体質が変わったので

JUN

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着信メール(2)お気に入り

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 アドレスは今回もやはり不明。
「本物だねえ」
 瀬戸兄弟は緊張に顔を強張らせた。
「今回、ターゲットがすぐにわかって良かった。何とかして、守ります」
「お願いします!」
 瀬戸巡査長が頭を深く下げ、遅れて史也君も頭を下げた。
「良く見るサイトとか、前の被害者と何か共通点はないのかな」
「はっ!すぐに確認させます!
 史也、来い。履歴のリストがあるから、それを見ろ」
「うん――って、こんなに!?」
「つべこべ言うな。死にたくないだろ」
 そんなやり取りをしながら、机に向かうのを見て、僕と直は小声でやり取りをする。
「蜂谷の協力を仰ぐか」
「最後のメールだけはブロックしないとねえ」

 結局、目が疲れて痛くなるくらいにチェックをしても、全員共通のサイトは見つからなかった。
「マリアベルか。どこの誰だろうな。
 もしくは、だった、だろうな」
「集合体の可能性もあるしねえ」
「個人なら今回祓ってしまえば終わりだが、集合体ならまた発生する可能性もあるしな。共通点を見付けておきたいところだが、まあ、仕方がないか」
 僕と直が言っていると、蜂谷が伸びをして言った。
「追跡の呪は仕込んだぞ。まあ、どこまで行けるかはわからんがなあ。何せ、アドレスが無いと来たもんだ。
 で、どうするんだ?最後のメールをブロックするのか?それとも、おびき寄せるのか?」
 僕、直、蜂谷だけだ。瀬戸兄弟には聞かせられない。
「直がいれば防げると思うから、おびき寄せたい。
 念のために蜂谷もいてくれたら、万が一にも対応できる。頼めるか?」
 蜂谷は、
「しょうがないなあ。怜怜と直直の頼みじゃなあ。依頼料も出るし」
と笑った。
 なんだかんだ言って、引き受けてくれるのが蜂谷だ。
 その内にも、次のメールが入る。

     見てる?返事してよ

 それを見て、同時に唸る。
「返事したらどうなるんだ?」
 蜂谷が訊く。
「エラーで、どっちみち届かないんだよねえ」
「返事しようがないじゃないか。マリアベルって女も、アドレスくらい表示しろってんだ、返事が欲しいなら」
 蜂谷は冷笑を浮かべてタバコをポケットから出した。
「蜂谷。ここ、禁煙」
 蜂谷は、恨めし気に僕を見上げた。

 スマホを返して欲しいと史也君が言い出し、即、瀬戸巡査長が拳骨を落とした。
「痛いなあ、もう!」
「お前は、事の重大さがわかってるのか?」
 他の居合わせた捜査員達も、まあまあと言いながらも、それもわかるという顔付きだ。
「ちょっとだけだよ。今日はブログ、更新してないから」
「ブログ?お前、そんなのしてたのか?何を書いてるんだよ?」
「行った店とか、ゲームの話とか、犬と撮った写真とか」
「犬ぅ?まさか、うちのバカ犬か?」
「そう。とぼけた麿顔って、割と人気だよ」
 兄弟の話を聞きながら、蜂谷がパソコンにアクセスする。
「ああ、これかあ。確かに麿顔だなあ」
 とぼけた顔の雑種犬が、史也君とくっついて写っていた。
 間抜けな顔が、どことなく愛嬌がある。
「かわいいねえ。何て名前なんですかねえ」
 アオが来る前は犬派だった直が、頬を緩めている。
「ずばり、麿です!」
「麿!いいねえ」
「最近の若い奴は、皆がブログだ何だと。
 史也。写真を載せる時は、個人情報に気を付けろよ。驚くような所から、特定されるんだからな」
「わかってるよ、もう」
「ブログか。
 他の5人もブログをやっていましたか」
 僕の問いに、すぐに捜査員が確認する。
「あ、はい。カクテルの話やゲームの話など内容はバラバラですが。
 まさか」
「それで、好みのタイプを物色してたのかもな」
「ああ。全員顔写真を上げています」
「決まりだねえ」
 史也君は、何とも言えない顔をした。それは、ちょっと麿に似ていた。









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