった。
「ひゃんっ!」
腰を中心に、全身がセオドア様から与えられた快感にガクガクして、止まらない。セオドア様が口元の愛液を片手で拭った。そして──腰を掴まれ、日夜散々愛されセオドア様を受け入れることを覚えたそこへ、クチュッと屹立をあてがわれてしまう。
「きゃあっ」
「君が僕を愛していると知っているのに、離すつもりはありませんよ」
「セオドア、様……こんな……ダメで……」
「──愛しています、君は僕のモノだ。誰にも渡さない。そして僕は……君を忘れない」
入り口に少し肉棒を当てられただけなのに、もう瞳が情欲に潤んでしまっているのが、自分でも分かる。体は素直に、セオドア様を欲しがっていた。
こんな中途半端に入り口だけ当てられて……まるで生殺しだわ……。
「僕が欲しいですか?」
「…………」
「エリカ?」
ふるふると首を横に振る。──が、
「嘘をついても分かります。君のここは、これを咥え込みたがっている。こんなに熱く蜜を流してヒクつかせているのに……僕が欲しいと言って下さい。エリカ……」
それでもなかなか欲しいと言わない私に、セオドア様が「仕方ないですね」と嘆息して、あそこから肉棒を外した。しかし代わりに、セオドア様は指でその入り口を開いた。そして指で入り口を押さえている手とは別の、他方の手の指先を入れ込んで──一気に、ズンッと指を二本、根本までずっぷり埋め込んでしまった。
「ひっ! いやぁっやっセオドア様やめっひっ」
更には男根で抽送するときと同じように、二本の指でそこを突き上げ、根本までずっぷりと入れたり、入り口ぎりぎりまで引き出したりを繰り返した。
「いやぁっセオドア様っやめっふぁっあんっあんっ」
シーツに身を埋めて泣く私の制止を無視して、ちゅぷっちゅぷっと卑猥な水音を立てながら、セオドア様の美しい二本の指が、中を攻め、突き上げるのが絶え間なく続いて──
「ひあぁぁぁぁあっ!」
遂に達してしまった気持ちよさに、全身がビクビクと跳ね上がる。セオドア様が中から指をズルッと引き出すと、愛液が絡んでねっとりと光沢を帯びた指を私に見せつけた。
「こんなに感じているのに、まだ言う気にはなりませんか?」
「あっあっ……ひぅっ……せっセオドア様っ、こんなのふぁっ……ズルい、です……」
涙目で抗議すると、セオドア様が愛おしそうに私を見つめて、快感に震えている私の唇に、しっとりと深く唇を重ねた。
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