654 / 1,046
埋蔵金(3)調査隊
しおりを挟む
地中レーダーで探査する。
「金属反応はありませんねえ」
落盤でできた小さな岩の隙間にファイバースコープを入れる。
「それらしいものは、見当たりませんねえ」
市の協力で、埋めたという辺りを捜索していた。
「見つかればと、ちょっと期待したんだけどなあ」
徳川さんも見に来ていて、僕と直と並んで画像を見ていた。
「やっぱり、以前に見つかったものが全てだったようですねえ」
市の教育委員会の職員も、落胆の色を隠せない。
その後ろで、武士達がガックリと膝を突いていた。
「殿……」
「申し訳ございません、殿ぉ」
札で見えるようにしているので、最初こそ皆驚いていたが、すっかり慣れていた。
「残念ですが……」
言うと、中の1人が脇差を抜いた。
「殿に申し訳が立たぬ。この上は、腹を掻っ捌いてお詫びを――」
「待って下さい。もう亡くなっていますよ。無理ですから」
「お、お詫びもできぬとは……殿ぉぉぉぉ!」
「……これを埋めさせたのがそもそも殿様だからね」
徳川さんが、困った顔をした。
「だ誰かが盗んだのではあるまいな」
キッと、1人が険のある目つきで言った。
「それはありませんよ」
市の職員が言う。
「元々、貧乏な弱小城主だったんです。現金など、続いた飢饉や争いへの費えで残っていませんよ」
「おのれ、殿を愚弄するか!?」
「え、あわわわわ!」
僕と直は、
「埋蔵金の夢は消えたな」
「短いけど、いい夢を見させてもらったよねえ」
「だよな」
としみじみと話していたが、徳川さんが、
「じゃあ、そろそろ何とかしようか」
と言うので、武士達の方を見た。
市役所の職員や検査技師に詰め寄ったり、検査の機械を珍しそうに見ている中で、一番偉い感じの人が、地元の郷土史家に礼を言われていた。
「あなた方の殿様は大変素晴らしい方だ!大変貴重な、当時の生活や文化、交友関係などを知る手がかりを残して下さったとは!失われたら取り返しがつかないものですよ、これは。人の生きた証ですからね!こんなにありがたいお宝は無い!ありがとう!」
「え、あ、流石は殿。それがしでは考えも及ばぬ深いお考えをお持ちの立派なお方じゃ」
その気はないのだろうが、上手く丸め込んでいる。
「あの世でお会いできたら、なんとお礼を申し上げたらいいか!」
「ははは!任せていただこう。それがしが代わって、殿に申し伝える所存である」
「きっと、きっとですよ」
「うむ。武士に二言は無い」
「……ああ。流されやすいというか、人がいいというか、そういう人なんだねえ」
「武士には向いてないかもなあ」
僕と直は、ぼそぼそと言い合った。
それでもおかげで、いい方向に向いた。
「残念ながらお金はありません。どっちにしろ、もう時間が過ぎてしまっているので。
あなた方も、逝きますか。お殿様に報告をしなければいけないでしょう」
「む。確かに……」
「逝きましょう。お手伝いしますから」
「造作をおかけする」
武士達は集まり、並んだ。
「では」
浄力を、彼らに当てる。
「おお……!これは……!?」
「摩訶不思議な心地じゃ!」
「殿。今、参ります!」
彼らは穏やかな顔付きで、光の粒子になって、立ち上って消えて行った。
「旅立たれました」
一斉に、皆が手を合わせた。
「これで、病院の大学生も戻るかな」
言った時に、電話が鳴り出した。
「はい、御崎です。――ああ、先生――は!?はい、すぐに向かいます!」
「どうしたのかねえ?」
「病院の主治医だった。あの2人、彼らの影響を受けてただけじゃなく、それで変に欲に憑りつかれたらしい。埋蔵金は自分達のものだとか、一生楽に生きるとか言ってるらしい。面倒臭いなあ」
「急ごう」
直も溜め息をついて、僕達は急いで山を下りて行った。
「金属反応はありませんねえ」
落盤でできた小さな岩の隙間にファイバースコープを入れる。
「それらしいものは、見当たりませんねえ」
市の協力で、埋めたという辺りを捜索していた。
「見つかればと、ちょっと期待したんだけどなあ」
徳川さんも見に来ていて、僕と直と並んで画像を見ていた。
「やっぱり、以前に見つかったものが全てだったようですねえ」
市の教育委員会の職員も、落胆の色を隠せない。
その後ろで、武士達がガックリと膝を突いていた。
「殿……」
「申し訳ございません、殿ぉ」
札で見えるようにしているので、最初こそ皆驚いていたが、すっかり慣れていた。
「残念ですが……」
言うと、中の1人が脇差を抜いた。
「殿に申し訳が立たぬ。この上は、腹を掻っ捌いてお詫びを――」
「待って下さい。もう亡くなっていますよ。無理ですから」
「お、お詫びもできぬとは……殿ぉぉぉぉ!」
「……これを埋めさせたのがそもそも殿様だからね」
徳川さんが、困った顔をした。
「だ誰かが盗んだのではあるまいな」
キッと、1人が険のある目つきで言った。
「それはありませんよ」
市の職員が言う。
「元々、貧乏な弱小城主だったんです。現金など、続いた飢饉や争いへの費えで残っていませんよ」
「おのれ、殿を愚弄するか!?」
「え、あわわわわ!」
僕と直は、
「埋蔵金の夢は消えたな」
「短いけど、いい夢を見させてもらったよねえ」
「だよな」
としみじみと話していたが、徳川さんが、
「じゃあ、そろそろ何とかしようか」
と言うので、武士達の方を見た。
市役所の職員や検査技師に詰め寄ったり、検査の機械を珍しそうに見ている中で、一番偉い感じの人が、地元の郷土史家に礼を言われていた。
「あなた方の殿様は大変素晴らしい方だ!大変貴重な、当時の生活や文化、交友関係などを知る手がかりを残して下さったとは!失われたら取り返しがつかないものですよ、これは。人の生きた証ですからね!こんなにありがたいお宝は無い!ありがとう!」
「え、あ、流石は殿。それがしでは考えも及ばぬ深いお考えをお持ちの立派なお方じゃ」
その気はないのだろうが、上手く丸め込んでいる。
「あの世でお会いできたら、なんとお礼を申し上げたらいいか!」
「ははは!任せていただこう。それがしが代わって、殿に申し伝える所存である」
「きっと、きっとですよ」
「うむ。武士に二言は無い」
「……ああ。流されやすいというか、人がいいというか、そういう人なんだねえ」
「武士には向いてないかもなあ」
僕と直は、ぼそぼそと言い合った。
それでもおかげで、いい方向に向いた。
「残念ながらお金はありません。どっちにしろ、もう時間が過ぎてしまっているので。
あなた方も、逝きますか。お殿様に報告をしなければいけないでしょう」
「む。確かに……」
「逝きましょう。お手伝いしますから」
「造作をおかけする」
武士達は集まり、並んだ。
「では」
浄力を、彼らに当てる。
「おお……!これは……!?」
「摩訶不思議な心地じゃ!」
「殿。今、参ります!」
彼らは穏やかな顔付きで、光の粒子になって、立ち上って消えて行った。
「旅立たれました」
一斉に、皆が手を合わせた。
「これで、病院の大学生も戻るかな」
言った時に、電話が鳴り出した。
「はい、御崎です。――ああ、先生――は!?はい、すぐに向かいます!」
「どうしたのかねえ?」
「病院の主治医だった。あの2人、彼らの影響を受けてただけじゃなく、それで変に欲に憑りつかれたらしい。埋蔵金は自分達のものだとか、一生楽に生きるとか言ってるらしい。面倒臭いなあ」
「急ごう」
直も溜め息をついて、僕達は急いで山を下りて行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
200
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる