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埋蔵金(3)調査隊
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地中レーダーで探査する。
「金属反応はありませんねえ」
落盤でできた小さな岩の隙間にファイバースコープを入れる。
「それらしいものは、見当たりませんねえ」
市の協力で、埋めたという辺りを捜索していた。
「見つかればと、ちょっと期待したんだけどなあ」
徳川さんも見に来ていて、僕と直と並んで画像を見ていた。
「やっぱり、以前に見つかったものが全てだったようですねえ」
市の教育委員会の職員も、落胆の色を隠せない。
その後ろで、武士達がガックリと膝を突いていた。
「殿……」
「申し訳ございません、殿ぉ」
札で見えるようにしているので、最初こそ皆驚いていたが、すっかり慣れていた。
「残念ですが……」
言うと、中の1人が脇差を抜いた。
「殿に申し訳が立たぬ。この上は、腹を掻っ捌いてお詫びを――」
「待って下さい。もう亡くなっていますよ。無理ですから」
「お、お詫びもできぬとは……殿ぉぉぉぉ!」
「……これを埋めさせたのがそもそも殿様だからね」
徳川さんが、困った顔をした。
「だ誰かが盗んだのではあるまいな」
キッと、1人が険のある目つきで言った。
「それはありませんよ」
市の職員が言う。
「元々、貧乏な弱小城主だったんです。現金など、続いた飢饉や争いへの費えで残っていませんよ」
「おのれ、殿を愚弄するか!?」
「え、あわわわわ!」
僕と直は、
「埋蔵金の夢は消えたな」
「短いけど、いい夢を見させてもらったよねえ」
「だよな」
としみじみと話していたが、徳川さんが、
「じゃあ、そろそろ何とかしようか」
と言うので、武士達の方を見た。
市役所の職員や検査技師に詰め寄ったり、検査の機械を珍しそうに見ている中で、一番偉い感じの人が、地元の郷土史家に礼を言われていた。
「あなた方の殿様は大変素晴らしい方だ!大変貴重な、当時の生活や文化、交友関係などを知る手がかりを残して下さったとは!失われたら取り返しがつかないものですよ、これは。人の生きた証ですからね!こんなにありがたいお宝は無い!ありがとう!」
「え、あ、流石は殿。それがしでは考えも及ばぬ深いお考えをお持ちの立派なお方じゃ」
その気はないのだろうが、上手く丸め込んでいる。
「あの世でお会いできたら、なんとお礼を申し上げたらいいか!」
「ははは!任せていただこう。それがしが代わって、殿に申し伝える所存である」
「きっと、きっとですよ」
「うむ。武士に二言は無い」
「……ああ。流されやすいというか、人がいいというか、そういう人なんだねえ」
「武士には向いてないかもなあ」
僕と直は、ぼそぼそと言い合った。
それでもおかげで、いい方向に向いた。
「残念ながらお金はありません。どっちにしろ、もう時間が過ぎてしまっているので。
あなた方も、逝きますか。お殿様に報告をしなければいけないでしょう」
「む。確かに……」
「逝きましょう。お手伝いしますから」
「造作をおかけする」
武士達は集まり、並んだ。
「では」
浄力を、彼らに当てる。
「おお……!これは……!?」
「摩訶不思議な心地じゃ!」
「殿。今、参ります!」
彼らは穏やかな顔付きで、光の粒子になって、立ち上って消えて行った。
「旅立たれました」
一斉に、皆が手を合わせた。
「これで、病院の大学生も戻るかな」
言った時に、電話が鳴り出した。
「はい、御崎です。――ああ、先生――は!?はい、すぐに向かいます!」
「どうしたのかねえ?」
「病院の主治医だった。あの2人、彼らの影響を受けてただけじゃなく、それで変に欲に憑りつかれたらしい。埋蔵金は自分達のものだとか、一生楽に生きるとか言ってるらしい。面倒臭いなあ」
「急ごう」
直も溜め息をついて、僕達は急いで山を下りて行った。
「金属反応はありませんねえ」
落盤でできた小さな岩の隙間にファイバースコープを入れる。
「それらしいものは、見当たりませんねえ」
市の協力で、埋めたという辺りを捜索していた。
「見つかればと、ちょっと期待したんだけどなあ」
徳川さんも見に来ていて、僕と直と並んで画像を見ていた。
「やっぱり、以前に見つかったものが全てだったようですねえ」
市の教育委員会の職員も、落胆の色を隠せない。
その後ろで、武士達がガックリと膝を突いていた。
「殿……」
「申し訳ございません、殿ぉ」
札で見えるようにしているので、最初こそ皆驚いていたが、すっかり慣れていた。
「残念ですが……」
言うと、中の1人が脇差を抜いた。
「殿に申し訳が立たぬ。この上は、腹を掻っ捌いてお詫びを――」
「待って下さい。もう亡くなっていますよ。無理ですから」
「お、お詫びもできぬとは……殿ぉぉぉぉ!」
「……これを埋めさせたのがそもそも殿様だからね」
徳川さんが、困った顔をした。
「だ誰かが盗んだのではあるまいな」
キッと、1人が険のある目つきで言った。
「それはありませんよ」
市の職員が言う。
「元々、貧乏な弱小城主だったんです。現金など、続いた飢饉や争いへの費えで残っていませんよ」
「おのれ、殿を愚弄するか!?」
「え、あわわわわ!」
僕と直は、
「埋蔵金の夢は消えたな」
「短いけど、いい夢を見させてもらったよねえ」
「だよな」
としみじみと話していたが、徳川さんが、
「じゃあ、そろそろ何とかしようか」
と言うので、武士達の方を見た。
市役所の職員や検査技師に詰め寄ったり、検査の機械を珍しそうに見ている中で、一番偉い感じの人が、地元の郷土史家に礼を言われていた。
「あなた方の殿様は大変素晴らしい方だ!大変貴重な、当時の生活や文化、交友関係などを知る手がかりを残して下さったとは!失われたら取り返しがつかないものですよ、これは。人の生きた証ですからね!こんなにありがたいお宝は無い!ありがとう!」
「え、あ、流石は殿。それがしでは考えも及ばぬ深いお考えをお持ちの立派なお方じゃ」
その気はないのだろうが、上手く丸め込んでいる。
「あの世でお会いできたら、なんとお礼を申し上げたらいいか!」
「ははは!任せていただこう。それがしが代わって、殿に申し伝える所存である」
「きっと、きっとですよ」
「うむ。武士に二言は無い」
「……ああ。流されやすいというか、人がいいというか、そういう人なんだねえ」
「武士には向いてないかもなあ」
僕と直は、ぼそぼそと言い合った。
それでもおかげで、いい方向に向いた。
「残念ながらお金はありません。どっちにしろ、もう時間が過ぎてしまっているので。
あなた方も、逝きますか。お殿様に報告をしなければいけないでしょう」
「む。確かに……」
「逝きましょう。お手伝いしますから」
「造作をおかけする」
武士達は集まり、並んだ。
「では」
浄力を、彼らに当てる。
「おお……!これは……!?」
「摩訶不思議な心地じゃ!」
「殿。今、参ります!」
彼らは穏やかな顔付きで、光の粒子になって、立ち上って消えて行った。
「旅立たれました」
一斉に、皆が手を合わせた。
「これで、病院の大学生も戻るかな」
言った時に、電話が鳴り出した。
「はい、御崎です。――ああ、先生――は!?はい、すぐに向かいます!」
「どうしたのかねえ?」
「病院の主治医だった。あの2人、彼らの影響を受けてただけじゃなく、それで変に欲に憑りつかれたらしい。埋蔵金は自分達のものだとか、一生楽に生きるとか言ってるらしい。面倒臭いなあ」
「急ごう」
直も溜め息をついて、僕達は急いで山を下りて行った。
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