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着信メール(1)死を運ぶメール
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若くして突然亡くなる事も、無くはない。これと言って健康診断で引っかからなくとも、突然、心筋梗塞などで亡くなる事はある。
ただ、それらの人達が皆同じメールを受け取っていたとしたら、それは少々胡散臭い話と言わざるを得ない。
「また突然死ですか」
「ああ。そしてまた、例のメールだ」
「またですか……」
刑事達は、声のトーンと表情を暗くした。
これで若い男性ばかりが5人、所謂突然死で亡くなっているのだが、皆、同じメールを受け取っていた。差し出し人は『マリアベル』。『今着いたよ』というメールを開いた、或いは受け取った状態で亡くなっているのだ。
当然、このマリアベルなる人物を調べようとしたのだが、ここで行き詰まる。
アドレスが見つからず、返信を送ってみても、エラーとなるだけだった。アドレスが、不明ではなく、無いなんて事はあり得ないのに。
そして、当然の流れとして、陰陽課に持ち込まれる事となったのである。
「アドレスが無い、とは」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「幽霊メールってわけだねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「死を呼ぶ死神メールだよ」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ネットではボチボチ噂になっているんだけど、イタズラのはアドレスが存在するからわかるらしいねえ」
「存在しないアドレスねえ。確かにこれはおかしいな」
「うん。すぐにとりかかろうかねえ」
僕と直は、事件の詳細に目を通し始めた。
連続怪死事件は、陰陽課に応援を求める事になり、今日は皆、久しぶりに早く家に帰宅する事になった。
刑事の瀬戸隼人は、家に上がりながら、コートを脱いでネクタイを緩めた。
「兄貴、お帰り。早かったね。事件、解決したの」
大学生の弟、史也が、リビングのこたつに入ってテレビを見ていた。
「いや、まだだ。
お袋と親父は?」
言いながら、何か食べ物は無いかと冷蔵庫を開ける。
「カップめんと冷凍食品とご飯ともちならあるよ。
近所の人達と新年会だってさ」
「もちは、もういい。正月に1年分食った」
言い、お好み焼きを解凍して、ご飯と食べる事にした。
関西ではお好み焼き定食が普通と聞いて、最初は違和感があったが、食べてみると美味しい事を知り、心の中で関西人に謝った隼人だった。
「トイレ行って来る。このままDVD、一時停止しておいてよ」
言って、史也がこたつを出る。
その直後、置いたままの史也のスマホが、メールを受信した。
「彼女とかじゃないだろうな、生意気に」
言いながら、送り主をヒョイと覗いて、目を疑った。
マリアベル
そこにはそう、表示されていた。
「あ、何だよう」
戻って来た史也が少し文句を言うが、隼人の顔付きに、たじろぐ。
「史也、このマリアベルからのメールは、いつからだ!?」
「え?マリアベル?知らないよ?」
「開けるぞ」
「え、あ、うん」
拒否権は無い感じで、史也が頷き、隼人がメールを開ける。
今、何してるの?お話しない?
ゴクリと唾をのむ。
「本当に、初めてなんだな?大事な事なんだ。命にかかわる」
「初めて。本当に知らないから」
少しだけホッとした。
「それならまだ、猶予はあるか。とは言え……。
史也。明日、俺と一緒に陰陽課の人に会うぞ」
「はあ!?俺、バイトがあるし」
「このままだと、お前、死ぬんだよ!」
史也は隼人とスマホを何度か見比べ、
「わ、わかった」
キッチンで、レンジが平和な音を立てた。
ただ、それらの人達が皆同じメールを受け取っていたとしたら、それは少々胡散臭い話と言わざるを得ない。
「また突然死ですか」
「ああ。そしてまた、例のメールだ」
「またですか……」
刑事達は、声のトーンと表情を暗くした。
これで若い男性ばかりが5人、所謂突然死で亡くなっているのだが、皆、同じメールを受け取っていた。差し出し人は『マリアベル』。『今着いたよ』というメールを開いた、或いは受け取った状態で亡くなっているのだ。
当然、このマリアベルなる人物を調べようとしたのだが、ここで行き詰まる。
アドレスが見つからず、返信を送ってみても、エラーとなるだけだった。アドレスが、不明ではなく、無いなんて事はあり得ないのに。
そして、当然の流れとして、陰陽課に持ち込まれる事となったのである。
「アドレスが無い、とは」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「幽霊メールってわけだねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「死を呼ぶ死神メールだよ」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ネットではボチボチ噂になっているんだけど、イタズラのはアドレスが存在するからわかるらしいねえ」
「存在しないアドレスねえ。確かにこれはおかしいな」
「うん。すぐにとりかかろうかねえ」
僕と直は、事件の詳細に目を通し始めた。
連続怪死事件は、陰陽課に応援を求める事になり、今日は皆、久しぶりに早く家に帰宅する事になった。
刑事の瀬戸隼人は、家に上がりながら、コートを脱いでネクタイを緩めた。
「兄貴、お帰り。早かったね。事件、解決したの」
大学生の弟、史也が、リビングのこたつに入ってテレビを見ていた。
「いや、まだだ。
お袋と親父は?」
言いながら、何か食べ物は無いかと冷蔵庫を開ける。
「カップめんと冷凍食品とご飯ともちならあるよ。
近所の人達と新年会だってさ」
「もちは、もういい。正月に1年分食った」
言い、お好み焼きを解凍して、ご飯と食べる事にした。
関西ではお好み焼き定食が普通と聞いて、最初は違和感があったが、食べてみると美味しい事を知り、心の中で関西人に謝った隼人だった。
「トイレ行って来る。このままDVD、一時停止しておいてよ」
言って、史也がこたつを出る。
その直後、置いたままの史也のスマホが、メールを受信した。
「彼女とかじゃないだろうな、生意気に」
言いながら、送り主をヒョイと覗いて、目を疑った。
マリアベル
そこにはそう、表示されていた。
「あ、何だよう」
戻って来た史也が少し文句を言うが、隼人の顔付きに、たじろぐ。
「史也、このマリアベルからのメールは、いつからだ!?」
「え?マリアベル?知らないよ?」
「開けるぞ」
「え、あ、うん」
拒否権は無い感じで、史也が頷き、隼人がメールを開ける。
今、何してるの?お話しない?
ゴクリと唾をのむ。
「本当に、初めてなんだな?大事な事なんだ。命にかかわる」
「初めて。本当に知らないから」
少しだけホッとした。
「それならまだ、猶予はあるか。とは言え……。
史也。明日、俺と一緒に陰陽課の人に会うぞ」
「はあ!?俺、バイトがあるし」
「このままだと、お前、死ぬんだよ!」
史也は隼人とスマホを何度か見比べ、
「わ、わかった」
キッチンで、レンジが平和な音を立てた。
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