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埋蔵金(2)起死回生の為に
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部長は、困り果てたような、疲れ切ったような顔をしていた。
「真面目に活動しているわけではなく、何と言うか……埋蔵金伝説がと言ってハイキングに出掛けたり、海賊のお宝がといって海に行ったりという、緩いサークルなんです。あいつらも、あんな、目の色を変えて埋蔵金を掘り出そうとするわけでもなかったし……」
「当日の事を聞かせてもらえるかねえ」
「駅で集合して、昼前に麓の食堂で早めの昼飯にして、部員12人で山道を登って行ったんです。写真を撮ったりしながら。
それで、供養塔の所について、一休みしようと自由行動にしたので、写真を撮ったりトイレに行ったりしてました。
その後、出発しようとしたらあの2人がいなくなってて……」
「自由行動の時間はどのくらいですか」
「せいぜい15分ですね」
「あの2人がどこで何をしていたか、わかる人はいませんか」
「いなくなったとわかった時に皆に訊いたんですが、供養塔を見ていた所を見た人が少しいましたが、忽然と消えたという感じなんです」
供養塔か。
「ありがとう。また何かあったらよろしくお願いしますねえ」
部長と別れ、山の方を見た。標高は高くはない。ただ、急だ。そして、妙な気配がしていた。
「供養塔に行くしかないな。
ああ。山道か。面倒臭い」
「靴、スニーカーで良かったよねえ」
僕と直は、山道を登り始めた。
大して危ないところも、迷いそうな分かれ道もない。ただただ歩けば、供養塔の前に着く。
そこから更に歩いて行くと、小さな山城のあった頂上に出るが、今は、何も残っていない。
「ああ。何か祀られてた者が出てるな」
「大雨の時に供養塔が倒れたそうだねえ」
中身が出たままで、塔だけを元に戻したらしい。
気配を辿って行くと、武士が6人、うろうろとしていた。
「殿、すぐに資金を持って参上いたしますぞ」
「やつらの軍勢も、これで叩き潰してくれるわ」
言いながら、磯貝さんと大島さんが見付かった辺りをウロウロしていた。
「怜。あれ、埋蔵金を掘り出そうとしたまま亡くなったのかねえ」
「みたいだな。自分達で掘れよなあ」
溜め息をついたら、彼らに見つかった。
「何やつじゃ」
「元気そうだ」
「こいつらに掘り出させよう」
「それが良い。あいつらは連れて行かれたからな」
言いながら、こちらに近付いて来る。
ガックリくるかも知れないが、教えないわけにはいかない。
「かなり前に、埋蔵金は掘り出されてますよ」
彼らは、雷に打たれた様に立ち止まった。
「な、何だと!?」
「誰が横取りしたというのだ……!?」
直も、言い難そうに言った。
「50年以上前らしいですよう」
「中身は、ほとんどが手紙や本の文化遺産。お宝だったそうですよ」
それで彼らは再び驚愕したらしい。
「手紙!?本!?」
「あ、あれでは?密約の証拠!」
「おお!」
言い難い。
「奥さんとのやり取りとか、子供に向けたものとからしいですが……」
「……」
「あり得ない……」
「きっと、金の箱をまだ見付けておらぬのだな」
「おお、そうだ。そうに違いない」
僕と直は顔を見合わせ、ひそひそと相談した。
「どうしよう」
「納得しなさそうだねえ」
「強引に祓うのもありか。でも……」
「ちょっと、興味が無い事もないねえ」
僕達はクルリと彼らの方へ向き直った。
「では、調査しましょう。最先端の道具を使って」
「何。南蛮の道具か」
国産だが……まあ、いいか。
「そうです」
「おお!これで、殿にお届けできる!」
喜ぶ彼らをよそに、徳川さんに電話をかけた。
「真面目に活動しているわけではなく、何と言うか……埋蔵金伝説がと言ってハイキングに出掛けたり、海賊のお宝がといって海に行ったりという、緩いサークルなんです。あいつらも、あんな、目の色を変えて埋蔵金を掘り出そうとするわけでもなかったし……」
「当日の事を聞かせてもらえるかねえ」
「駅で集合して、昼前に麓の食堂で早めの昼飯にして、部員12人で山道を登って行ったんです。写真を撮ったりしながら。
それで、供養塔の所について、一休みしようと自由行動にしたので、写真を撮ったりトイレに行ったりしてました。
その後、出発しようとしたらあの2人がいなくなってて……」
「自由行動の時間はどのくらいですか」
「せいぜい15分ですね」
「あの2人がどこで何をしていたか、わかる人はいませんか」
「いなくなったとわかった時に皆に訊いたんですが、供養塔を見ていた所を見た人が少しいましたが、忽然と消えたという感じなんです」
供養塔か。
「ありがとう。また何かあったらよろしくお願いしますねえ」
部長と別れ、山の方を見た。標高は高くはない。ただ、急だ。そして、妙な気配がしていた。
「供養塔に行くしかないな。
ああ。山道か。面倒臭い」
「靴、スニーカーで良かったよねえ」
僕と直は、山道を登り始めた。
大して危ないところも、迷いそうな分かれ道もない。ただただ歩けば、供養塔の前に着く。
そこから更に歩いて行くと、小さな山城のあった頂上に出るが、今は、何も残っていない。
「ああ。何か祀られてた者が出てるな」
「大雨の時に供養塔が倒れたそうだねえ」
中身が出たままで、塔だけを元に戻したらしい。
気配を辿って行くと、武士が6人、うろうろとしていた。
「殿、すぐに資金を持って参上いたしますぞ」
「やつらの軍勢も、これで叩き潰してくれるわ」
言いながら、磯貝さんと大島さんが見付かった辺りをウロウロしていた。
「怜。あれ、埋蔵金を掘り出そうとしたまま亡くなったのかねえ」
「みたいだな。自分達で掘れよなあ」
溜め息をついたら、彼らに見つかった。
「何やつじゃ」
「元気そうだ」
「こいつらに掘り出させよう」
「それが良い。あいつらは連れて行かれたからな」
言いながら、こちらに近付いて来る。
ガックリくるかも知れないが、教えないわけにはいかない。
「かなり前に、埋蔵金は掘り出されてますよ」
彼らは、雷に打たれた様に立ち止まった。
「な、何だと!?」
「誰が横取りしたというのだ……!?」
直も、言い難そうに言った。
「50年以上前らしいですよう」
「中身は、ほとんどが手紙や本の文化遺産。お宝だったそうですよ」
それで彼らは再び驚愕したらしい。
「手紙!?本!?」
「あ、あれでは?密約の証拠!」
「おお!」
言い難い。
「奥さんとのやり取りとか、子供に向けたものとからしいですが……」
「……」
「あり得ない……」
「きっと、金の箱をまだ見付けておらぬのだな」
「おお、そうだ。そうに違いない」
僕と直は顔を見合わせ、ひそひそと相談した。
「どうしよう」
「納得しなさそうだねえ」
「強引に祓うのもありか。でも……」
「ちょっと、興味が無い事もないねえ」
僕達はクルリと彼らの方へ向き直った。
「では、調査しましょう。最先端の道具を使って」
「何。南蛮の道具か」
国産だが……まあ、いいか。
「そうです」
「おお!これで、殿にお届けできる!」
喜ぶ彼らをよそに、徳川さんに電話をかけた。
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